【創作企画】12月8日 惨烈の花【贖いの方舟】

【創作企画】贖いの方舟 @Redemption_Ark

🧭第4話🧭 pic.twitter.com/J7wgTCRY2a

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【創作企画】贖いの方舟 @Redemption_Ark

12月6日 19時20分。

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最初の裁判を終えて、部屋に帰ろうとアルフレッドは相棒の少女に声をかける。 自分より何倍も小さな手を、長い袖の下から引いて、赤い絨毯の上を踏みながら廊下を歩いていた。

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先程帰ろうと声をかけた際には、微笑んで手を取ってくれた彼女だったが、今は口を開くことも視線を合わせることもない。 あんなことがあったあとなのだ。当たり前ではある。

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「…………」 「………………」

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しばらくの間、自分たちの微かな足音が廊下に響いた。ほかの探偵や少女たちも、もう部屋に帰ってしまったので、随分とスローペースで歩いていることになる。 手を引かれているキャロラインは、なんと声をかけようか迷った末に、ようやく口を開いた。

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「…あ、あの…。大丈夫…ですか？体調…とか」 「……あんまり、元気ではないです。…皆の前でバラされるだなんて思わなかった。しかも、あんなに詳しく」

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アルフレッドも同様に黙って足を進めていたが、キャロラインの声に弱々しくそう返した。やはり視線を合わせることはなく、怯えたような、不安げな声音だ。

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「…そうですね…。アタシも驚きました…」

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その様子に、キャロラインも俯きがちになり床を見つめる。とぼとぼと歩いている自分の足元が見えて、己の感情を如実に表していた。

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あんなに人がいる中で、堂々と自分の過去を晒される。して来たことを、犯した過ちを、この船に招待された自分以外の19人が、それと己の命を天秤にかけジャッジする。 法で裁かれないからこその、重たい痛みなのだろうか。 それとも、その場に立つこともないような小さな痛みなのだろうか。

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「…あの、アル…。…もしアタシの罪を許せないと思ったら、その時は心のまま投票してください…。 アタシは、受け入れる…と思うので…」

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ぎゅっと彼の手を握りしめる手が震える。正しいことをした訳では無いと思っている。だからこそ、今回の2人の立場に自分がなることを想像してしまった。 ……アルフレッドからの返事は、ない。

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「…怖く、ないんですか。キャリーは」

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代わりに返ってきたのは、静かな問い掛けだった。少し震えるようなそれに、キャロラインは小さく返す。

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「…怖くないと言えば…嘘になります…。 でも、…アタシはそれくらいのことをしてしまいましたから…受け入れるしかないんです…」 「そっ、か……」 pic.twitter.com/AF2T2JX74b

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そこでようやく、アルフレッドはキャロラインを見つめた。背の高い自分からは、彼女の頭の上しか見えず、表情は窺いしれない。 それでも受け入れようとしている少女の姿に、自分が情けなくなって。

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「…やっぱりキャリーはすごい、です。僕は…あなたみたいに思えない」 …震える自分の声が、随分と耳元で聞こえた。

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「こ、怖いし、イヤだよ。全部……っ」

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大きく声を震わせ、握りしめた手に思わず力が入る。その大きな声を聞いてキャロラインは一瞬驚き、彼の方を見上げた。

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「…アルフレッド…」 不安げな瞳が、大きく揺れていた。その様子を少し黙って見上げていたが、キャロラインはふと両手を広げしっかりと彼を見つめる。

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「…アル、少ししゃがんでください」 「……？」

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首を傾げながらも、キャロラインの言葉通りにゆっくりとしゃがむアルフレッド。 彼の頭が自分の目線の高さまで来たことを確認した後……彼女はぎゅうっと彼の頭を抱きしめた。そして、空いた手で優しくその頭を撫でる。

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「ぇ、あ……」

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そのキャロラインの行動に、アルフレッドは驚き、思わず声を漏らした。 しかしすぐに、その温かさからぽろぽろと弱音がこぼれる。