工房径ついのべ集 2011年1月〜3月

今年のついのべをまとめました。1月14日ついのべの日「あんぱん」が私のついのべ処女作。今読むと本当にお恥ずかしいのですが、それもついのべの1頁だと、そこから始めてみます。震災ついのべは一時まとめておきながら、震災を振り返るのがつらいので、削除してしまいました。しかし今は、いろんな心情と戦いながら吐き出すようについのべを作っていたあの時期を忘れたくないと思います。1月から3月31日までのまとめです。計46作。
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「あなたと今宵、一番大きな月を見たかった」想い人が通うのを夜が白むまで待つ、いにしえの女性のように、そうメールで伝えればあなたは心を動かすだろうか。逢瀬はいつも一期一会、同じ私は二度といない。だから毎晩、確かめて。私はあなたに照らされる月。 #twnovel

2011-03-20 21:35:28
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

暖かい春の日差しの中、桜を求めて廃線になった線路を伝ってあなたと当てもなく歩く。桜の花びらが降る中で、ぬるい小川の水に足をつけてぼんやりしよう。バスケットには、ぴかぴかの林檎とサンドイッチ、ポットには熱い紅茶もたっぷりとある。草香る土手でお昼にしよう。 #twnovel

2011-03-21 10:14:45
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

飴玉をなめようと包み紙を開けたら、ぽろん、と落ちた。慌てて拾おうと屈むと、偶然ころりとエプロンのポケットに。拾い上げて埃を払い、ほっとして口に入れれば、舌に蕩ける甘さと香り。そんな風に今日も救われた、命。丸く膨らんだ片頬をあなたが愛しげに突っついた。 #twnovel

2011-03-21 16:30:40
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「このメールが届かなかったら連絡下さい」画面の前で首を捻る。さてどうしてやろうか。私は彼の家に行き、その惚けた顔を見ながら「メール届かなかったよ!」と言ってやった。彼は満足気に笑いながら「君ならわかってくれると思ってた」とキスひとつ。「会いたかったよ」 #twnovel

2011-03-22 13:47:02
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「うう、邪魔だよぉ」やっときた週末の夕餉の準備中、缶ビール片手にぺったりとくっついてくるあなた。「手伝ってるんだよ?」と言いながら、ただ接触面積を増やすだけ。酔ってるの?と聞けば、熱い頬を私の頬にくっつけて「君といられる幸せに」。ああ、酔っているのは私の方だ。 #twnovel

2011-03-23 04:19:46
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「こんな傷、舐めときゃ治る」あなたの口癖もこんな時は当てにならない。しっかり抱きしめて、ここにいると信じさせて。温かく息づくお互いの身を寄せて、傍にいて生きていると感じさせて。でなきゃ、愛し合っている意味がないよ。せっかく出会った奇跡が無駄になってしまうよ。 #twnovel

2011-03-23 07:52:36
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

いつもちょっかいを出してくる同僚の彼が、今日は何だか労りモード。珈琲片手に隣に陣取り「どうした、ん?」こんな時に優しくするのは止めてくれるかな。涙目で見上げたらにやっと笑って「効いた?弱ってる時につけ込んどこうかと思って」涙と一緒に私のハートもぽろりと、堕ちた。 #twnovel

2011-03-23 12:40:44
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

私は声に弱い。特にあの人の低い声。「8階、押して?」朝のエレベーター、いつも耳元で囁く彼にほとほと参っている。「お疲れ」珍しく帰りのエレベーターで二人きり、混んでもいないのに耳元で「今夜、飯、どう?」驚いて振り返ると、得意気に「君のことはリサーチ済みだよ」と。 #twnovel

2011-03-23 18:01:46
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

気になるあの娘。休憩室で小耳に挟んだ「私、低音に弱いんだ」に確信。以来エレベーターで偶然を装い、階数ボタンのランプ点灯も確認せず低めの声で「8階、押して?」ぴくっと震えて耳は真っ赤に。そしてついに時は来た、エレベーターに彼女と二人。最後のボタンは、俺が押す。 #twnovel

2011-03-23 22:34:33
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

昼食を頼まれて同期の男性とハンバーガー店へ。店内を見回しながら「もうすっかり通常モードだね」「そうだね」帰り道、公園の方へ引っ張られて「何?」「世間もそろそろ通常モードになったことですし」にやっと笑って、「世界が終わりになる前に、今夜君をお持ち帰りしても良い?」 #twnovel

2011-03-24 15:12:19
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

課長に突如任命された「省エネ係」。無駄な照明を消しコンセントを引き抜いて回る地味なお役目。皆が帰り、最後にフロアのスイッチに手を伸ばせば重なる指先。見上げれば意中の彼。「これで最後?」訊かれた声に頷けば彼がスイッチを消し、闇の中「今度は俺に火を点けて?」 #twnovel

2011-03-24 21:01:29
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

会社で彼とPCを見ながらプレゼンの予行中、大きな余震。彼は私の肩を押し机の下に押し込める。床に落ちるPC。悲鳴を上げる私の脇に屈み込み、しっかり腕に抱き寄せる。「バックアップ取ってるの?プレゼンどうするのよ!」私の叫びに「君のバックアップは、取れないからね」 #twnovel

2011-03-24 21:40:57
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

余震が続き、眠れない夜が続く。ため息をつけば、そこに片思い中のあなたの顔。「大丈夫?」の問いに「もう余震なのか眩暈なのかわからなくて」と涙目で零せば、そっと抱きしめられて胸の中。「えっ」「俺なんか君の事で一杯で」熱い吐息が近付く。「眩暈なのか恋なのかわからない」 #twnovel

2011-03-25 04:59:59
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「もう笑えねえ」俺は営業。連日の残業に得意先の無茶な注文。笑顔は武器の一つだがもう限界。ぼやく俺に「お昼は?」同期の娘が弁当箱をかざして見せる。「食事に行く暇なんか」「だからあげる」開いてみれば好物ばかり。思わず笑みを零せば「ほら笑えた」。おい、むしろ泣けるぜ。 #twnovel

2011-03-25 17:21:15
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

最近元気のない私の好きな営業君。同情してお弁当をあげたらなんだかやけに懐かれて。結局連日手渡すことに。週末偶然一緒になった帰り道、「今夜は俺がご馳走するよ」と熱い眼差し。「その前に君の好みを教えて」手を握られて「俺って、どう?」わかってる癖に。「大好物ですっ!」 #twnovel

2011-03-25 17:41:36
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「ただいま」出張から帰ってきた彼の笑顔が眩しくて見られない。「お土産だよ?」伝票入力に必死な振りをしてるのに、画面の前に顔を出し「冷たいなあ」。思い出さないように、ずっと我慢してたのに。涙に潤んだ瞳に「お前な」と舌打ち。「俺だって限界なんだぜ。ここでキスする?」 #twnovel

2011-03-25 20:39:28
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

社食でテレビを見ながら後輩君と昼食。「水の買い占めだって。また品不足になるじゃない。困ったねえ」すると彼が食器を片付けながら立ち上がり「僕、分からないでもないです」「え?」トレイを持って耳元に近付き「僕は先輩を買い占めたい」。うう、私、もう閉店してもいいですか。 #twnovel

2011-03-26 08:08:19
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

PCが壊れてデータが消失、さらに片恋中の同僚を寝取ったと噂され、泣き場所はいつもの会議室。ドアが開き現れたのは件の彼。「やっぱここか」「来ないで!又噂される!」「噂なんて構うか」後手で鍵を掛け「俺は君しか見てない。君は?」挑むような視線。「話せよ、君の言葉で」 #twnovel

2011-03-27 10:09:24
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

叫ぶなよ。お前の声なら、小声だって聞き逃さない。黙ってたって、お前の涙を辿って探すぜ?泣かせたヤツに容赦はなしだ。ウザがられても付き纏うまで。お前、弱音吐かねえし。俺、馬鹿だから分かんねえけど、愛してる、ってそういう事だろ。なあ、何か、間違ってるか? #twnovel

2011-03-27 16:40:42
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「寝てなよ」頭痛の私に代わって洗い物をしてくれたあなた。冷たくなった手を私の額にのせて。「気持ちいいでしょ」あなたの優しさに甘えるのに慣れるとどんどん駄目になりそうで。「明日は頑張るね」と言えば、あなたは微笑んで首を振る。「?」「それよりも今日、キスしてよ」 #twnovel

2011-03-27 20:30:48
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

余震をいち早く察知する同じ課の彼女。一方僕は鈍感だ。そんな僕にも優れた感知能力が。彼女にメールし非常階段の踊り場で待てば、聞き覚えのあるヒールの足音。「嫌なことがあったって、どうして分かるの?」出会い頭に抱きつく彼女にとびきりのキスを。「それは企業秘密です」 #twnovel

2011-03-28 23:04:22
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

懸命な君を見ていると俺も何とかしなきゃと思う。愛のパワーってすげえよな。俺は君を見つめるだけで充電出来る安易な男、ある意味エコだ。今日も充電していた俺と、振り返った君の目が合う。スパーク!思わず笑いかけたら耳元で「いつも元気くれてサンキュ」って、君も僕で充電中?#twnovel

2011-03-30 18:13:41
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

私は一匹狼。一人ランチに一人休憩、仕事もはかどるわ。でも最近よく目が合う彼、可愛い笑顔に心がふわり。「いつも元気くれてサンキュ」つい口走ったら驚きつつも喜色満面。「俺、君の役に立ってる?」赤い顔で頷けば「これぞ愛のリサイクル!」キスされちゃったらお釣りが来るよ。 #twnovel

2011-03-30 19:03:11
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

残業中に書類を指し示す彼の指を見て妄想するなんて重症だ。あの指と自分の指を絡ませたい。あの指が私の頬を滑って・・・ぱちん!目の前で彼の指が鳴る。「ねえ聞いてる?」苛立つ彼に身が縮む。「ごめんなさい」「もういい」涙目で見上げたら。「色っぽい目で見んな。俺が限界」 #twnovel

2011-03-31 05:59:47
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

すべて地震のせい。滞った仕事も、冷たい貴方も。発注をかけても一向に来ない品名をぐりぐりペンで塗りつぶせば「荒れてんな」と当人登場。「休めば」肩を揉む指と優しい言葉にほろり。「御免な?俺も精一杯で」そうだよ、皆そうなんだ。「キス、要る?」要らない筈、ないじゃん。 #twnovel

2011-03-31 18:53:26