自衛隊員のパラシュート降下、救援物資のパラシュート投下は、能登半島では難しい。

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武若雅哉 @m_takewaka

空挺降下や物料投下云々について、「日本語」が読めるヒョロワー向けに実際に「できるのか」「できない」のか。「やるのか」「やらないのか」を書いてみる。なお、お客様がいらっしゃったら途中で途切れるので、その辺りはご了承を…。

2024-01-08 19:02:23
武若雅哉 @m_takewaka

大前提として、ワイは空挺経験者ではない。ヘリボンはちょっとやった。あとはホイストで吊られた経験があるくらい で、肝心な空挺降下だけど、やるには条件がある まずは気象条件。地上を流れる風と上空を流れる風は向きも強さも違うので、”ほぼ”操作できない落下傘には風向きと強さが重要になる

2024-01-08 19:05:05
武若雅哉 @m_takewaka

次いで降下地点。これが結構重要で、ぶっちゃけ降下地点が広大であれば風の条件なんてかなり無視できてしまう。もちろん地上風が強ければ降下した途端に落下傘諸共隊員が地上を滑走してしまうので、危険ではある。

2024-01-08 19:06:39
武若雅哉 @m_takewaka

その一方で、地上風に煽られても大丈夫なように、空挺隊員は訓練をしている。写真は巨大な送風機を使って本物の落下傘で引きずられ、立ち直る訓練 pic.twitter.com/EdDB3fMaht

2024-01-08 19:14:15
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武若雅哉 @m_takewaka

たとえば、毎年習志野演習場で行われる降下訓練始め。第1空挺団や支援部隊が一堂に会する最大のイベントで、最近はライブ配信もされるため、見たことがある人も多いと思う。あの会場でも毎年航空機の進入経路が異なる。なんなら、時間毎に異なる。

2024-01-08 22:36:24
武若雅哉 @m_takewaka

同じ場所で撮影していても、これだけ降下する場所が異なる。つまり、風は落下傘に多大な影響を与えるため、いかに風を読むかによって、空挺作戦の成否は決まる。で、なぜ第1空挺団はこれだけ風の影響を受けても狙った場所に降りられるのか。それは pic.twitter.com/grUI5hWYRR

2024-01-08 22:38:28
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武若雅哉 @m_takewaka

降下誘導小隊という日本で唯一の小隊がいるから。彼らが降下に必要な気象情報を収集し、地上に対空布板を設置し、無線や誘導鏡で航空機を誘導する。無線を持っている彼が有名な「コースよし、コースよし、よーい、よーい、よーい、降下、降下、降下」を言っている。 pic.twitter.com/lmulozmpT6

2024-01-08 22:47:00
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武若雅哉 @m_takewaka

こうして地上にある程度は計算された状態で降下する隊員たち。初めて飛ぶ時はドキドキしたけど、一度飛ぶと病みつきになるそうw とはいえ、降下誘導小隊とパイロット、そして降下長の指揮を信頼して、あとは飛び出すしかない空挺隊員。こう考えると、結構過酷なことをしている pic.twitter.com/Ru7Eym0cGy

2024-01-08 22:50:14
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武若雅哉 @m_takewaka

降下中に何を考えているのか聞いてみたところ、人それぞれの答えが返ってきた。一番印象に残っているのは「降りたくない場所は見ないようにしています。見るとそちらに行ってしまう。それが池や林だと最悪です。あとは岩の上に降りてしまうこと。あれは痛い」 pic.twitter.com/R5CYFDnCrG

2024-01-08 22:53:00
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武若雅哉 @m_takewaka

で、肝心な降下エリアの事なんだけど、習志野演習場の大きさ。かなり広く見えるけど、それでも、降下に必要な最低限の広さだと思う。実際、今年の降下は強風の中、こんな狭い場所に降りたことがないであろう他国軍は降下しなかった。空挺団はホームなので降りれたって事情があったと思う pic.twitter.com/8YxzX3YZXq

2024-01-08 22:56:19
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武若雅哉 @m_takewaka

確かに、何回も旋回すれば大人数を降ろすことができるけど、それは降ろすだけ。じゃあ、一度にたくさん降ろせばよいではないか。というが、それが出来るのは東富士くらい広くないと無理 pic.twitter.com/kIEQRhPvaA

2024-01-08 23:00:24
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武若雅哉 @m_takewaka

実際に降りる隊員は、主傘と予備傘、そして救援物資が入った背嚢を持って降下する。降りた直後は写真のようになっているので、次から次に降りて来ると、先に降りた隊員を潰してしまうかもしれない。それはとても危険なので、間隔を開けて降ろすしかない。 pic.twitter.com/FnfZyysVCK

2024-01-08 23:03:38
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武若雅哉 @m_takewaka

再掲するけど、この距離感を見て欲しい。一度に多く降ろすということは、これだけの距離が必要になる。風にも流されるので、十分に余裕ある幅が必要になる。山がちな能登半島にこんな開けた場所があれば、そこは宅地か工場などになっているはず。つまり、能登半島には空挺降下できる場所がない。 pic.twitter.com/CyDwSFfTIg

2024-01-08 23:06:20
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武若雅哉 @m_takewaka

じゃあ、救援物資を落とせばよいのではないか。というかもしれない。まずこれを見て欲しい。この梱包をするだけで数十分、車両の場合は数時間かかるという。これをコンテナ・デリバリー・システム(CDS)で投下するのだが、これは完全な自由降下。つまり、誰もコントロールできず、風に任せとなる pic.twitter.com/qMkfrW6lkl

2024-01-08 23:09:44
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武若雅哉 @m_takewaka

実際に落とすとこんな感じ。ある程度は計算して落とすけど風は自然現象なので人間の都合通りにはいかない。そこで気が付いて欲しいのは、習志野演習場で物料投下の訓練展示がないのはなぜなのかってこと。つまり、人間よりも重くコントロールが効かないため、演習場外に落ちたら大変なことになるのだ pic.twitter.com/3kiKS8QsOz

2024-01-08 23:13:00
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武若雅哉 @m_takewaka

これを能登半島で実行した場合、救援物資が入ったコンテナは家屋の屋根に穴を開け、電線を切断し、自動車を破壊する。仮に人間に当たれば「痛ーい!」では済まない。また、山がちな能登半島に物料投下の適地はない。田畑は多いけど、それは誰かの所有地。当然許可が必要だし、そもそも

2024-01-08 23:15:39
武若雅哉 @m_takewaka

田畑に重量物が落ちるということは、作物をダメにするし、埋まった物資を掘り出すのも大変。それを誰がやるのか?先に降下した空挺隊員がやればよい?だから、そもそも降りられる場所がないんだって。

2024-01-08 23:16:45
武若雅哉 @m_takewaka

山や森の中に物資をばら撒いても意味がない。回収できなかった物資は山中のゴミとなる。国家が率先して不法投棄してどうするのか。

2024-01-08 23:19:41
武若雅哉 @m_takewaka

なので、従来通りの輸送手段で運ぶのが一番。これが一番確実だし、全てが被災者の手に渡る。なので、道路の復旧に全力を尽くしているし、残り少ないルートを塞がないように、一般人は立ち入るべきではないということですね(撮影協力:陸上自衛隊、航空自衛隊、在日米軍)

2024-01-08 23:22:29
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