- asuka_taityou
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#twnovel 僕の初恋は小4のときだった。それ以来僕は彼女ほどお互いをよく知りあった女の子と出会わなかった。残念なことに。それでも小説を書く以上僕は致し方なしに有紀とあらゆる恋愛をこれまでにしてきた。死に別れたり、兄妹だったり考えうる限り数十通りはこなしてきただろう。
2011-11-17 09:39:30#twnovel 自前で考えなければならないのは、経験知の少なさと人の恋愛でそれを代替できるほど他人にそれほど興味がなかったせいだ。”今度は身分違いの2人が引き裂かれる歴史ロマンがいいな”脳内の有紀は呑気でかわいい。今では実際の有紀の顔を思い出そうとしても思い出せなかった。
2011-11-17 09:41:47#twnovel 現実の有紀との思い出を思い出そうとすればするほど僕は白々しい気持ちに恐れて切なくなる。僕と有紀は仲のいい友達。もしかすると親友といっていいくらいの幼馴染。それでも記憶にあるのは有紀と仲が良かったころのことよりも次第に冷たくなっていった有紀のきつい視線だった。
2011-11-17 09:46:44#twnovel 習字教室で机を並べて僕と有紀は隣り合わせに座っていた。僕はこの頃有紀の視線にとげとげしいものを感じるようになっていた。昼休みにみんなで遊んでいる時も、こうしてたまに有紀と目が合うときだって。もしかしたら、自分と有紀が仲が良かったなんて幻想だったのかもしれない。
2011-11-17 09:52:02#twnovel 都合のいい自分の我儘を有紀はずっと笑っていたのだろうか?僕は堪らなく苦しくなった。前から有紀は僕と一緒にいるのが嫌だったのかもしれない。ただ僕がそれに鈍感だっただけで。どうしてそんなことにも気が付けなかっただろう。習字の紙に水滴がこぼれて隅をにじませた。
2011-11-17 09:54:14#twnovel 僕は立ち上がって教室を飛び出した。それに驚いた先生が後ろから何か言っているのも僕には本当に聞こえなかった。公園に飛び出して誰も追いかけてこないことが分かると僕はそこで思い切り泣いた。何に泣いているのかもわからずに。所詮自分はその程度の人間なのだと思った。
2011-11-17 09:56:24#twnovel "いつも有紀と仲良くしてくれてありがとうね。有紀、誠太君が習字に通うからって苦手なのに習うことにしたのよ。”あの子ったら好き嫌いが多いから…、今頃になって有紀が僕のことをどう思っていたかなんて考えるのは意味のないことだ。有紀のことを考えることだってそうだ。
2011-11-17 10:13:38#twnovel それでも、結果として僕の感じた冷やかな視線は勘違いだったのかもしれない。だってあの時有紀は確かに泣いてくれた。僕がよく覚えている有紀は僕を見つめる視線とあの泣き顔だ。仮に有紀が僕のことを嫌っていたとしても僕は彼女から多くのものを受け取ったのは間違いないのだから
2011-11-17 10:17:02#twnovel 有紀はしばらくして転校していった。彼女に疑念を持つ僕の前で思い切り泣いて。その時僕は彼女が遠くへ行く悲しみよりも大きな安堵に笑みさえ零れそうだった。折角別れを惜しんでいる彼女の前で僕はどんな顔でいただろう?”誠太君ありがとう”そして僕は今彼女の幸せを祈っている
2011-11-17 10:26:12