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【ビースト・オブ・マッポーカリプス後編】#11

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして当然、セトはそれ以上の成果を望んでいた。ギンカクの傍らに設置した神話茶器、ヒラグモ。これは儀式の力のオーバーフローを受け止める安全弁であるとともに、集めた力を用いて直接にセトのタイピング速度を増幅させる、強大な呪物でもあった。セトはキンカクを支配し、始祖神を超える。 41

2023-06-05 00:57:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

計画完成の暁には、ネオサイタマはキンカクを現世に固着させる為のエコシステムとして駆動する事となる。ネオサイタマの市民はニンジャ、モータルを問わず、全てがキンカク・テンプルの生命力供給下でセイケン・ツキを永遠に繰り返す不老不死のカラテ奴隷と化す。セトを神たらしめる為に。 42

2023-06-05 01:02:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかし、今……!狩人アヴァリスの爆発四散は凄まじいフィードバックをカリュドーンのシステムに与えていた。当然であろう。アヴァリスはカツ・ワンソーの顕現体のひとつであり、さらには彼に同化したヴァイン、即ち太古の王の一人、クロヤギ・ニンジャの爆発四散をも伴っていたのだから。 43

2023-06-05 01:06:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

顕現体が爆発四散?あり得ぬような事態ではあった。疑う場合ではない。既にそれは為されたのである。かの獣、ニンジャスレイヤーの手で。セトは森羅万象に干渉する圧倒的タイピング速度を駆使して、この巨大な綻びをナノ秒単位で取り繕い、破綻を先送りにし、穴を塞ぎ、修復する。 44

2023-06-05 01:11:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この儀式空間の維持にも尋常ならざるタイピング速度が必要だ。全てのセトがニューロンを最大駆動し、全ての事態に対処するなか、パリパリと空間が音を鳴らし、吹き乱れる風が01のノイズを撒き散らし、荒野の光景と黒い部屋がセトの視界に重なり合った。「イヤーッ!」サツバツナイトが向かってきた。45

2023-06-05 01:14:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イ1100101ヤ010010011ーッ!」セトは古代エジプトカラテを構え、サツバツナイトの打撃を受け、反撃した。サツバツナイトがタタミ2枚距離ノックバックされ、土を踵で削りながら耐えた。「スウーッ……ハアーッ!」荒野の中で、セトは冷酷なカラテを向けた。「もはやもつまい。チャドーひとつでは」46

2023-06-05 01:17:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スウーッ!ハアーッ!」サツバツナイトは不屈めいてチャドー呼吸を続け、ジュー・ジツの構えを維持する。「爆発四散するまでの時間を伸ばしたいのか?」荒野の01001黒い部屋の01001荒野の只中で、二人のリアルニンジャは対峙する。カラテが0101空気を凝らせ、地平にオモイ・ニンジャは見守る。 47

2023-06-05 01:21:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

黒い部屋01001荒野に吹きすさぶ風のなか、希薄だったオモイ・ニンジャは凝縮して地に足をつき、ヒトの姿をとった。掌を見下ろし、確かめるようにトントンと跳ねてから、瞬間的にトップスピードで走り出した。エネアド本社メインフレームUNIXからアクセスするナンシーは、もはや擬態すら捨てた。 48

2023-06-05 01:25:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」セトがサツバツナイトにチョップを振り下ろした。「イヤーッ!」サツバツナイトは肘を捻り、セトのチョップを跳ね返した。謎めいたチャドー秘技、サツキである。サツキに続くジキ・ツキを打てる腕はない。傷つき、だらりと垂れている。だが彼はセトの次なる打撃を更にサツキした。 49

2023-06-05 01:30:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」サツキ!「イヤーッ!」サツキ!セトは倦怠を覚える。腕を伝ってくる痺れを捨てる事ももはや容易。黒い部屋と荒野が重なり合う状況は特異だが、それゆえ、分身を消費するまでもなく、ただ肉体の位相を微かにずらすだけで無効化する事が可能。もはや木人の打撃訓練めいて無力な男だ。 50

2023-06-05 01:35:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

黒い部屋と荒野がストロボ交錯し、空間の破裂が生じようとするのを、セトは神話的タイピング速度でメンテナンスする。サツバツナイトは望み通り、永遠にセトのカラテを受け続けるオブジェとしてこの場に留め置いてもよい。「イヤーッ!」セトは更に、アンク・スリケンを投げ、ナンシーを破壊した。 51

2023-06-05 01:39:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツバツナイトの眼差しがぴくりと動いた。この荒野はセトのフーリンカザンである。奥の手がハッカー頼みとは。セトは目を細め、サツバツナイトに更にカラテを叩きつける。「イヤーッ!」サツキ!「イヤーッ!」サツキ!……「ミイヤアアア」間の抜けた声は、ヒラグモ・デーモンだった。 52

2023-06-05 01:41:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セトの背中から分身が進み出、ヒラグモ・デーモンを抱え上げようとした。それだけで荒野世界がささくれる。負荷限界だ。ヒラグモ・デーモンが足をばたつかせ、目をギョロつかせて跳ねる、そのすぐ背後に、論理ショウジ戸が唐突に発生した。バックドアを通ってナンシー・リンが入場してきた。 53

2023-06-05 01:44:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

論理ショウジ戸の縁には、達筆で「コトブキ」の銘入れがされていた。セトはナンシーを阻止しようとした。ラグが発生し、荒野のあちこちに亀裂が生じた。「Take This!」ナンシー・リンはヒラグモ・デーモンをサッカーボールめいてKICKした!「AAARGH!」デーモンにヒビが走った!荒野の亀裂が拡大! 54

2023-06-05 01:48:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな!」ついにセトは驚愕した。ZAP!ZAPZAP!亀裂が拡大する。黒い部屋が瞬く。ヒラグモ・デーモンの図像に、現世のヒラグモが重なり合い、チラついた。ギンカク・テンプルの傍らに設置された現世のヒラグモに大きなヒビが生じ、光が漏れている。ヒビは空間にまで延びていった……。 55

2023-06-05 01:55:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「Wasshoi!」裂け目に手がかかった。「Wasshoi!」叫びが発せられるたび、裂け目は大きくひろがった。「Wasshoi!」裂け目を広げるのは、赤黒く燃える手だった。「……Wasshoi!」赤黒のニンジャが、裂け目をこじ開け、セトの荒野空間にツカツカとエントリーしてきた。 56

2023-06-05 01:58:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バ……カ……な」セトはその瞬間、リブートするUNIXじみて呆気に取られたのち、すぐさま思考復帰し、ニューロンを極度集中高速回転させた。赤黒のニンジャは構わずアイサツした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」そしてジゴクめいて言った。「覚悟をしておけと、おれは言った。……わかるか」 57

2023-06-05 02:04:05