探偵の娘シリーズ

大路木実と悪友飯田悟朗によるミステリーになる予定
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隊長 @asuka_taityou

#twnovel 飯田悟朗とは自分のうさんくさい友人の一人である。「さぁさぁ遠慮せずになんでも食べてください。どうせ最近だって貧相なものしか口にしていないんでしょう」僕がおごりますから、なんて無理やり連れ出されたファミレス。久々に見たメニューは飯田のことさえなければ輝いて見えた。

2011-11-23 16:12:17
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「ハンバーグとカキフライ、あと苺パンケーキとドリンクバー」「それだけでいいんですか?」なんて挑発されようとも、飯田が何か吹っかけてきた場合自分で支払える範囲でないと後戻りできなくなる。「それで何の用だよ?」相変わらず病的に色白の飯田は人を食ったように笑っていた

2011-11-23 16:18:49
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「大したようなんてありませんよ。久々にあなたの顔が見たくなっただけで。元気にしてましたか?」そんなこと飯田から言われたところでうれしくもなんともない。「あらら、そっけないですねぇ。こうしてご飯だって奢ってあげるのに」それが妙に裏があると思えてならないというのに

2011-11-23 16:24:06
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「まぁいいですよ。あなたがそっけないのは今日始まったことでもないですし。これを見てくださいよ」渡されたのはありふれたコンサートのチラシ。「これがどうしたんだよ?」まさかコンサートに一緒に行きたいとか?いかにもあり得ないという風に冗談を言ったはずが飯田は頷いた。

2011-11-23 16:26:30
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 飯田とコンサートなんて、まさしく一笑に付すにふさわしい話だ。そう思って笑ってやったのだが飯田の方では真剣だった。「お誘いするからにはチケット代は僕が払います。大路さんは一緒に来てくださるだけでいいですから」あんまり飯田が熱心に誘うので、きっぱり断れもせず悩んだ

2011-11-23 16:32:20
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「そもそもなんでこのコンサートに行きたいんだよ?クラシックなんて興味はなかっただろ?」「ええ、でもほら指揮者を見てくださいよ」「どうした?」「ちょっとイケメンじゃないですか?」思わず飯田の頭を叩いた。「イケメンって…お前男だろ」

2011-11-23 16:34:54
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「それはそうですけど、かっこいいじゃないですか?」飯田はしゃあしゃあとしたものだ。大路さんだって一応女の子なんですから、ちょっとぐらい思うところがあるでしょう?ずいとチラシを押しつけられて写真をみる。金髪の外国人で、確かに飯田の言うとおりかっこいいのかもしれない

2011-11-23 16:38:23
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「はぁ。飯田お前がほんとにこの店とチケット代払うんだな?」「もちろんですよ。最初からそう言っています」そもそも飯田がこんなに気前よく、しかもクラシックコンサートにまで誘うなんてこと自体何かあるように思えてならないのだが、しつこい飯田に根負けしてハンバーグを突いた

2011-11-23 16:46:43
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 恥ずかしながら、自分は音楽についてはまったく造詣のない人間だ。それでもコンサートホールには人がみっちりとうまっており、演奏者たちが心のこもった音楽を聞かせてくれたことだけはわかった。アンコール曲が2曲続きすべてのプログラムが終わって盛大な拍手。

2011-11-23 23:09:11
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 会場の歓声に見合うだけの素晴らしい演奏だった。自分はすっかり隣の飯田の存在を忘れていた。クラシックコンサートなんて見に来たことはなかったが、なかなか良かった。感動しきっている自分の袖を引っ張る何かがいた。飯田だ。「ちょっといいですか?ついてきてください」

2011-11-23 23:12:44
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 自分の腕を引っ張ったまま、ずいずいと会場内を勝手に奥へと進み関係者以外立ち入り禁止の場所に入ろうとしたから振り払った。「おいここに入ったら駄目だろ?何がしたいんだよ」「いいですから。付いてきてくださいって。了解はとっています」一体どこでそんな了解をとったのか

2011-11-23 23:33:27
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「怒られても知らないからな」と言いつつも無理やり楽屋に入っていく飯田を放っておくわけにもいかない。ここで誰かに見つかったらやばいと思った矢先正面から金髪のタキシードがやってきた。ひやひやする自分をよそになんと金髪タキシードと飯田が和やかに抱き合った。

2011-11-24 08:05:08
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「来てくれたんだね、飯田」金髪タキシードは確かにそう言った。「あぁ。すごくいい演奏だった。日本へおかえり」なんと金髪タキシードは例の指揮者で飯田の知り合いだったらしいのだ。まったくまた自分に何も知らせずに、そんなことだったとは…。「それで、こちらの人は?」

2011-11-24 08:08:37
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「あぁ彼女は僕の友人の大路木実さんだよ」自分に対するのとはえらく態度の違う飯田をじとっと見てやりたかったが人前だ。さすがに控えた。その上「大路さん、はじめまして。ヤン・ハンソンです」演奏はいかがでしたか?なんて聞かれて自分はつい舞い上がって何やら答えたが…

2011-11-24 08:19:41
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 自分が何をその時言ったのかについては思い出したくない。”私お恥ずかしながらクラシックコンサートは初めてだったんですけど、とても素晴らしい演奏で感動しました”思いっきり声が裏返って我ながら気持ち悪かったであろうことは同意する。さらに飯田に白い目で見られて…

2011-11-24 08:23:34
隊長 @asuka_taityou

#twnovel そうさ、飯田に白い目で見られたあげくに「そもそも彼女の場合家から出ること自体が珍しいんですけどね」なんて付け加えられたことは早々忘れるべきだろう。「それじゃここで立ち話も何ですから、僕の部屋にどうぞ」楽屋のヤンの個室に通されてお茶をいただく。

2011-11-24 08:33:40
隊長 @asuka_taityou

#twnovel ようやく冷静さを取り戻し周りを観察する余裕も出てきて、(そんな自分をみて飯田もやっと安心した、みたいな顔をしたから、ちょっとむかついた)ハンソンさんに聞いてみた。「日本語がお上手なんですね?それに飯田とお知り合いだったなんてびっくりしました」

2011-11-24 08:41:36
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「実は去年まで飯田と同じ大学に留学していてね。それで演奏家の活動を今年から始めて、日本からコンサートの依頼をいただいたからこうしてまたやってこれたんだ」「実は私も飯田と同じゼミにいるんですけど…」いつの間に飯田はこんな年上の留学生と知り合ったのだろう?

2011-11-24 09:04:57
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「夏の特別講義でグループ学習があってその時ヤンと同じグループだったんだよ」そんなところで。こんな大きなコンサートホールに招かれるような演奏家が自分たちと同じキャンパスにいたのかと思うと伏し不思議な気がした。だがそれにしても、飯田だ。

2011-11-24 09:08:10
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「そういうことだったんなら最初から教えてくれればよかったのに」急にコンサートに行きたいとか、楽屋に入ったり、こっちがどれだけ不審に思ったことか。「だって大路さん僕がヤンと知り合いだからなんて言って信じてくれましたか?」飯田のくせになんたる言い訳。

2011-11-24 09:11:31
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「そりゃあ、もしそう言われていたら…。8割くらい疑いつつ残りの2割くらいは信じていた、かも?」「まったく僕をどれだけ信用してないんですか?」「別に信用してないわけじゃない。ちょっと疑う余地があるだけだ」いつもながら相変わらずの応酬に金髪の指揮者は笑った。

2011-11-24 09:14:53
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「それで飯田は今日は僕に彼女を見せびらかしに来たわけだ?意外だったよ、彼女がいるなんて。飯田は不器用なところがあるからな」飯田との言い争いを非常に好意的に解釈されそうになって大いに焦った。「そんなんじゃないですから!こいつとはただの腐れ縁ですよ」

2011-11-26 20:31:06
隊長 @asuka_taityou

#twnovel もっとも大学に入ってからの付き合いではありますけど、と付け加える。たぶん自分は目の前の指揮者以上に飯田のことなんて知らないのだ。まぁ知りたくもないが。「とまぁそんなわけですよ」飯田が付け足しのように相変わらずのやる気のなさで言い添えた。「それに、ですね。」

2011-11-26 20:34:19
隊長 @asuka_taityou

#twnovel 「今日ヤンに彼女を紹介したのは、前話してくれた件を彼女に解決してもらうためなんですよ」「それはどういうことかな?」飯田の話にハンソンが真剣な表情を返す。「だって彼女は探偵の娘なんですから」――きっとヤンのお役にたてますよ?――

2011-11-26 20:38:33
隊長 @asuka_taityou

探偵の娘2に続きます。そちらもよろしければご覧ください。

2011-11-28 18:41:53