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【ビースト・オブ・マッポーカリプス後編】#11

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「011……」ソルエクリプスは脇腹から輝く血飛沫を噴出させ、怯んだ。カーン!その瞬間、竹を割るような乾いた音が響き、草原を囲む森の中より投射されたスナイパースリケンが、ソルエクリプスのこめかみを撃ち抜いた。「イヤーッ!」その首にガーランドの鞭が巻き付き、地面に引きずり倒した! 14

2023-06-04 22:49:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「001……01001」痙攣するソルエクリプス!殺到してくる黄金影を、ブライカンやレイテツ、ブラックパール達が押し戻す!草に手をつき、起き上がろうとするソルエクリプスを、インシネレイトが無惨に踏みにじった。「手こずらせやがって……クソ野郎!」「アバーッ!」ソルエクリプスが全身発火! 15

2023-06-04 22:53:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「アババババーッ!」ソルエクリプスが絶叫した。眩い黄金光に包まれていた彼は今、火に包まれた断末魔のニンジャに立ち戻っている。ガーランドは首筋にぞくりとした感触をおぼえ、振り仰いだ……マルノウチスゴイタカイビルの上空を。空の渦巻きの中心から、燃える流星が落ちてきた。16

2023-06-04 22:56:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

緑の衣が枯れながら剥がれゆくスゴイタカイビルの威容。その頂点に、流星は衝突した。BOOOM。BOOOM。BOOOOOM!窓ガラスという窓ガラスが上から下へ立て続けに爆ぜ飛び、粉塵が噴き出し、そして……「「サヨナラ!」」地の底より、重なり合った叫びが轟いた。渦巻く嵐が晴れ、黄金立方体が静止した。 17

2023-06-04 23:01:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だい」レッドハッグは呟いた。これほどの異様天変地異を体験しながら、その呟きは流星よりもむしろ、その直後、静止した黄金立方体に向かって、一筋の光が螺旋階段じみた軌跡を描いて昇ってゆく光景に対して向けられたものだった。それは目撃したニンジャの魂の奥底の記憶に触れる光景だった。 18

2023-06-04 23:05:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウウ!」さしものティアマトであっても、この衝撃に対してはガード姿勢でやり過ごさざるを得なかった。リバティの必死の攻撃を上回ったティアマトは、完全破壊攻撃ソウル・ブロウナウトを叩き込むチャンスを迎えた。だがその瞬間、流星がバトルフィールドたるスゴイタカイビルを直撃したのだ。 20

2023-06-04 23:09:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

音が消失し、視界を奪っていた粉塵が徐々に晴れゆくなか、ティアマトは今度こそ忌々しいリバティを葬り去る為のダークチャドーを練り上げた。見える。命が見える。小生意気なウキヨの娘の残骸も。どちらもきっちりと命を断ち、後顧の憂い、否、とにかく個人的快楽を得ん。「……何じゃ」「よし給え」21

2023-06-04 23:13:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ティアマトの睫毛が不快の感情にぴくりと動いた。視線の先、晴れゆく粉塵の中、リバティを遮るように立っていたのは……「ドーモ。ティアマト=サン。ギャラルホルンです」「ドーモ。ギャラルホルン=サン。ティアマトです」ティアマトはアイサツに応じた。「カリュドーンのプレイヤーが何の用じゃ」22

2023-06-04 23:18:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何の用かと?」ギャラルホルンは驚いて見せた。「むしろそのう……貴公は確かセトの食客の立場であったはず。何故スゴイタカイビルに?ンン……怪しい。怪しからん」「そこを退くのじゃ、道化」「クキキキ!道化とは心外!貴公とはそのような軽口を叩きあうほどの仲には発展しておらぬ、今はまだ」23

2023-06-04 23:22:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ティアマトは足元を見た。威嚇的に張られた緋色の電光の荊棘が地面にのたうつ。ギャラルホルンは後方のリバティを振り返った。「無事かね?我が友よ」「……貴様自らがここに……!」「うむ。無理をさせて済まなかった。しかし真の達者とは、最も重要な局面には決して遅参しないものよ」 24

2023-06-04 23:29:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その者はそなたの従者かえ?露払いをさせたか。狙いを言わぬか!」ティアマトの殺気が膨れ上がり、緋色の稲妻を一息で吹き飛ばした。「おほ!」ギャラルホルンは演技的に驚いて見せた。「よし給え!そもそもリバティ君は従者ではない。我が友、対等の関係だ。いわば共犯者……クキキキ」「黙れ!」25

2023-06-04 23:33:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

吐き捨てるように返すリバティに、彼は少し表情を曇らせ、なお気遣った。「まだ戦えるかね。君にとっての大業が残っているぞ」「……」リバティは否定しなかった。ティアマトは目を細め、カラテを用心深く高めてゆく。ギャラルホルンは手をかざした。「マッタ。今は無益なイクサの時ではない」 26

2023-06-04 23:36:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ティアマトを制した時、ギャラルホルンの表情からはひととき、狂い笑いのニュアンスが消え去っていた。「このありさま、わかるであろう。天の果てにてイクサは決着し、このビルを貫いて……」下を指差す。「狩人アヴァリスは爆発四散し、クロヤギ・ニンジャと共にキンカクへ還元されていった」 27

2023-06-04 23:42:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……申せ。続きを」ティアマトは促した。「これは "局面" だ、ティアマト=サン。タダではすまぬぞ。キンカク・テンプルがこれ程まで現世に近づいた事にはおぼえがない。天地鳴動し、我らの依って立つものがすべて崩壊する瀬戸際だ。ゆえに私は世界の為に動かねばならん。……ヒラグモを所望する」28

2023-06-04 23:46:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ティアマトの反応より早く、ギャラルホルンは更にマッタした。「然り!あれは貴公のかけがえなき盟友セト=サンの大仕掛け。実際、我が友リバティ=サンがヒラグモ確保の為に動いていたのも、私の指示によるものだと認めよう。その上でだ!」彼は懐に手を入れた。そして、黒いマガタマを取り出した。29

2023-06-04 23:52:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ティアマトは黒いマガタマに手をかざした。ギュン。空気が凝縮し、ギャラルホルンの手の中のマガタマが揺れ動いた。しかし緋色の稲妻が走り、ティアマトの干渉を撥ねつけた。何事もなかったかのようにギャラルホルンは続けた。「時間がないゆえ単刀直入に提案する。貴公の宝はあくまでサツガイの筈」30

2023-06-04 23:55:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「残念ながらサツガイはアヴァリスを取り込む事がかなわなかった。この通り、拒絶され捨てられたマガタマを回収してある。恩は着せぬよ。恩を着せぬ為、貴公に敬意を払う為に、交渉の形を取ろう。サツガイ復活が失敗した今、ヒラグモは必ずしも貴公の求めるものとはならぬ筈だな?」 31

2023-06-05 00:00:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「セトを裏切れてか?」「そのような意図はない。そもそも貴公はセトの下僕ではないであろうしな。自由意志の協力関係と思料する。そして何より、"局面" だよ」「……スウー……」ティアマトは目を閉じ、深く呼吸した。そして刮目。手招きのしぐさをした。「よかろう。渡せ」 32

2023-06-05 00:06:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イクサはよしたがいい。二対一のイクサとなる。私もある程度は腕に自信あり。短時間では決着せぬし、今まさに世界が……」「呑む、と言うておる」「マグニフィセント(素晴らしい)!」ギャラルホルンは快哉し、指先でマガタマを、ティン、と鳴らした。ティアマトの手の中にマガタマが在った。 33

2023-06-05 00:10:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ティアマトはマガタマを握りしめた。凝縮された力の震動を感じ取った。「紛い物など渡さぬよ。どのみち、それは私には強すぎる」ギャラルホルンは言った。「好きにし給え。ま、正直、苦渋の選択であるが……状況が状況だ」「フン」ティアマトは身を翻した。黒いトリイが出現し、彼女を迎え入れた。34

2023-06-05 00:14:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

狩りが決着した。儀式空間の荒野には凄まじい嵐が吹き荒れていた。ダークカラテエンパイアの石碑群に亀裂が生じ、天上のキンカク・テンプルは静止していた。セトは両手を広げ、神話級タイピング速度のポテンシャルを全開放していた。256体のヒエログリフ分身体が出現し、また収束し、また出現した。 36

2023-06-05 00:27:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は同時に、物理世界においてはエジプトのエネアド本社社屋社長室、漆黒の間に在って、サツバツナイトと睨み合いの状態であった。サツバツナイトは満身創痍だ。カラテを傾け、一気に押し潰し、後顧の憂いを断ちたいのは山々。しかし今この瞬間は当然、カリュドーン儀式を制し真の勝利を手にする時。37

2023-06-05 00:34:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キンカクは今やオヒガンよりも物理世界に近い場所にある。セトは既に、カリュドーンのエネルギーを用いて、キンカクとスゴイタカイビル地下のギンカクとの間に、均衡を生み出す事に成功していた。精巧な磁力の仕掛け細工じみたバランスで、キンカクは一定の地点に固着した。キンカクは、空にある。 38

2023-06-05 00:40:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アダナス社はセトと諮り、エネアド社との提携のもとで数ヶ月をかけ、ネオサイタマのIRCネットワークに儀式の為のコードを埋め込んでいた。いわば黄金立方体召喚のための電子儀式だ。ネオサイタマでカリュドーンが進行する事によって生じる揺らぎの力を、キンカク召喚のリソースに転用する為の。 39

2023-06-05 00:46:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キンカクが空に固定された現在、アダナスとエネアドはキンカクから無限のエネルギーを引き出し、享受する事ができる。ブラックティアーズが儀式を制すれば、それはセトの勝利、盤石の帝国支配の到来を意味する。儀式が進行し続ければ、セトがキンカクを手中に収める結果となる。後者の結末となった。40

2023-06-05 00:51:17