ギガベース日誌 ACT08「PHANTASMA BEING」01

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

夜と朝の境のような曖昧な思考が、断続的な響きによって輪郭を得ていく。 ぴちゃり。ぼとん。ぺた、ぺた。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:04:46
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何を聞いているのだろう。 ただ耳を澄ます事に耐えられなくなった思考は、冷たく固まった肉に指令を飛ばす。 動け。 立ち上がれ。 瞼を開け。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:06:02
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予想以上に身体は重い。生乾きの服を何重にも着せられているような不快感が重量を伴って行動を阻害する。 気合を入れよう。必要なのは叫びだった。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:07:33
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「ぴょんらっしゃぁぁっ!!!!」 重さの正体、自分に折り重なっていた大量の何かを弾き飛ばし、駆逐艦卯月は立ち上がった。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:08:32
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「っでで……ここ何処ぴょん?うーちゃん確か……」 夕日を抱いたような色の長髪には、大量の有機組織が絡みついている。悪臭を放つそれや、周囲に積み重なる物品を凝視し、卯月は窒息したような引きつりを起こした。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:11:58
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死体。 死体、死体、瓦礫、死体、残骸、死体、死体。 人間、ノーマル、艦娘、艦娘、人間、艦娘、人間。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:12:39
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「うっげ~……死体置き場?って事はうーちゃんは……」 卯月は記憶のテープを巻き戻す。 ギガベース鎮守府によるオーメル本社への攻撃。深海棲艦化するオーメルの艦娘達。飛来した特攻兵器。摩耶と加古の絶叫。 「あん時かぁ~~」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:15:24
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卯月の個人的な趣向を満足させるため、その艤装や肉体には固有の改造が多数施されている。 才も無いのに近接戦闘に固執していた卯月にDfJが与えたアドバイスは、やがて騙し討ち機構として昇華し、BIGBOX等で局所的な活躍を見せる事になる。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:18:07
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そんな卯月が辿り着いた究極の騙し討ち機構。 それは、轟沈の偽装。わかりやすく言えば死んだフリ。 大きな損傷や敵艦の行動に対応する形で主要なセンサーに感知されうる船体活動を全て停止。海中へ潜航した後に浮上し、安心しきった敵を背後から討つ。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:22:09
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一時的な潜航の際には修復剤の使用も行われる為、この機構はダメージコントロールとしての役割も果たす。 恐らくは、桜花が近距離で炸裂した際に、使用者である卯月の意識が飛んだ後に発動したのであろう。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:24:37
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卯月は艤装の起動後の履歴をセルフチェックする。損傷が想定以上だった為か、修復剤の散布と強制覚醒プロセスに遅延が生じていたようだった。 「摩耶は……加古は何処に行ったぴょん?うーちゃん置いて帰るなんてとんでもねえ薄情共っぴょん」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:27:11
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卯月は周囲を注意深く観察する。 とても、奇妙な場所だった。 周囲に山積する死体やガラクタの山からして、何かしらの廃棄場であるのは明白だった。しかし、照明や床のレール、積み上がったコンテナはどれも見覚えのない意匠を湛えている。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:29:45
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「……アビスぅ~?」 オーメルでもギガベースでもない。ABYSSと記された紋章が、そこかしこに見受けられる。 「はは、まさか深海棲艦のお家にでも来たってかぴょん?んなアホな……」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:30:55
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ろくでもない発想を口に出すものではない。 瓦礫の山の向こう側でガラクタの搬送作業に従事する深海棲艦を目にして、卯月はそれを思い知った。 「……今、なにか聞こえなかったか」 「また何か転げ落ちたんだろう。好き勝手に積み上げるからだ」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:33:10
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作業にあたっていたタ級とル級は、卯月が瓦礫の中に身を隠した音を誤認してくれた。 流暢な人語でコミュニケーションを行う彼等の姿はそれだけで精神の安定をかき乱すものだ。 しかし、それ以上に、卯月の正気を削るものがあった。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:36:14
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「おっはよ~!作業の進捗はどう?」 軽快な挨拶と共に廃棄場に入ってきたのは、一見異常な点が見受けられない軽巡洋艦夕張だった。 「絶賛難航中。こんなん目視と手作業でやらせるとか正気じゃないぞ」 「第一、そんな大事なサンプルならなんでここに詰め込む時に弾かなかったんだ」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:39:22
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「ごめんなさいね。でも、まだ純粋な残骸があるって聞いたら調べない訳には行かないでしょう?港湾ちゃんや防空ちゃんのデータからして、他にも特殊なパルヴァライズを達成したギガベースの艦娘がいるかもしれないんだから!」 「お前の研究とかわりとどうでもいい。それより、ほら」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:41:18
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タ級は、死体の山から見つけ出したのであろうそれを、夕張の前に放り出した。 「お望みの、ギガベースの艦娘の残骸だ。さっき2隻連続で見つけた」 ああ、やっぱりだ。 遠目で見たが故に確信には至らなかったそれを、夕張達の会話が証明してしまった。 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:44:16
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「グッジョブッ!これは……雲龍型かしら?潰れてるせいでよくわからないわね」 「そっちは葛城だ。あの駆逐艦がセントエルモを襲った時についでに蹴り殺したやつだ。大型艦のパルヴァライズに注力してたせいで、こっちには手が回らなかったらしい」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:46:40
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全体の半分がボロ布のような造形に成り果てているそれは、かろうじて形状を保っている脚部からようやく艦娘の一部と判断できるものだった。 その脚部でも、蜂の巣のように開いた穴から覗く赤黒い筋肉組織が死に際の壮絶さを物語っている。 「それで、こっちは?」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:50:29
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「こっちも下半身しか残ってないが、3日前にロールアウトした上位種の構成棲素に記録があった。重巡洋艦の加古だ。セミパルヴァライズを起動したオーメルの瑞鶴と相討ちになっていた」 「そっか……やっぱり介入後に轟沈した艦はいないのかなぁ。前哨戦で死んだ連中を調べてもねぇ」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:53:58
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「戦闘後に生成された深海棲艦の構成棲素から、轟沈後に船体が残っている艦娘の記録とか漁れないの?」 「可能だが、クイーンズランスが別件で忙しすぎるせいで全艦同期の再開が遅れてる。ていうかこれお前がこのクソ作業を頼んできた時にも言ったはずなんだがな」 #ギガベース日誌

2019-11-07 01:59:37
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「インターネサインとの同期も断ってる以上、我々の処理能力は個々や上位種のコンディションに依存する。お前も半分こっちならわかるだろ」 「失礼しちゃうわ。私のは今の所ただの強化手段だし」 彼等が何を言っているのかわからない。 会話の半分が知りもしない言葉でできている。 #ギガベース日誌

2019-11-07 02:03:17
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「ま、雑魚とはいえせっかく見つけてくれた貴重なサンプルだし、一応こっちで調べときましょうかね!」 「雑魚はお前っぴょん」 気付けば、得物は重力とQBの助けを得て振り抜かれていた。 両腕から飛び出したMURAKUMOの刃はタ級とル級の胴体を両断し、夕張の首筋に赤い線を刻む。 #ギガベース日誌

2019-11-07 02:06:47
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「っ?!!」 夕張への攻撃は浅く、頸部の切断には至らない。それでも、想定外の襲撃を受けた夕張は駆動液を吐き散らしながら膝をついた。 「ごぶっ、えっ、ちょっ……」 「動くんじゃねえっぴょんクソメロン!!おとなしくうーちゃんの質問に答えるっぴょん!!!!」 #ギガベース日誌

2019-11-07 02:08:58
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