【ビースト・オブ・マッポーカリプス後編】エピローグ

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リバティが反応した。ケイトーが砕いた石碑はケイムショのものだ。破片が円を描き、ポータルが出現した。その先に居るであろうものは！「さあ、君の時間猶予も少ないぞ。急ぎたまえリバティ君。ケイムショを滅ぼしロンドンを解放するのはKOLの悲願であり、私と彼らとの間で締結された契約でもある」 18

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「機を見るに敏のKOLは今まさにロンドン塔へ強襲作戦を敢行している。彼らは君の力を必要とするだろう。イサオシをあげ恩を着せたまえ。さすれば君は真の自由（リバティ）を得る。お尋ね者の逃亡者のままでは格好がつくまい？」「礼は言わんぞ」「構わん。さあゆけ！聖剣エクスカリバーを用いよ！」 19

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リバティはケイトーを一瞥し、石碑に生じたポータルへ躊躇なく走り込んだ。「イヤーッ！」美しいニンジャは儀式空間からロンドンへ飛び出していった。「……さて。土壇場で色々と込み入っていて、すまんな。こちらの事情がね……」ケイトーはフジキドに向き直り、一礼した。その背後に光が生じた。　20

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「状況に乗じてオヌシが如何なる計略を巡らせようとも、必ず突き止め、阻止する」「フジキド・ケンジ君。私は数千年もの時を生きた。君達には想像もつかないものを見てきた。全てのリアルニンジャが、セトの如く暗黒時代の支配を望むとは思わないでくれ給えよ」光が強まり、ケイトーは逆光になる。　21

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「別れの時が来た。しばしの、あるいは今生の」ヒラグモを抱え、影となったケイトーは光の中に踏み入った。「思えば貴公は煩わしくも好敵手たりうる存在であった。年若いリアルニンジャよ。貴公の道に希望あらん事を。……サラバ」影は消え……荒野は裂け……セトの黒い部屋が再びフジキドを迎えた。22

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「ここは！」フジキドは部屋を見渡した。セトは死んだ。千年にも思えるイクサが決着した。『0100101ツバツナイト＝サン！サツバツナイト＝サン！無事なのね！？』ナンシーのIRC通信だった。『ヒラグモのIPが消滅した！事態は間違いなく好転したわ。何があったの！？』「ケイトー・ニンジャ……！」　23

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フジキドは呻いた。彼はメインフレームUNIXに籠もるナンシーとユカノのもとへ走り出す。黒い通路を駆ける彼が真っ先に思い馳せたのは、ケイトー・ニンジャに対する疑念や警戒よりも、まず、マスラダ・カイの、ニンジャスレイヤーの、ネオサイタマの安否についてだった。　24

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◆◆◆

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重力と熱の感覚がニンジャスレイヤーを覚醒させた。スゴイタカイビル地下大空洞。眼前にはギンカクのオベリスク。設置されたヒラグモは表面に無数の亀裂を生じ、黒く冷え縮んでいた。当初よりもずっと小さい茶器だった。頭上に穿たれた穴から差し込む光。「ニンジャスレイヤー＝サン」コトブキの声。 1

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破壊された膝や上半身にダクトテープを巻きつけた痛々しい姿のコトブキは、足を引きずり、ニンジャスレイヤーに近づこうとした。ニンジャスレイヤーは駆け寄り、支えた。「動くな」「ここまではマークスリー＝サン……リバティ＝サンが運んでくれました」コトブキは言った。「そしてギャラルホルン」 2

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「そうか」ニンジャスレイヤーは記憶に微かに残る映像を思い起こした。儀式空間から現世に復帰する過程で、二つの自我とすれ違う感覚があった。それがマークスリーとケイトー・ニンジャであったのだ。「ヒラグモ茶器の付近の空間に生じていた裂け目に、彼らは入っていって……貴方が出てきました」 3

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見ると、亀裂の名残りめいた空間の歪みが、最後の数インチを閉じるところだった。ぐしゃり、と音が鳴った。ヒラグモが自重で潰れ、無惨な破片の堆積物に変わった。『01001……ニンジャスレイヤー＝サン！無事なのか！』タキの声がニューロンをどよもした。『ナンシー＝サンから状況共有があって……』4

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「ナンシー＝サンから？サツバツナイト＝サンは無事か！？」『あ、ああ、無事だってよ。アイツらはエジプトで無事！なあ、磁気嵐が晴れた！エネアドの妨害が消えたぜ。それで……狩人はヤッたわけだよな？狩人のボスも？儀式をブッ潰したのか？』「そうだ。ブッ潰した」ニンジャスレイヤーは答えた。 5

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彼は深く息を吸い込み、空洞を、頭上の光を見た。大地が鳴動した。頭に激しい痛みが走った。アブストラクト・オリガミが固定されている。「ネオサイタマの状況はどうなってる。タキ」『そッ、それだ！今何処に居る！？その座標はスゴイタカイビルか！？』「そうだ」『早く逃げ……』鳴動が激化した。 6

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DOOOOM！KRAAAACK！KRAAAACK！激しい地震は足場をひどく揺らした。「ンアーッ！」倒れ込むコトブキを掴み、ニンジャスレイヤーは肩に米俵めいて抱え上げた。「お気になさらず！」「黙ってろ」ギンカク・オベリスクは微震動を続けている。ニンジャスレイヤーは片手をかざし、赤黒のオリガミに触れた。 7

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◆◆◆ 8

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DOOOM！DOOOOM！DOOOOOM！凄まじい震動が木々を激しく揺らした。枝から枝へ飛び移るザナドゥはバランスを崩し、落下しそうになりながら、キリモミ回転して次の枝に飛び移った。DOOOM！揺れは強まるばかりだ。彼が走り抜ける間にも、見る見るうちに、密集していた森めいた木々が枯れ落ちてゆく！ 9

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「何だァ！何が起きやがってる……！」DOOOM！バラバラに崩壊する樹木の破片！ニンジャアドレナリン過剰分泌でスローモーションとなった世界で、ザナドゥは連続トライアングル・リープを行い、なお急いだ。マルノウチ！やがて、空間が開ける！「オオオオオオオ！」耳を裂くような咆哮が降ってきた！ 10

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枯れた草原に前転着地したザナドゥは、思わず一瞬、走るのを止めた。「何……だ……こりゃ……！」彼の視界の先にはスゴイタカイビルが存在していた。崩落する過程で時間停止されたような異常な状態であることはひと目でわかった。あれこれ考えるヒマはなかった。装甲車が降ってきた。「イヤーッ！」11

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咄嗟の側転！KRAAASH！装甲車がさっきまで彼のいた場所に衝突し、ザナドゥの肝を冷やす。「オオオオオオオー……！」咆哮が重なった。そのあまりの巨大さと根源的恐怖によって無意識の内に目を逸らしていた存在を、ザナドゥは見上げた。内より黄金の光を発する、半透明の巨人だった。　12

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巨人の頭の周囲には花冠めいて光の槍が八本。胸の中には青翡翠の仮面が心臓じみて埋め込まれている。「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」それらに対して向かってゆくのは……ナムサン……所属も外見も統一感のないニンジャ達であった！イクサだ！ここにイクサがあるのだ！　13

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「AAARGH！」至近の叫びに視線を戻すと、黄金のフェイスレスがザナドゥめがけ襲いかかってきた！「アイエエエ！」ザナドゥは悲鳴をあげ、咄嗟にブリッジ姿勢で回避！「イヤーッ！」「アバーッ！」別のニンジャが黄金影を打ち倒す！ザナドゥは走り出す！何処へ？スゴイタカイビル！感じるのだ！今！　14

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色付きの影となってジグザグに走り出したザナドゥの前方、エネアド企業軍の車輌や機材が放物線を描いて吹き飛び、ニンジャが黄金影とカラテをぶつけ合った。「イヤーッ！」「グワーッ！」アンダーエンジェルが黄金影のチョップに心臓を貫かれた。オルマロクがその黄金影に掴みかかり、引きずり倒す。15

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ザナドゥはフリップジャンプで凄惨な光景を飛び越え、逆さ転倒した装甲車を蹴って跳ねた。「イヤーッ！」「イヤーッ！」手足をバタつかせて飛距離を稼ぐザナドゥの下の地面では、レイテツが地面にカタナを突き立て、半径30メートルの霜柱に複数の黄金影を釘付けにしていた。　16

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」ドクトリンとオーチャードが同時にスリケンを投擲、黄金影の頭を破裂させる。続く黄金影が巨大な顎を開いて喰らいつく！「アバーッ！」「邪魔だニボシ！」前転着地したザナドゥを飛び越えたメリージェーンが１秒後には黄金影のカタナで真っ二つにされた！17