☾·̩͙⋆ Epilogue【魔法少女は夢を紡いで】

【公式】魔法少女は夢を紡いで @mg8_zzz

「えっと、単純な疑問...だから否定したいわけではなくて。...君はこの子のことを、本当に大事に思っているんでしょ。じゃあ、夢の中に閉じ込めたりせず...正攻法で、彼女と両想いになろうとは思わなかったの？」

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「夢の中...僕たちがずっといるこの空間は、言ってしまえば偽りの世界、だよね。その世界で幸せになることが、君のしたいことなの？」

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羊飼来夢は1秒も間を空けず人差し指を立てた。逆鱗に触れてしまったか、と少し身構えてしまう。 「ひとつ、問題です」

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「彩芽ルカ。君は本当に、なんにも違和感に気づいていないんですか？」

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「僕たちは、伽夜乃つぐの死骸が転がっていた“観覧車の下の地面”から、落ちてきましたよね。...でも、僕たちって最初はXXXにいませんでしたっけ？」

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「...あ、」 声を漏らした瞬間血の気が引いた。そういえば、僕はドアノブを回して、それで...あれ

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なんで。なんでまじかるきゃっするの4階にいたはず...なのに、つぐは“外にある観覧車”から落ちたんだ？ 愛の遺体は、メリーゴーランドの近くにあったことになっているんだ？

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「こういうことじゃないですか。夢、って」

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「全部全部、気づけば当たり前の現実みたいに受け入れてるけど...よく見たら支離滅裂。物理法則も秩序も倫理も過程も無視して、どこからが嘘でどこまでが本当なのかさえあやふやになってるんですよ。」

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「ねえ、君はいつからこの夢にいるんですか？パステルカラーの空の下で目が覚めた時から？遊園地のチケットを手にした時？それとも、演劇部員みんなが出会った時？もしかしたらそれよりずーっと前...生まれた時からかもしれない。」

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「わかんないでしょ、わかるわけがないんです。夢に取り込まれた立場である君には、違うだなんて断言できない。じゃあなんだっていいじゃないですか。」

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「君が夢の中にいる限り、君はだんだん居心地に溺れていく。夢だってわかってたはずなのに、自分が自分の意思で行動を起こすことが重なる度...いつしか思考の前提から“今は夢の中にいる“という情報が消えていく」

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「夢の境界線だって、僕がまだ夢の中にいるような状況下では曖昧なものにすぎない。夢と現実の切れ目がわからないことを認めて、夢を現実にすり替えて。気づけばこの世界が偽りかどうかなんてどうだってよくなってるんです。自分が生きて、目にしている世界がいつのまにか本当になっている」

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さっき立てた人差し指で彼女は宙をなぞるようにくるくる回し出す。 回すのと同時に、カプセルの色がピンクから青、黄色、緑と色が変わってゆく。

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「色が変わったことはわかるのに、色と色の明確な境界はわからない…グラデーションみたいな。そんな認識下での現実は夢と融合しているみたいなものじゃないですか。じゃあどれが偽りかなんていう絶対的な答えなんてない。それに、最初の色が最初からそうであったかもわからなくなってくる。」

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「そんな曖昧な認識下で生きている自分自身がどれを現実だと思うか、夢だと思うかは自由でしょう？じゃあ効率よく思い通りを描ける自分の世界を作り、そこを現実としちゃえばいい。夢は、僕の世界のすべてになる」

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「…問いは偽りの夢の中で幸せになることが本望か、でしたっけ？ええ、そうです。僕は僕がいちばん気持ちよく幸せになれる方法を作り、選び、そして享受します」

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「要するに、僕は僕が正解だと思うものだけを正解だと認識し、偽りだと思うものだけを偽りと受け取るということです。実質的・客観的に見て虚構であっても、僕がそれに価値を見出せるのであれば、僕の世界でそれは本物なんですよ」

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僕は、僕の理論を基盤にしているから。 そう告げる彼女の瞳は、僕が想っていたよりずっと深い色をしているように見えた。 「...答えてくれて、ありがとう」

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「いえいえ。全てが伝わってたかはわかんないですけど...それも僕にとってはどうだっていいことですので。」

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「...それじゃあ、そろそろお別れの時間にしませんか？」 にこ、っと再び笑顔が戻る。

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「僕は僕の夢の中にいるけど、君は君が現実だと思う現実世界へ帰る権利があるんですよ。...いや、その前に願い事か。何を願うんでしょうか」

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「その前に、もう少しだけ質問させて。現実世界に帰った時、...僕や皆は、どうなるの？」 「皆...というと、演劇部の人たちのことでしょうか。」 彼女は口元に指先を持ってきて、少し楽しそうなトーンで答えてみせた。

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「彼女達は全員、演劇部という団体すら存在していなかったことになります。」

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「...え？」 「誰にどう聞いても、彼女達のことを覚えている人はいません。一瞬のうちに、全部が無かったことになろます」