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せかさん自ギルドまとめ

せかさん自ギルド(俺様最強大海賊団)に関するツイートまとめ 設定、感想、小話、怪文書をだいたいゲーム中の時系列順に並べたごった煮です
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炭(すみ) @sumi57494532670

「私の名はノア。こちらは我が主のアレス様。私の事はアレス様の付き人…影のようなものだとお考えください。職業はゾディアック。宜しくお願いします」 「へえ、ゾディアックか。うちにゃ居ないクラスだ。で、そっちの兄ちゃんがあんたの主…プリンスってことでいいか?」 「いえ」 アレスは答えた。

2023-11-17 23:45:57
炭(すみ) @sumi57494532670

「身分として王子ではありますが冒険者のクラスはファランクスです」 「ん?現役の王子ってことか?こんなとこで冒険なんてやってていいのか?」 「はい。国には父がいますし、年の離れた兄もいますから」 「へ〜。…おい、どっかのなんちゃってプリンスより王子らしいんじゃねえのか?」 「うるせえ」

2023-11-17 23:46:16
炭(すみ) @sumi57494532670

シドゲイルの軽口に返す言葉に力はない。正直な所どうでもよくなっていた。シンシアが会えと言ったという事は彼女はこの二人の加入に賛成なのだ。そしてギルドの資金を殆どシンシアとファーマー四姉妹に依存している以上彼女達には頭が上がらない。つまるところ、今回の加入は既にほぼ確定事項だった。

2023-11-17 23:47:00
炭(すみ) @sumi57494532670

第一印象があまり良くなかったノアも、話してみれば意外とまともだった。見た目とは裏腹に気さくで親しみやすく、それでいて気配りを絶やさない人物であることが短い間にも伝わってきた。アレスはいささか真面目すぎるきらいがあったが、素直で善良な精神の持ち主であることは間違いないように思えた。

2023-11-17 23:47:18
炭(すみ) @sumi57494532670

(まあゾディアックもファランクスも今まで居なかったしな。暫くは戦力にならんだろうが入れといて損はないか。金髪の方は女を釣れそうなツラしてるし。気に食わんが) ヴィンセントの思考を他所に、試験とは名ばかりの交流は続く。そうして、穏やかでのほほんとした雰囲気の中、事件は起こった。

2023-11-17 23:47:47
炭(すみ) @sumi57494532670

「それで、なんでうちのギルドを選んだんだ?」 「はい、それはひとえにこのギルドが最も強く――」 (あー茶番だ茶番。さっさと終わらせて酒飲みに行きてえ…) 「――それと、そちらのヴィンセント様と結婚を前提にお付き合いしたいと思ったからです」 「え?」 「え?」 「え?」 …時間が、止まった。

2023-11-17 23:48:07
炭(すみ) @sumi57494532670

何かの聞き間違いかと思ったシドゲイルが再度アレスに訊ねる。 「すまん。コイツと、その…なんだって?」 「結婚したいと思っております」 「え、は、…はあっ!?」 突然のことに素っ頓狂な声を上げるヴィンセント。理解がまるで追い付かない。通り魔からいきなり殴り掛かられたような気分であった。

2023-11-17 23:48:41
炭(すみ) @sumi57494532670

眼の前には真剣な顔をした美男子が見つめてきている。生まれてこの方こんな経験をした事はなかった。したくもなかった。背筋に寒気が走るのをを感じた。 「…言っとくが、俺様にそっちの趣味はねえぞ」 「?それはどういう意味でしょう?」 「掘ったり掘られたりの趣味はねーっつってんだよ!」 「?」

2023-11-17 23:49:02
炭(すみ) @sumi57494532670

何の事かわからないと疑問符を浮かべるアレスに苛立ちを募らせるヴィンセント。そこに「大将、大将」とドナテロが近寄ってきて耳打ちをする。 「自分の体、よく見てみな」 「え、何?―――あ」 この時になってヴィンセントはようやく気付いた。今朝起きた時からずっと、女性の身体に変化していたことに。

2023-11-17 23:49:25
炭(すみ) @sumi57494532670

ヴィンセントには不定期的に性別が変わる奇妙な体質があった。それは日頃の女癖の悪さからお灸を据えるためシンシアから掛けられた呪いであり、解呪された今も続く後遺症であった。変わる時の条件やタイミングは不明。しかし慣れとは怖いもので、その変化はいつの間にか日常の中の一部になっていた。

2023-11-17 23:49:45
炭(すみ) @sumi57494532670

なお、この呪いと後遺症はヴィンセントに限らず他のメンバーも全員かかっている。今日この場で変化しているのはヴィンセントだけではあったが、ともあれ、今ここにいるのは、柔らかく艷やかな髪に滑らかな肌、細い指に小柄ながらも豊かな乳房を携えた、見た目だけで言えば紛うことなき美少女であった。

2023-11-17 23:50:07
炭(すみ) @sumi57494532670

「酒場で初めて姿をお見かけして、ひと目見て惹かれました。力強い瞳、豪胆で不敵な物言い、威風堂々とした立ち振る舞い…その全てが陽のように輝いて見えました。そして今、その想いは一時の感情や勘違いなどではなかったと、貴女を前にして確信しました」 いや勘違いだよ、とヴィンセントは思った。

2023-11-17 23:50:29
炭(すみ) @sumi57494532670

「あー、あのな。実は俺様は男でな」 「?どこからどう見ても可憐なご婦人にしかみえませんが…」 「あー、まあー、確かに今は最強に可愛い美少女なんだがー…」 ヴィンセントは説明した。誤解が生じぬよう、丁寧に。話を聞いたアレスは半信半疑と言った様子だったが、傍らに居たノアが理解を示した。

2023-11-17 23:50:46
炭(すみ) @sumi57494532670

「我々は天空に存在する元素、即ちエーテルを観測し星術を成している訳ですが、その原理は万物の一つたるヒトにも当てはまります。実を言うとヴィンセントさんのエーテルの流れに違和感がありました。有るべき物がなく無いべき物があるような…呪いは専門外ですが、お話が事実であれば辻褄が合うかと」

2023-11-18 00:11:24
炭(すみ) @sumi57494532670

「なるほど。ノアがそう言うならきっとそうなのだろうな」 うんうんと頷くアレスにほっとするヴィンセント。 「誤解が解けたようで何よりだ。それじゃあそろそろお開きに――」 「ですが」 それが何の問題なのでしょう、とアレスは言った。 「肉体は器に過ぎません。真の愛の前に性別など些細な事です」

2023-11-18 00:11:25
炭(すみ) @sumi57494532670

ヴィンセントの表情がピシリと音を立てて固まった。一方、隣にいるドナテロは神妙そうに頷いている。 「わかる、わかるぞ。そう、真の愛の前には性別も歳も関係ないんだ!それを既に知っているとは若いのにやるな、兄ちゃん。いや、アレスって呼んでいいか」 「勿論です」 二人は固く握手を交わした。

2023-11-18 00:11:26
炭(すみ) @sumi57494532670

「おいてめえら、いきなり意気投合してんじゃねえ。シド、お前も笑ってるんじゃねえ…笑い過ぎだ馬鹿!」 ゲラゲラと腹を抱えて笑っていたシドゲイルは肘鉄を喰らって大きくむせた。 「ゴホッゴホッ…。いやすまん。こういう奴は珍しいと思ってな。だがアレスよ。お前、本当に平気なのか?」

2023-11-18 00:11:26
炭(すみ) @sumi57494532670

「それは、どういう意味でしょう」 「コイツは今でこそこんなナリだがよ、男ん時はそりゃあひでぇぞ。ガサツだしオッサンだし。臭ぇしオッサンだし。百年の恋も冷めるってもんだ。それでも本当に平気なのか?」 本人の前で失礼極まりない台詞だったが、シドゲイルの言にヴィンセントは活路を見出した。

2023-11-18 00:11:27
炭(すみ) @sumi57494532670

口だけならいくらでも言えるが現実を見せてやれば考えも変わるだろう。この場で男に戻れれば一番良かったが、残念ながら肉体変化はシンシア無しに制御が出来ない。ならば。 「おい、サクラ!」 「ん」 声をかけられたサクラは心得たとばかりに懐から紙と筆を取り出すと、ざかざかと手を動かし始めた。

2023-11-18 00:11:28
炭(すみ) @sumi57494532670

手慣れた筆さばきと鮮やかな筆致で見る見るうちに描き上げられたのは、ぼさぼさの髪に無精髭、海賊の象徴たる三角帽子《トリコーン》を被り不敵な笑みを浮かべぎらついた瞳が爛々と輝く野性味溢れる間抜け面…もとい、常日頃のヴィンセントと瓜二つの似顔絵だった。サクラは人相書きを得意としていた。

2023-11-18 00:11:28
炭(すみ) @sumi57494532670

「ん」 「おうサンキューな…おい、いつもの俺様はもっと格好良くないか?眉毛の形がイマイチな気が」 「そんなことない。実に忠実。本物もこんな程度」 「そりゃどういう意味だ!…まあ、このアホ(アレス)を諦めさせるには多少不細工な方が都合が良いか。おい見ろアレス!これが俺様の真の姿だ!」

2023-11-18 00:11:29
炭(すみ) @sumi57494532670

ヴィンセントはどうだとばかりに自身の似顔絵を突きつけた。対するアレスの反応は。 「いつものヴィンセント様も、お口が大きくていらっしゃるのですね」 それは天使の微笑みだった。あるいは聖母のような、たおやかで純粋な慈しみ。口にそっと手を当ててはにかむような仕草が、一同の胸を打った。

2023-11-18 00:11:30
炭(すみ) @sumi57494532670

ヴィンセントは一瞬でもそう感じた自分を殴りたくなった。シドゲイルは感心したように腕を組んだ。 「お前の熱意には負けたよ。合格だ。入団を認めよう」 「ありがとうございます」 「待て待て待て何勝手に合格判定してやがる」 「?」 「不思議そうな顔すんじゃねえ!嫌に決まってんだろこんな奴!」

2023-11-18 00:11:30
炭(すみ) @sumi57494532670

「しかしな、こんな面白…熱い奴は初めてだぜ。ドナテロもそう思うだろ?」 「ああ」 「そりゃこいつはそうだろうが!おいサクラ!お前も何か言ってやれ!」 「ノアさっき飴くれた。優しい。好き」 「三十過ぎのおっさんが飴ごときで買収されてんじゃねー!」 ヴィンセントは孤立無援を自覚した。

2023-11-18 00:11:31
炭(すみ) @sumi57494532670

「そもそもテメーは王族だろうが!男と結婚して跡継ぎとかどうすんだよ!」 「む、それは確かに盲点でした」 何が何でも諦めさせようと苦し紛れで放った一言は、しかし、なかなか効果があったらしい。どうしましょう、とアレスは困ったように眉を寄せた。 「お待ちください」 ノアがすっと手を挙げた。

2023-11-18 00:11:31
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