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工房径ついのべ集 2011年5月

一旦落ち着いたと思いながら、また震災のことを思い出したり、ややメランコリックなついのべが多い5月です。計30作。
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 俺の仕事はゆるキャラの中のヒト。悪くないよ?休日返上、熱くて臭くて蹴られても、子供の笑顔の為ならば。帰り道へとへとで歩く俺に車のクラクション。「ドライブいかが?」愛しい彼女がにっこり。「これからは大人の時間だよ?」昼間の疲れは何処へやら。さあ行こうぜ、ベイビィ!

2011-05-01 08:36:29
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel ぴあも休刊。イメージフォーラム、アテネフランセ、岩波ホール。マイナー映画を調べて二人でよく見に行ったよね。それが今やDVDで千円以下なんて、とぼやく君。ねえ、でも今はうちが映画館。これさえあれば、僕のフィルムはいつでもかたかた回るのさ。君とコークとポップコーン。

2011-05-01 20:47:58
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 今日に限って髪がはねる、マラソンで道路は渋滞。何とか辿り着いた彼女の家。車のミラーでネクタイを直し、震える指でドアベルを鳴らす。緊張気味の君に通され居間で家族とご対面。さあ言うぜ、ばしっと一言!「お嬢さんに僕を下さい」あれ?ご両親は爆笑の渦。俺の明日はどっちだ。

2011-05-02 08:27:11
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

静謐な美術館。絵の前に立ち君は言う。「ただの点の集まりが何故こんなに胸を打つの」と。ルノアールの緑、モネの青、シニャックの紫。色彩豊かな点描の海に導かれ、僕の想いも、絵筆の先から産み落とされた鮮やかな一つの点になる。君の点をも巻き込み、ふたり一枚の絵になろうか。#twnovel

2011-05-03 05:55:02
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

ねえ、君の猫になりたいよ。余計なこと言って君を傷つけなくて済む。触れたい時は擦り寄れば頭を撫でてくれるだろ?喧嘩して落ち込む僕に君は言う。「わかった、何も言わないで。撫でてあげるし、餌もやる。そのかわり……しないよ?キスもその先も」おい、それ、男の台詞だろ!  #twnovel

2011-05-03 16:38:45
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

俺は幼馴染みの彼女を昔から遊んだ稲荷様に呼び出した。彼女は言う「ねえ私、何かした?」。そうだよな、それが今までの俺たちのスタンス。「人気のない所に異性を呼び出すって相場が決まってんだろ」俺は高らかに咆えた。「告白だよ!」彼女は固まった、狐に摘まれた様な顔をして。 #twnovel

2011-05-04 05:21:01
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel タンポポは一つの花ではない。180もの花の集合体なのだと。それなら僕らの想いも集めればひとつの黄色い太陽になる。花は一度生涯を終えて横たわり、またたくさんのパラシュート部隊となって向かい風にすっくと立ち上がる。僕らの愛の根は深い。幾度でも種は飛ばせる、幾度でも。

2011-05-04 09:02:16
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「いい加減にしてほしいよ」忘れた頃に記憶を引き戻す余震に辟易として恋人に愚痴った。しかし彼は「なるほど」と何か感じ入っている様子。「タイミング良く繰り返すんだな」「何の話?」きょとんとする私に彼はふふんと笑い、とびきり甘いキスをする。「愛してるぜ。忘れんなよ?」

2011-05-05 07:38:13
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel あの日、携帯やメールがろくに通じなかった時、僕らにはツイッターがあった。君の叫びも僕の惑いも、青い小鳥が嘴に咥えて届けてくれた。電気も点かず余震に震える長い夜、乾電池で充電した携帯を握りしめて、確かに僕らは繋がっていたんだ、君と僕も、そして被災地と世界も。

2011-05-06 17:57:33
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel あの日、綯い交ぜのソフトクリームになって目の前に差し出されていた喜びや安らぎは、躓いてべしゃっと地面に落ちた。どろどろに溶けた溜まりを靴の爪先でいじる日々。でももう、終わりにしよう。掃除して新しいクリームを絞ってもらうんだ。特別甘い、大きな大きな渦巻きにして。

2011-05-08 04:07:37
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

帰省したGW。5月の風に唆され、俺は自転車を走らせる。高校時代から慣れ親しんだ道。あの角を曲がれば当時付き合ってた彼女の家だ。「あれ」庭で水まきしてた彼女が、昔と同じ柔らかな表情で俺を見る。5月の風が唆す。「今……恋人いる?」直球の質問に彼女は笑って首を振った。 #twnovel

2011-05-09 05:49:30
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「酔いどれ詩人になりたい」ほぼ下戸の彼の言葉に私は笑う。失望に泣く今日の彼はブコウスキー。破滅するまで飲むと言い、安ウヰスキーをやっと一杯。「俺が死んだら泣いてくれるか」馬鹿ね、何のためにここにいると思ってる?ひとりにしないよ。それが愛してるってことだから。

2011-05-09 21:51:49
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

眠ってなんかないよ。窓ガラスに耳をつけて雨の音を聴いてるんだ。ジャズ喫茶でジャズ聴かないのってマスターはいうけど、雨越しに聴くジャズもオツなもの。車、自転車、ハイヒール。雨を蹴散らし去っていく。でもひとつ、やってくる足音が。「お待たせ」そう、君を待ってたんだ。#twnovel

2011-05-11 13:39:02
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 崩れた白壁に雨が降る。家々の庭には山吹が溢れんばかり。青蛙は水を張ったばかりの田に飛び込む。ブルーシートの屋根に雨が降る。子供達はバスの曇ったガラスに落書きをし、恋人達は傘の中でキスをする。雨は時に優しく、時に厳しく、欲しい時には無い。慰めや励ましの言葉に似て。

2011-05-11 18:11:27

5月14日ついのべの日 お題「 」

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday #twnovel 俺だって被災者面なんかしたくない。大した被害も無い癖に、いつまでもぐだぐだと管巻いて。家族は無事だし、家も住める。仕事だって順調だ。でも何なんだ、俺の心に吹く風は。震災ついのべなんて書きたくない。「   」お願いだ、ブランクを置かせてくれよ。

2011-05-13 17:53:21
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「俺が好きだろ?」「いえ、全然」何度となく繰り返された攻防戦。でも最近君のガードはすこぶる緩い。「   」白紙に見える君だけど、甘い果汁が滴っている。つけ入る隙は逃がすもんか。俺の視線で、君の気持ちを炙り出す。L,O,V……ほら、もう見えるぜ? #twnvday #twnovel

2011-05-14 06:01:46
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday #twnovel 「昔住んでた家が見たい」と彼が言った。車窓からは溢れる新緑と初夏の風。着いた所は麦畑広がる片田舎。庭には大きな欅の木があったという。   欅の切り株の側に「売地」の文字。彼は跡地に生えるナズナを摘んで私に差し出した。「君と来てよかった」

2011-05-14 08:11:13

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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

遠慮、しないで。男だって甘えていいんだよ。と君は言う。忙しくても、目が合ったらハグしよ? 先に寝てる方のベッドに潜り込んでもいい。濃い珈琲を淹れるから、お湯を沸かしてる間だけでも、キス、しようよ。それは有り難い申し出だけど、君、さっきからお湯が沸きっぱなしだぜ? #twnovel

2011-05-18 02:59:59
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 小学生の頃、僕の愛読書は「世界の七不思議」だった。エルドラド、ナスカの地上絵、イースター島のモアイ。通勤電車に揺られながら、懐かしく思い出していると「おはよう」と意中の彼女が肩を叩く。微笑む君の真意が知りたい。今僕は、君という七不思議の謎を解いているところ。

2011-05-19 05:50:16
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

高校から10年、同じ課の配属に運命を感じる俺に、腐れ縁と君は言う。資料を借りに来た君の部屋で本棚を物色。「お、リルケの詩集! お前これ好きだったな」君は淹れていた珈琲を零し「熱っ!」。駆け寄った拍子に詩集は落ち、中から一枚の写真がひらり……制服姿の俺、だった。 #twnovel

2011-05-21 08:18:16
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「じゃ〜ん、初サンダルで〜す」君は戯けて白いサンダルの爪先を立ててポーズする。白いスカートがヨットの帆の様に初夏の風に広がって。ああ、どこかへ行きたいなあ。いつだって唆すのは君。あの岬までドライブしようか。頷く代わりに君が腕を絡ませて、ひんやり素肌がくっついた。

2011-05-21 19:05:01
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 週末の長電話。延々と次の話題を探して、もう夜が明ける。「でさ、今日のデートなんだけど」そう言われて気がついた。「待ち合わせまでもう6時間もないね」「映画、寝ちゃうな」ごめん、でもあなたがいけないんだよ? 電話越しの声はいつもより少し低くて、とびきり甘く響くから。

2011-05-22 06:10:37
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel いつも気になる彼だけど、今日は不審な動きが気になる。用もないのに、後ろをうろうろしたりして。ようやく昼休み。財布を持って立ち上がると「ちょっといいかな」空き会議室に押し込まれた。「今日は何の日だ?」いきなりクイズ?はて?「知らな……!」「正解はキスの日でした!」

2011-05-23 07:53:35