ギガベース日誌 ほのぼの閑話「電脳に降る時の雨」

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

ほのぼの閑話　『電脳に降る時の雨』　#ギガベース日誌

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サイセター、朝の食堂。 朝食を手短に済ませたその艦娘は、移動を拒む心身に鞭打ち、立ち上がった。　#ギガベース日誌

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まず食堂を出て、左へ。 左右船体を接続する架橋通路を過ぎ、中央ホールを脇目に第3エレベーターで3階へと降る。 エレベーターを出て右に続く、突き当りが見えぬほど長い廊下を移動用ボードで駆け抜けた先に、彼女の目的地であるサイセターの情報室は存在する。　#ギガベース日誌

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サイセターの技術的支柱となる、工廠やAC用ガレージ。それらに比べれば情報室は小規模なエリアだが、戦術的な重要性は勝るとも劣らない。　#ギガベース日誌

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ギガベース一番艦が健在であった頃は、主任という人工知能によって管理されていた情報部門は、今はこの部屋の主──水上機母艦瑞穂によって統括されている。　#ギガベース日誌

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所属する艦娘の大半がその役割すら知らぬ、狭く秘された領域。そこの女王たる瑞穂からの呼び出しを受けた一隻の駆逐艦は、全身に憂慮を帯びながら半自動ドアの開閉ボタンに触れた。 「……どうも」 「お待ちしておりました、山風さん。急にお呼び立てして、申し訳ありません」　#ギガベース日誌

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「べ、別に……基本暇だし……」 いつまでも半開きのドアに張り付いて動こうとしない緑髪の訪問者に対し、瑞穂は手のひらで以て部屋中央の卓へ誘導した。 「どうぞお座りください。お詫びと言ってはなんですが、間宮さんに最中をご用意して頂き……」　#ギガベース日誌

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「要件……」 「え？」 「要件……早く聞きたい。すぐ出るから」 山風は最中に見向きもしない。 この空間から、あるいは瑞穂から一秒でも早く脱兎の如く離れ去りたいという態度が、その振る舞いから顕著に示される。　#ギガベース日誌

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「……そうですね。お急ぎのようですので、早速本題から」 瑞穂は手元のタブレット端末に右手の細指を這わせ、英数字の列が並んだリストを室内のモニターに表示させた。 「今月分の、外部ネットワークデータの回収申請リストです」　#ギガベース日誌

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サイセターのネットワークは、企業によって管理された公のワールドウェブからは完全に隔離された、閉じた空間である。 トーラスやリリアナのバックアップを享受できていた時期は艦内でも自由にインターネットが利用できたが、艦隊合流後は完全に利用不可能となった。　#ギガベース日誌

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開かれたネットワークを完全に絶つ事は、翻って情勢に対する感度を下げることでもある。 この懸念に対し、瑞穂とテルニは外部からの情報を安全に取り入れる手法として、太平洋にばらまいた自律ブイを経由して外部情報をローカル環境に安全に落とし込むという定期作業を考案した。　#ギガベース日誌

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ダウンロードの対象となるのは主に企業広報や深海棲艦発生予報、天気予報、ニュースサイトの情報であり、希望者は指定された容量の範囲内で外部データの回収申請を出すことができる。　#ギガベース日誌

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「沢山希望が来ても大変なので、このサービスの存在はあまり大々的に告知してはおりません。そもそも皆さん、元からインターネットを常用されることが無く、たまにあったとして海賊版の音楽、映画、ゲームデータ等を希望される程度に留まっていました」　#ギガベース日誌

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「ですので、山風さん。これは純粋な興味も含んでいるのですが……何故これほど大量の外部データを。それも、取るに足らないSNSや掲示板の投稿、ニュースサイトのコメント欄の記載内容などをご希望されたのか、理由をお伺いしたく」　#ギガベース日誌