ナイト・オブ・ヘクセンナハト 全セクション版

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは小さく赤いビーズめいた無数の目を持っていた。その中心にはニンジャがいた。カームは森の仲間たちとともに、ヘクセンナハト村への一斉突撃を開始したのだ。暴徒と化した村人たちの松明が、闇の中、邪悪なニンジャたちの姿をあかあかと照らし出す。カームはそれに狙いを定める。　6

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「ドーモ、カームです」彼は一直線に大鹿を駆けさせ、その背に跨ったままアイサツした。彼の声は夜の風に乗り、何倍にもなって響き渡った。「ドーモ、ダガースロウです」「カルナヴァルです」ウィッチファインダーの奴隷ニンジャ２人が反射的にアイサツを返し、カームを迎え撃たんとカラテを構えた。 7

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「イヤーッ！」カームを乗せた大鹿がカラテを漲らせ、村の電磁柵を飛び越えた！「「「GRRRRRRRR！」」」怒り狂う動物の群れが、それに続いた！ネズミ、イタチ、マーモット、タヌキ、リス、ウサギ、キツネ、そして大熊！黒い獣たちの大波である。森のフーリンカザンは、カームの側にあった！　8

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「イヤーッ！」ダガースロウは投げナイフを連続投擲！カームは大鹿の背を蹴って、高く跳躍！投げナイフを回避しながら、急降下トビゲリを繰り出した！ダガースロウはこれを両腕でカラテブロック！その直後、頭を低く下げて突撃してきた大鹿が、ダガースロウを角で高く跳ね上げた！「グワーッ！？」　9

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地面に叩きつけられたダガースロウへと動物たちが群がるのを背に、カームは色付きの風となって駆け、カルナヴァルに挑みかかっていた。「イヤーッ！」女ニンジャはカームに対してスリケンを牽制投擲した後、燃え盛る鎖を振り回した！　10

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「イヤーッ！」カームはスリケンをかわし、鎖を見事なカラテチョップで叩き落とす！さらに村の道標を蹴って跳び、キリモミ・トライアングル・リープからのボレーキックを繰り出した！「イヤーッ！」カルナヴァルがこの致命的な蹴りを紙一重で回避すると、直後、至近距離のカラテ攻防が始まった！　11

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「何故だ！何故こんな所に本物のニンジャがいる！？」ウィッチファインダーはサイバー馬に飛び乗った。助けを求めて群がってくる村人を蹴り飛ばし、書物で殴りつけ、撃ち殺し、一目散に逃げようとする。そこへ大鹿の突進！「グワーッ！？」横から衝突され落馬すると、彼もやむなく戦う覚悟を決めた！12

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ウィッチファインダーは大鹿の再突撃を飛び退いてかわす！「ダガースロウ＝サン！ 加勢せよ！」だがダガースロウは獣の津波に飲み込まれ、もはや片腕しか見えぬ状態！これを掘り出そうと接近したウィッチファインダーは、血に飢えた熊に襲い掛かられ、たまらずカルナヴァルの側に向かった！　　13

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一方、フェリシアは村人たちに捕まり、殴られ、服を破かれ、髪を掴まれて拘束されていた。それを見て怒り狂った小動物たちが、ダガースロウのもとから分かれて早瀬のように近づき、村人たちのくるぶしに襲い掛かり、噛みつき、駆け上がる。獣の爪で目を掻きむしられ、村人たちは悲鳴を上げた。　14

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村人たちが小動物に群がられ混乱している隙に、フェリシアは彼らから散弾銃を奪い取り、髪を掴んでいる男を銃底で力任せに殴りつけた！「イヤーッ！」「グワーッ！？」拘束を逃れるフェリシア！「「「GRRRR！」」」彼女の足元では、森で出会った小動物たちがカラテをみなぎらせて群がっている！　15

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「魔女だ！」「魔女のニンジャだ！」「魔女を焼き払え！」暴徒たちはフェリシアを指差して叫び、松明を次々投げつけた。足元の小動物たちが松明に焼かれ、苦しげにのたうち回った。「アイエエエエエ！」フェリシアも服を炎に焼かれ、悲鳴を上げた。アブナイ！さらなる松明が投げ込まれる！ 　16

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その時、「イヤーッ！」カームが離れたフェリシアに向けて手をかざした。魔除けのスリケンが再び小妖精めいて飛び回り、投げ込まれてくる松明を次々に弾き落とした。自由になったフェリシアは散弾銃をコッキングすると、引き金を引き、襲いくる暴徒を次々黙らせた。動物たちも彼女と共に戦った。　17

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恐ろしい夜。真のニンジャの夜が訪れたのだ。カラテシャウトと銃声、そして動物たちの唸り声が、ヘクセンナハトの村に響きわたった。ヤギを連れた敬虔なるデトレフや村長、そして良識ある者らは、各々の家や村長の館へと避難していた。そこで何もできず、ただニンジャの恐怖に震えていた。　18

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血みどろの戦いは何十分も、あるいは何時間も続いたように思われた。やがてウシミツ・アワーが終わる頃。ひときわ大きなカラテシャウトと散弾銃の音が鳴り響いた。　19

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◆◆◆

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……そして、完全なる静寂が訪れた。閉じ籠っていた村人たちは、恐る恐る目を開けた。窓やドアの隙間から、外の様子をうかがった。　20

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返り血を浴びたカーム、フェリシア、そして大小様々の動物たちを、割れた月から注ぐ光が優しく包み込んでいた。　21

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全ては終わり、とても清々しく、穏やかだった。あれほど殺気立ち、赤く目を輝かせていた動物たちも、今は本来の穏やかな姿に戻っていた。磔台はからっぽで、丘にはニンジャの爆発四散痕。その周りには、煽動されて暴徒と化した村人たちの死体。あとは焼け焦げた嘘偽りの教義書が一冊。　22

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ヴェールのように柔らかな月の光の下、カームはフェリシアの前に片膝をつき、深々とオジギをした。そして、彼女の手の甲に口づけをした。フェリシアは頷き、それに応えた。　23

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森の動物たちが、カームとフェリシアを囲んだ。それからニンジャとフェリシアと動物たちは、皆でおごそかな列をなし、静かなパレードめいて、村をゆっくりと三周した。それが終わると、彼らは金色に揺れる薄野の道を通って、まっすぐヘクセンナハトの森へと向かっていった。　24

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ニンジャの横で、フェリシアは時折ル、ル、ルと嬉しげに歌い、ステップを踏んで踊った。パレードの先頭を歩む大熊が、後ろ足で立ち上がり、ぎこちなく演舞するように腕を振り上げると、リスたちがその肩の上を駆けた。朧げな光を放つカームのスリケンが、小妖精めいて周囲を飛び回っていた。　25

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幼いエマは寝台を出て、母親を探していた。母親は家の戸口に立ち、その恐ろしい光景に見入っていた。「あの娘は、森にお嫁に行くのだわ。森の……ニンジャのところへ……」母親は声を震わせていた。それを聞いたエマは、ずっと昔に、村の老婆が言っていた事を思い出した。森にはニンジャがいる、と。26

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母親はエマに気づくと、子供の目をてのひらで覆い隠した。それでもエマは、母親の指とドアの隙間から、こっそりと外を見ていた。月の光を浴びたフェリシアたちを見て、エマは小さな声で「カワイイ」と言った。寝る前に読む、御伽噺の本のように。夢のような光景だった。　27

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森のひさしに入る前、フェリシアとニンジャは立ち止まり、村の方を向いて奥ゆかしくオジギした。そして動物たちと森の中に消えていった。それきり、彼女が帰ることはなかった。またヘクセンナハトの村では、それからもう二度と、恐ろしい魔女狩りやニンジャ狩りが行われることはなかったという。　28

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【ナイト・オブ・ヘクセンナハト】終わり