新しい楽器:17.ドラムセット

単著『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』(ナカニシヤ、2023年)(https://www.nakanishiya.co.jp/book/b10044931.html)の宣伝を兼ねてはじめた「新しい楽器」という読み物です。
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nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

17.ドラムセット:今日は、色々な太鼓とシンバルを組み合わせたドラムセットという楽器について少し。

2024-01-18 14:31:57
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

「ドラムセット」なるものがあります。僕は中学生の頃からドラムセットを叩いてきたので、ドラムセットに愛着があります。 |ja.m.wikipedia.org/wiki/ドラムセット

2024-01-18 14:31:58
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

基本的には、大きなバスドラムを右足のペダルで叩き、左足のペダルでハイハットというシンバルを開け閉めして操作して、右足と左足の間に挟んだスネアドラムを叩きます(右利きの場合)。この三つの三点セットを上手く叩くことで基本的なリズムパターンは網羅できる、ということになっています。

2024-01-18 14:31:59
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

この場合の「基本」というのは、だいたい1950年代以降の英米圏のポピュラー音楽にとって基本的、という意味です。 バスドラムのドンという音とスネアドラムのバンという音でリズムパターンの骨格を作って、ハイハットのチキチキチキチキという音でパターンのバリエーションを作る音楽のことです。

2024-01-18 14:32:00
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ドラムセットは、バスドラムがふたつあったり、バスドラムの上に取り付けるタイコ(=タム)の数が違ったり、シンバルの数が違ったりするかもしれませんが、まあ、だいたい同じです。僕はスリンガーランドのスネアとKジル系のシンバルが好きです。|K Zildjian zildjian.jp/k-family/k-zil…

2024-01-18 14:32:01
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

2005年以降くらいからYouTubeがインフラ化したので、昔の音楽演奏の映像を探すのが簡単になりました。で、探してみると気付くのですが、だいたい似たようなドラムセットが使われています。昔のジャズとかでも、だいたいこういうドラムセットです。encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:A…

2024-01-18 14:32:01
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

細かな演奏方法のことを言えば、バスドラムを四つ打ちから解放したのはケニークラークらしいので、1920年代とか1930年代のビッグバンドのジャズドラマーはバスドラムをリズムキープのためだけに使っていたりしますが、まあ、それは今はともかく。|Kenny Clarke "Bebop" youtube.com/watch?v=I4c7Sm…

2024-01-18 14:32:02
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

それより昔のドラムセットを探すと、色々と変なドラムセットが残っています。たとえばこういうのです。バスドラム「だけ」に見えますね。music.si.edu/sites/default/…×tamp=1466519995

2024-01-18 14:32:03
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

他にもありますが、今上手くリンクを貼れません。history drum setというフレーズで画像検索してみてください。すると、やたらバスドラムが大きなドラムセットが見つかります。| google.com/search?sca_esv…

2024-01-18 14:32:04
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

で、これが何かというと、もともとドラムセットなるものはなく、19世紀半ばにスネアドラムに大太鼓を組み合わせることで、ドラムセットができた、ということらしいのです。

2024-01-18 14:32:05
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

最初は複数で担当していた打楽器をひとりで担当するために大太鼓も一緒に演奏するようになり、さらにハイハットが考案されたことが、「ドラムセット」の出現にとっては決定的に重要だったらしいです。

2024-01-18 14:32:06
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

一人で色々な楽器を担当するという点がケージのプリペアド・ピアノみたいですが、多分に大道芸的発想なんでしょうね。|背負い型ドラム完成? | One Man Band Party yui-george.com/2015/06/27/pos…

2024-01-18 14:32:06
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ともあれ、「らしい」としか言えないのが歯痒いところで、最初から今のようなドラムセットが出現したわけはなく、また、19世紀や20世紀初頭のドラムセットの写真からもその頃のドラムセットの規格は統一されていないプリコラージュ的なものであることは確からしいし、色々なウェブサイトでの(つづく)

2024-01-18 14:32:07
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ドラムセットの歴史の説明はどれもだいたい同じなので、その歴史の説明は確からしいと思うのですが、なんだかどれもどういう「典拠」に基づいて話しているか分からないのです。ウィキペディアの説明も「この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です」と書かれている。

2024-01-18 14:32:08
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

いちばん学術的に信頼できそうなのがこれだと思ったのですが、でも、この記述の典拠も、イマイチ分からない。 music.si.edu/story/birth-dr…. : Smithsonian Music, The Birth of the Drum Set

2024-01-18 14:32:09
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ということで、一般的に語られる「ドラムセットの歴史」について、その概要に不審は抱いていないけど確実な調査がなされているかどうかは不明だ、と中川は思っている、というお話でした。実際のところどうなんでしょう。僕のサーベイ不足ってだけなら良いのですが。

2024-01-18 14:32:09
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

このままでは、数年前に『ドラムセットの社会史』という面白い本が出たのですが、翻訳されたら『ドラムセットの歴史』って題名になってしまったりするかもしれない、という危機感を感じたりします。amazon.com/Kick-Social-Hi… Kick It: A Social History of the Drum Kit

2024-01-18 14:32:10
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

まあでも、それでも別に構わないという気もしますが。とりあえず、「新しい楽器」として言いたいことをまとめると、それはもうホント単純なことで、〈何かと何かを組み合わせれば新しくなる〉でしょうか。

2024-01-18 14:32:11
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ドラムセットは、小太鼓と大太鼓を組み合わせたものです。そんな組み合わせ楽器から、人間の下半身と上半身のねじれ感や結合感を操作して、バックビートを使ったり使わなかったりする色々と素敵なリズムパターンが叩き出されるようになった、というのは、結果論として大成功だった、といえるでしょう。

2024-01-18 14:32:12
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ギターとベースを組み合わせた楽器もありでしょうし、アルトサックスとテナーサックスを組み合わせても構わないでしょうん(し、ロザリンド・カークなど二本一緒に演奏する人はけっこういます)(し、ギターとベースを組み合わせた楽器もありそうですね)。

2024-01-18 14:32:13
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

弦楽器と気鳴楽器を組み合わせるのは大変そうですね。でも、なんでも組み合わせてみると良いかもしれない、というのが、今日の話のオチです。ということで、それではまた。

2024-01-18 14:32:13
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

最後に宣伝。『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』が出ました。音響彫刻など視覚美術のことだけではなく、実験音楽などアヴァンギャルドな音楽のことだけでもなく、包括的に「サウンド・アート」について整理した唯一の本だと思います。 nakanishiya.co.jp/book/b10044931…

2024-01-18 14:32:14
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

四つの領域におけるサウンド・アートの系譜を整理しました。それぞれ、音響彫刻小史、実験音楽としてのサウンド・アート小史、メディア・アートとしてのサウンド・アート小史、サウンド・インスタレーション小史として読めます。nakanishiya.co.jp/book/b10044931…

2024-01-18 14:32:15
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

オンライン書店での在庫はなかなか僅少っぽいです。著者としては、ぜひとも一度、書店に並んでいるのを見物してみたいです。美術館のミュージアムショップでも。『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』が広く、長く、読まれますように。nakanishiya.co.jp/book/b10044931…

2024-01-18 14:32:16
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ドラム・セットの話はしていません。でもクリスチャン・マークレーとオルデンバーグについては語っています。そして、次回、マークレーのDrumkitについて語ります。Drumkitというのは日本語で言うところの「ドラムセット」のことです。

2024-01-18 14:32:17