- Shinbyou_A
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足下の氷に鍬を叩きつける。息が凍る。 「大丈夫? すごい音がしたよ」 電話口の声は熱に喘いでいる。貴方こそ大丈夫? と問うと、もう砂に擦れて指の骨が見えてる、と苦笑が返ってきた。砂を掘る彼と氷を砕く私。地球の反対側で生き残った私たちは、せめて最後に出会うため大地に爪を立てている。
2012-02-12 19:11:56「引いてみて」
くじ引き? と問い返すと、着物の少女はかぶりを振った。 「くび引きよ」 屏風の裾からは長い黒髪が溢れている。 「彼女の髪だと思うものを引いてみて。貴方の恋人はきれいな髪をしてたのでしょ? 現れた首が本当に彼女だったら返してあげる。でも外れたら貴方もこっちに来てね。さあ引いてみて」
2012-02-12 19:52:42「試験前」
さあ試験勉強の準備は万全だ。漫画をしまい、パソコンは封印、掃除したくなる罠を避けるため部屋中ぴかぴかに磨いた。「こんな時間に何してるの」と騒ぐママにも何とか黙ってもらう(勉強のためだもの)。温かいココアを入れたらきっと集中できる。その前に手を洗おう。参考書を真っ赤に汚したくない。
2012-02-12 20:43:39「補修作業」
館長に呼び出され、司書は廊下の骨を片づける作業を中断した。 「社長から連絡。壁という壁が崩れて謎の物体になって、世間が大混乱だと」 それは大変と辞書を開く。案の定「かべ」の濁点が紙魚に喰われていた。かへ、では確かに謎の物体だ。補修を終えてすぐ、社長から無事収まったと報告があった。
2012-02-12 20:44:06「繕い物」
月夜の散歩中、繕い物をする老女に出会った。確かにこんな明るい夜なら家で洋燈をつけるより月の光を頼りにした方がいい。前を通り過ぎる寸前、何やら呟きを聞いた。 「こんな穴だらけにして……光が漏れるじゃないか。そらできた」 ばさりと老女が布を広げる。たちまち空に雲が広がり闇夜になった。
2012-02-12 20:44:25-----------------100話-------------------