膝に小さな違和感を感じて初めて、自分が崩れ落ちたことに気づく。床を染め上げる赤い液体は心までもを深く突き刺す香りがした。
2023-12-21 21:01:29全部が嘘になってしまった。それは永久に変わらないただの過去になった。 皆を守りたかったな。その意志も願いも、決して嘘ではなかったのに。
2023-12-21 21:04:17「ざ~んねん!折角3人も生き残ったのに…頑張って守ってきたであろうに、最期は2人とも馬鹿みたいに命を絶ってしまうんですから」
2023-12-21 21:05:06けらけら軽く笑う羊飼来夢。何も返す言葉など無い僕は、ただ血濡れた後輩達を、楽しそうな音楽を奏でる遊園地の風景を眺めている。 1番つまんないのが残っちゃいましたね、なんて声がため息混じりに聞こえた。 ...こういう時、なんて返せばいいんだろうか。
2023-12-21 21:06:00ぱちん。 細い指先で鳴らされた音と同時に足元に違和感を感じた。...足元が、地面が無い。丸い落とし穴になっている。
2023-12-21 21:07:51この舞台はこうやって何もアクションを起こせぬ間に、次々にシーンが移り変わっていくんだ。 小さく息を吸い込み、なるがままにと目を瞑った。
2023-12-21 21:08:29彼女が再び指先で合図を弾ませると、ぱっと蛍光灯がついた。さっきと何の変わりもないように聴こえたけれど、うまく使い分けて鳴らしているのだろうか?...いや、そんなことどうでもいいんだけど。
2023-12-21 21:13:26「ここは僕の自室...をこの夢の中で簡易的に投影している部屋です。舞台装着みたいなものなので、足元の書類達も好きに踏んでいいですよ」
2023-12-21 21:14:37下に視線をやると確かに印刷紙が散乱していた。ただし全てにモザイクがかかっており、少しずらして見ようとしても動かない。 超常現象ばかりの空間だけれど、これは高画質なデジタルアートのようで妙に親近感がある。
2023-12-21 21:16:07ただ立ち止まっていると後ろ、と指示を出された。...振り返った先で、青白い光が僕に異物を示す。 「...カプセル。」
2023-12-21 21:16:23「“sheep sleep”。ほら、宝探しの時の概要にも記してあったはずです。」 得意げに、彼女はカプセルに触れる。ガラスの先には透明な薄いピンク色の液体と、...月護さんが眠っていた。そのカプセルの横には、空っぽの7つのカプセルが揃っている。
2023-12-21 21:16:49「”月護きずな sheep sleepにて保管続行、社会的存在を消去、脳内記憶への定期的な干渉“...だっけ」 「そうですそれです。へぇ、君の頭の作りは割とマシな方なんですね」 「...どうも」
2023-12-21 21:18:06月護さんの口元には酸素ボンベのようなものが付けられていた。 「月護さんはもう、目覚めないの?」 「目覚める必要があると僕が判断しない限りは」 「この7つのは...紅麗さんや來瞳さん達が入る分?他の子達はまだ外にいるの?」 「連れてくるのは君を帰した後になりますね」
2023-12-21 21:18:33「そうなんだ。」 聞きたいことは沢山ある、けど。全部を聞き出せるような雰囲気では無いから、今聞きたいことだけを口に出してみる。
2023-12-21 21:19:19