- rouillewrite
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「……ほんとう?ぼくが、どれだけ悪い人、でも…?」 「ええ。少なくともアタシは許しますよ。…アタシじゃ心許ないかもしれませんが…」
2024-02-18 21:28:42そう返すキャロラインの手は温かい。 次第にゆっくりと伝わる温度と、許すという言葉に胸の奥にあった不安の塊が少しずつ和らいで行くような気がした。少なくとも、手の震えは止まっている。 それに気がつくと、アルフレッドは首を小さく横に振りぎゅっと彼女を抱きしめた。
2024-02-18 21:29:15抱きしめ返され、少し驚きはしたもののキャロラインはそのまま彼の頭を抱きしめ、撫で続けた。 せめて、この後眠る間だけでも不安に苛まれないように。
2024-02-18 21:31:06「…いやな事とか不安な事があった時、アタシが居た孤児院のシスターがよくこうしてくれていたんですよ」 「素敵な方、ですね。…僕も、母を思い出しました。泣いている僕を、よくこうして安心させてくれた」 「へぇ…。泣いているアル…はなんだか想像できないですね」
2024-02-18 21:32:13そう言って、キャロラインは苦笑いを零した。ここにいる探偵たちは冷静な人が多いけれども、初めは彼もそんな印象だったから。
2024-02-18 21:32:57「そう…?……ああ、でも小さい頃の話だし…大人になったら泣くことも無くなったし…無理もないの、かも」 「そうですよね。当たり前ですがアルにも小さい時ってあったんですよね」
2024-02-18 21:34:08落ち着いたのか、彼も普段のような様子でふふ、と小さく微笑んだ。 その様子に安堵し、キャロラインも口角を少しだけあげると、彼の頭を離してそっと離れる。 と同時に、ゆったりと手を差し出した。
2024-02-18 21:35:41「…落ち着いたみたいですし、こうして話していたらアタシも安心してきました。さ、部屋に帰ってもう寝てしまいましょうか」 「うん、そうしましょう。 本当にありがとう、ね」
2024-02-18 21:36:23差し出された小さな手を取って、アルフレッドは歩幅を合わせながら部屋の方へと歩みを進める。 …静かな波の音が、2人の背を押すように揺れていた。
2024-02-18 21:39:18一夜明け、少し落ち着いた様子を見せていたオースティンとエリクサー。 エリクサーの方は、やはりあまり食欲がないのか、彼に見守られながらスープを少しずつ飲んでいた。かく言う彼も、さほどきちんとした食事を取っていたわけではない。
2024-02-18 21:41:32一昨日までのような明るさ、とまではいかない雰囲気に反して、外の天候は快晴。 風も穏やかな雲ひとつない空だ。
2024-02-18 21:43:19何人かは集まって、とある場所に来ていた。ここ一週間はあまり立ち入ることはなかったが、3階に図書室が3つある。
2024-02-18 21:45:06当然陸にある図書館よりは小さいものだが、それでも絵本から小説から伝記、果ては過去の新聞記事から雑誌まで幅広く取り揃えてあった。 スタッフから聞くと、すべてスカーレット社の持ち物だという。絵本が多いのは、子供好きだった前社長が施設に寄付するために集めたからということらしい。
2024-02-18 21:46:03ここにきたのはオースティン、アイディオ、祥太朗、ダンデ。 それから彼らの相棒であるエリクサーやクラリッサ、レイアとクロエの合計8人だ。 ほかの者たちはそれぞれゲームルームに行ったり、気分が落ち込んだままで部屋の中で過ごしたりしている。
2024-02-18 21:48:41図書室についてすぐ、レイアはクロエの手を引いて小説のあるの棚へと走り出した。 オースティンとアイディオはどうやら探し物があるらしいので、祥太朗とダンデが少女たちを見ることになった。 …一方は快諾してくれたが、一方は少し面倒そうな顔をしている。
2024-02-18 21:50:22嬉しそうにクロエの手を引いて誘うレイアに、彼女は微笑んだ。 そのまま遠目で2人を眺めていた祥太朗に絵本を渡し読み聞かせてしてもらうことにすると、本棚が並んでいるその前に3人で腰を下ろした。
2024-02-18 21:55:14