映写技師・月夜野さん( @tsukiyono_ )による「映写小噺:求めたい音~良い音と映画館の調音設計に関する私感~」

映画館における「良い音」とは何か? 映写技師・月夜野さんのツイートをまとめました。
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月夜野 @tsukiyono_

音響空間デザイナーの方とお話しした。映画音響とはアプローチも手法も違うが、測定に頼らず「耳」を大切に演出や調整することで話は一致、良い音とは何かで白熱した。自分は理論規則を重視するので測定結果は大切だと考えているが最終的には施主(劇場)と作り手(監督)の意向が大切だ。

2011-12-07 02:42:51
月夜野 @tsukiyono_

ただし映画館の場合はDolby、ISO、SMPTEなどで世界統一基準があるのでそこから逸脱することはできないから実測値の客観性は非常に重要である。この基準の範囲から逸脱せずに「良い音」に調音するのがプロの仕事。遮音・吸音して数値合ってればOKでは寂しすぎる。

2011-12-07 02:45:10
月夜野 @tsukiyono_

例えばTHXでは厳格な基準で設計されているから、データ上はどこの劇場も大差はない…はずである。しかし再生される音や音場はTHXでも全く異なるのが現実。おいしい音を出すには箱そのものを綿密に造り、繊細な調整が必要だ。加えて実聴での検査も自分は重視するから「基準音」を知ることが重要。

2011-12-07 02:47:42
月夜野 @tsukiyono_

現在の施工スタンダードである、グラスファイバーで吸音しまくって残響を制御し機械で音調整する手法は好きではない。箱がおいしい音を出し、そこにエッセンスを加える程度の電気調整という思想を今後の映画館には持ってほしい。良い機材でも吸音しすぎの劇場では気の毒である。

2011-12-07 02:50:54
月夜野 @tsukiyono_

ピュアオーディオにも言えるけど、1つの目安として「小音量」で情報量と鮮度が高い音を再生でき、スピーカーから離れた客席にもきちんと聴こえる室は良いと言える。スピーカーの性能・調整と箱の音響特性が高次元に両立されている証拠だ。吸音重視の劇場は小音量で美しい響き、鮮やかな音は出ない。

2011-12-07 02:54:51
月夜野 @tsukiyono_

そういったことを音響空間デザイナーの方と話したのだが、その方は寡黙で人と気軽に話すのは少ないそうで、周囲が多弁ぶりに驚いていた(笑)。自分ごときこわっぱの話題にお付き合いいただけて恐縮で勉強になった。また自分が提唱?する「適度に密な林の音場は理想的」論に関心を抱いてくださった。

2011-12-07 02:59:29
月夜野 @tsukiyono_

自分は「モニター性能」重視なので良い録音、悪い録音どちらもさらけ出す劇場が好きだ。映画は入口(ダビングステージ)と出口(劇場)の整合が取れているのが大前提だからDolbyやTHX規格はまっとうであるがこれはスタート地点であって、規格内で最高の音響空間まで昇華させる真剣さが欲しい。

2011-12-07 03:29:52
月夜野 @tsukiyono_

映画館はもっと自由奔放に造って良いと思う。良い音はデザインや設計に表れ居心地も良く、聴感的に居心地の悪い場所は音響もダメ、これ本当。林の音響理論は腐葉土と木の適度な吸音拡散効果により音を遠く平坦に伝送する性質に基づいている。林で聴く水流の音は鮮度が高く遠くでも聴こえるでしょ?

2011-12-07 03:35:51
月夜野 @tsukiyono_

これを映画館に応用すれば今とは全く異なる音響空間ができるだろう。シミュレーションなどぜひしてみたいが包み込まれるアンビエンスと明確な定位が得られるはずだ。壁や天井を木の丸棒や角材を計算して配置し奥は空気層に。吸音材は限定使用でスクリーン周辺の壁や天井は客席に向け後壁は屏風構造。

2011-12-07 03:41:36
月夜野 @tsukiyono_

壁は全面高密度グラスウール、天井も吸音材、ブ厚い座席。そんなギスギスで響きのない映画館に行くたびにそう思う。聴感上で好ましい範囲の反射音は必要ではなかろうか。シネコンの音に色気や艶が欠け、大音量にせねばならない場合が多いのは単純な吸音重視思想のため。費用の問題もあるけどネ。

2011-12-07 03:44:37