過去の話。中国版かつ海賊版「ポケモンカード」のインフレ率がとんでもないことになってた

模範的工作員同志/赤野工作 @KgPravda

夕方16時を過ぎました。表で言っても多分AIに検閲されないので紹介出来る世界の低評価ゲームを本垢で紹介するコーナー。今夜は2006年からリリース、続き続けたインフレーション「神奇宝贝卡 超水晶系列」の紹介です。 pic.twitter.com/72ViPOVpRa

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2023年10月28日で、中国本土でポケモンカードが正式発売されてからまる一年。諸外国より四半世紀の遅れを経て発売されてみれば、なんと言うか、あっという間と言うか、中国がポケモンカード空白地帯だった時代も今は昔って感じですね。

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まぁ建前上「ポケモンカード空白地帯」とは言いましたが、実際にこれまで中国語にポケカ文化が無かったというと勿論違います。転売屋が海外で買い付けた並行輸入品は大量に出回ってましたし、それになにより……いろんな業者が"勝手に"作ってましたから。 pic.twitter.com/X11OBdg8c3

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当初こそ業者製のパチモンポケカは正規品のコピー品ばかりだったようですが、任天堂という鳥無き島の文字通りの蝙蝠であったパチモン業者は、資本主義の必定の中で徐々に「TCGの運営元」として振る舞わなければならなくなり、競争原理に飲み込まれていきました。 pic.twitter.com/c4Ulwbbvj0

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いつまでも正規品のコピー品刷ってたって商売は成り立たない。パチモンだろうがなんだろうが、TCGのビジネスは常に「古いカードよりちょっとだけ性能が良い新カード」を永久に売り続けなければならない。こうして中国にはオリジナルのパチモンポケカが出回り始めました。 pic.twitter.com/nJLSzPmG9n

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こうした中国のオリジナルパチモンポケカは無数の業者から無数の種類に作られていたのですが、今回ご紹介するのは中でも藍版と呼ばれるカード裏面が青いカードのシリーズ。彼等も初期の頃にはこんな風に正規品のカードに端数がついたようなオリカを売っていました。 pic.twitter.com/vy83y0kvyV

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……ところで、さっき私、TCGのビジネスは「古いカードよりちょっとだけ性能が良い新カード」を永久に売り続けなければならない、って言ったじゃないですか。TCG知ってる人には当たり前もクソもない話だとは思うんですが、知らない人に向けて。これ、なんでだと思います？ pic.twitter.com/ebVvFdXFVf

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答えは簡単で、「古いカードより性能が良いカードじゃないと新しいカード買う意味がない」し、「かと言って突然超強いカード作っちゃったら次の次に作るカードが無くなるから」です。自分たちのブランドを少しでも長続きさせるため、TCGの運営元は細心の注意を払って新メカニズムを作るわけですね。 pic.twitter.com/RJ1wCAUInh

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しかしながら、ですよ。パチモン業社は「ブランドを長続きさせよう」なんて意思も当然希薄でしょうし、そもそも新メカニズムなんて作ろうと思ったら時間もお金もかかりすぎる。とは言え、自分達の手で「古いカードより少しだけ性能の良い新カード」を作らなければ、ビジネスは当然成り立たない。 pic.twitter.com/ClbCLgxbWR

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そうした幾つもの特殊な条件と論理的思考が積み重なって、「古いカードより数値を桁が増えた新カードを出し続ける」という帰結に行き着いた中国パチモンポケモンカードのうち、インフレの頂点に達したシリーズ。そのカードのことを「超水晶シリーズ」と呼びます。 pic.twitter.com/qqlX0xMsKa

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長々と勿体ぶりましたが、超水晶シリーズ、そのインフレの歴史を早速見ていきましょうか。まずは2桁から3桁のインフレ。まぁこれは公式のポケカもそれくらいの数値は増えてますしね。そこから間髪入れず3桁から4桁。だいたい数ヶ月のうちに正規品のポケカのインフレ率は抜いてたことになりますね。 pic.twitter.com/9PU1QnTZDC

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せっかくなのでこの当時のインフレのスピードを物語る良い例をお見せしましょう。この2枚のサンダース、全く同じ絵柄だけど、数値だけ3〜7倍になってるでしょ。新しいコンセプトのカードは数値が強くなってるとかそういう話じゃない、本当に数値のみが超スピードで膨れ上がっていたってことですよ。 pic.twitter.com/FaKHeVQTCz

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こんなことやってるとキリがないのでサクサク行きましょう。4桁環境が出来たなら……当然新弾は5桁環境ですよね。では5桁環境が出来たなら？　もちろん新弾は6桁環境です。はい続いて7桁、8桁とんで9桁。もうここまで来るとHPが名前書く欄まで侵食してますね。 pic.twitter.com/vQ1sLu2Rhr

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さて、ここで皆さんに問題です。これ、このままいくと新弾の数値をインフレさせようにも、数値が大きすぎてもうカードの枠内に書ききれなくなりますよね？　とは言え新弾のカードは当然これより強いカードじゃないと売れるわけがない。……では、皆さんだったら、次の段にどんなカードを作りますか？

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まぁやり方は色々あると思いますが、「一旦ブランドをリセットする」とか「メカニズムを考える」と答えた方は不合格なのでぬるま湯に浸かり切った己を恥じてください。ちなみに模範解答として史実も紹介しておきましょう。「もう桁数の最小値を億にしちゃう」です。 pic.twitter.com/Q2RV4IvdFJ

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水晶版は当時8枚1パックで売られており、中の1枚は珍蔵版という当たり枠カードでした。最小値単位を億にしたことでスペースが空いたので、またここから1桁づつ増やしていける……と思った貴方、残念ながら不合格なのでぬるま湯に浸かり切った自分ももう一度深く恥じてください。 pic.twitter.com/m1cGROSxZS

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今更チマチマ1桁づつなんて増やしてどうするんですか。せっかく「億」という画期的な発明が生まれたんですよ。どうせ新弾で増やすなら……「億」の個数の方でしょ！ pic.twitter.com/LyNoeodGib

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はい、じゃあ仕方ないのでもう一度だけチャンスを与えますよ。当然弾を重ねるうちに「億」の個数もインフレしすぎて名前の枠欄がいっぱいになってしまいました。このままでは新弾をインフレさせようにも億を書くスペースがありません。こんなとき、貴方がパチモン業社ならどうしますか！？ pic.twitter.com/jQQJBVOOnN

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はい、億の個数を2段で書く、正解！じゃあ次の新弾はどうしますか！？　はい、億の個数を3段にする、正解！じゃあ次の新弾は？　はい、もうまどろっこしいから億がこの中に何個分ある、って書いておきましょう！　じゃあ、この次の段はどうしましょうか！？この次は！？次の次の次は！？ pic.twitter.com/oLsMOZmedG

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超水晶版の環境が「億億億億億億億億億×000億億倍環境」という最早子供には読めないインフレまで到達したのは、たった数年の間の出来事でした。 pic.twitter.com/UvI2hTLIeH

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こうしてインフレした歴史だけを振り返ると、おそらく正規品のポケカの環境に慣れた方は「いくらなんでもなんでそんなことに……？」と思われることでしょう。しかし、ここにはポケモンカードというゲームの遊び方に日中の差があることを考慮に入れなくてはなりません。 pic.twitter.com/FIkfRmb8uF

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当時の中国の子供の立場に立って考えてみれば、ポケカは「正しく遊び始める」のに敷居の高いゲームです。まず第一にパチモンにはルールブックがないから正しい遊び方が分からない。デッキを組むのにはトレーナーカードやエネルギーカードが必要だけど、補助カードのコピー品なんか業者は作らない。

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これらのインフレカードを当時皆さんの知っているポケカのルールで遊んだ中国の子供達は、おそらくほとんどいないでしょう。基本的にはモンスターカードのみをバラで買って、集めて楽しむか、ひっくり返してみたいに遊ぶか(拍卡)か、数字比べて遊ぶか、それくらい。 pic.twitter.com/kQHPyFtSs9

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ようはこれって昭和の日本における「メンコ」とほぼ同じ立ち位置の遊びでしょう。中国のポケモンカードのローカルルールにおいては、「億億億億億億億億億×000億億倍環境」も、一目で強さがすぐ分かるし集めて楽しい最適化に沿った進化だった、というわけです。 pic.twitter.com/aUN8Oxp9zw

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中国でも正規版のポケカが発売された現在、パチモンポケカが作り上げた中国TCG文化は刻一刻と過去のものになりつつあります。最早これらのカードで遊ぶ必要もない時代がようやく訪れたのだと思えば……、単位が兆まで到達したポケカも、ようやくインフレの天井に到達したんだって、そう思いませんか。 pic.twitter.com/xbDHLLMU8k

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