工房径ついのべ集 2011年1月〜3月
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1月のついのべの日お題「あんぱん」
#twnvday 桜あんぱんを見ると思い出す。あの遅い春、私たちは桜を求めて東北をさらに北上していた。ついに青森までついた時名残の桜を見ながら桜あんぱんを二人で食べた。塩漬は二人の恋の残滓の様で。あの時あの手を取っていたら私はどうしていただろうか・・・子供を迎えにいく時間だ。
2011-01-14 13:45:172月のついのべの日お題は「煮干し」。はじめのついのべはURL行方不明につき再投稿。
私が出汁を取る時、彼はよく後ろから泥棒猫宜しく煮干しを攫っていく。「郷愁ってヤツ?」母親がよくおやつに出していたとか。振り返って仰ぎ見ればえらの張った顎が動いて、白い歯ががりりと煮干を噛み潰す。彼の身体の中で、この顎の線が一番好きだ。密かに彼の母親に感謝した。 #twnvday
2011-12-21 21:49:44いらいらして出汁のために除いた煮干しの頭をがりがりと囓る。恋人が覗き込み「何してんの」「ん〜邪気を払ってる?」「お前に邪気なんてつくかよ」ははっ!彼が大口を開けて笑えば私の不機嫌なんてたちまち吹き飛ぶ。節分は過ぎたけど私には、豆より柊より片口鰯の頭より、あなた。 #twnvday
2011-02-14 07:55:48「カカオ豆ってコロンブスが持ち帰ったんだってね」蘊蓄好きな彼女が目を輝かす。今日はバレンタイン。手作りチョコは冷蔵庫に冷えていて、今は煮干の佃煮で夕食中。「コロンブスの船の下にもこんな鰯が泳いでいたのかなあ」君の好奇心は果てしない。俺も君と知の海原に船出する。#twnvday
2011-02-14 22:41:46「はい」いかにもコンビニで買ったチョコを差し出す彼女の手に幾つもの絆創膏。知ってるよ、君の妹情報で。ぎりぎりまで頑張ったけどうまくいかなかった君のチョコ。昔の歌にあるだろ、俺のために髪の毛一本変えないで。不器用で可愛い君。My Funny Valentine!#twnovel
2011-02-14 08:06:59彼を忘れる為砂漠に旅をした。当てもなく歩く果てのない世界。私の足跡は風紋を乱し、私の足跡も又風に消される。不毛な散歩の後街に帰れば、私の至る処からこぼれる砂、砂漠の忘れ形見。ため息と一緒に砂を払えば、目の前に、忘れようとした彼が立っていた。 #twnovel
2011-02-26 11:36:23忘れてしまいたい、濡れそぼったプラタナスの落葉の様に、貴方という石畳に張り付いた私の執着を。消し去ってしまいたい、ボールペンの芯を出したまま胸ポケットに入れようとしてシャツに走った黒い線の様に、うっかり口にしてしまった私の思いを。なのに今日も私は貴方と恋に堕ちる。#twnovel
2011-02-26 08:21:49ふと目を上げた瞬間、私を見下ろすあなたの視線に出会う。私の心はヴィブラフォン。あなたの仕草、指先の熱さ、低い声、唇の形。全てがマレットになって、私の鍵盤を緩やかに叩くから。瞬く間に即興の旋律が身体を走り、私は余韻に震えながら、そっとあなたの胸に身を寄せる。 #twnovel
2011-03-02 18:28:47草食系の彼。私が濃い珈琲を淹れていると「どしたん?」「今夜のサッカーの試合、生で見たいから」するとずいっと身体を寄せて「眠れなくしてやろうか?」どきっとして目を閉じると「幽霊が良く出ると噂の古い洋館が・・・」そっちかい!呆れて目を開けると、不意打ちでキスされた。#twnovel
2011-03-07 08:07:22「待って」螺旋階段の先を昇る貴方に手を伸ばすけれど、カンカンとそのまま足音は遠ざかる。何度も見た夢だ。今日もそれだと自分に言い聞かせ目を瞑ると、今度は近付く足音が。「無かったことにするなんて許さない」開眼すれば目の前に燃えるような瞳。これが、貴方との恋の現実。 #twnovel
2011-03-10 22:24:183月11日震災。電気は2日、水道は3日止まった。相方がホワイトデイに用意してくれたお菓子は本当に彼の部屋で物に埋まり、行方不明になった。でも何とか、探し出してくれた。
用意していたホワイトデイのプレゼント。地震でずれた家具の後ろに落ちて取れなくなった。そんな俺にあるのはこの身体と言葉だけ。ならば言おう、この手に君を抱きしめて。「愛してる」照れくさいけど何度でも。哀しみも絶望も愛で真っ白に塗り尽せ。それが俺の、ホワイトデイ。 #twnovel
2011-03-14 13:30:23ついのべの日3月のお題は「笑顔」。フォロワーさんの呟きでそれを知り、必死で作った。
笑顔が不謹慎だと言われても、俺は笑う。そんな場合じゃないよと言われても、余震の中でだって「好きだ!」と叫ぶ。いつか「こんなクサい事言ってたんだね」と笑い話になるように。 #twnvday
2011-03-14 15:20:11甘い蜜でさえ、誰かには甘すぎる。 どんな言葉も、言葉なら諸刃の刃。 俺は探す、ジャングルの奥に隠された秘宝の様に。 あり得ない、と思いながらも、 全ての人にとっての最良の言葉を。 誰にとっても、 布団のように温かく、 母親のように優しい、 愛の、言葉を。 #twpoem
2011-03-14 13:59:21ガソリン不足のため職場に足止めされていた恋人が4日ぶりに帰還。「帰ってきたぞ〜!!」喜び勇んで両手を広げた後、ちょっと迷って「やっぱ、後で。俺3日風呂入ってねえもん」「はあ?」ぐいっとよれよれのネクタイを引っ張ってキス。「私、すっごいあなた不足なんですけど!」 #twnovel
2011-03-16 13:54:43「らびゅ〜らびゅ〜」余震で起こされた真夜中、猫の声。春の、誰かを乞う声。思い出してあなたの手紙を開いて読み返す。Love You,Love You・・・心の中で何通も書いた届かない手紙の山がはらりと崩れ落ちる。帰ってきたら、ただ黙ってあなたを抱きしめよう。#twnovel
2011-03-17 06:44:48「弱虫でいいんだよ」私の髪を撫でながらあなたは微笑む。「神様がそう造ったんだ。決して独りでは生きていけないように」泣き腫らした瞼に落とされるキスは淹れてくれたココアより甘くて。それならずっとそばにいてよ?私はあなたの 、番(つがい)の鳥なんだよ。 #twnovel
2011-03-18 12:20:48もう一度ハートに火をつけて。発電機もガソリンも要らないぜ?エナジーは俺の中にある。4tトラックもセスナも無いけど、思いの丈をデリバリー。ズボンでこすった汚い手でも、笑って握手してくれよ?エナジーは君の中にある。Relight My Fire! #twnovel
2011-03-18 12:35:58淋しさで死ねる!そう言い切る貴方は筋金入りの甘えたさん。「そんなに命を粗末にすると罰が当たるよ」と笑ったが。メール・電話も無しでたったの3日、音を上げたのは私の方。「すみませ〜ん!私が悪うございました」ドアを叩く私を抱きしめて「遅いよバカ、死ぬかと思った!」 #twnovel
2011-03-18 19:17:51喧嘩のきっかけは他愛もないこと。「なあ、こっちむけよ。」ぷいと背中を向けると、彼は後ろから頬を擦って「自家発電」。思わず笑ってしまうと、くるりと正面に向きを変えられて「俺、まめに充電しないとすぐヘタるよ。ちなみに差し込み口はここです」と唇を突き出された。 #twnovel
2011-03-19 13:19:09「節約すんな」とあなたは言う。「この時期何言ってんの」「違うよ、ほら」くいくいと手を動かして「今日キスしてないだろ。利子つけるぞ」。だってさ色々やっとかないと。明日も停電かもしれないよ?「あほう」顔中にキスの嵐。「キスしてくんないと俺は今日中に停電する!」 #twnovel
2011-03-20 11:56:42何故温もりは貯めておけないの。水はお風呂にいっぱい。食べ物も十分あるけど。あなたの声も、笑顔も、陽に焼けた写真みたいに薄れてく。繰り返す愛の言葉も、沢山のキスも、穴の開いたバケツに入れたの?どんどんこぼれてくよ。ねえ、帰ってきて。私の背中のゼンマイを巻いてよ。 #twnovel
2011-03-20 12:15:40