上岡敏之のシューベルト「グレイト」&ケフェレックのベートーヴェン
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スタンディングオベーションのカーテンコール #上岡敏之 #toshiyukikamioka pic.twitter.com/CY2eRhLtg4
2024-02-24 09:12:25①2024年2月23日、コペンハーゲンの音楽院ホール (Konservatoriets Koncertsal) で、首席指揮者・上岡敏之のフェアウェル・コンサート(AFSKEDSKONCERT)が行われた。2016/2017シーズンから、新日本フィルハーモニー交響楽団での音楽監督と兼務した形で就任しており、 pic.twitter.com/jd7zspkvIn
2024-02-24 14:32:27②約7年間引き受けていた大役を終えるコンサートだ。就任する直前、「いいオーケストラがデンマークにある」と興奮気味に語っていたことが思い出される。
2024-02-24 14:33:31③このウェアウェル・コンサートは、コペンハーゲン・フィルの退任に伴うものであるが、自身が語るように、ザールラント州の音楽大学の職を除いて、全ての指揮者としての正規の職を辞するフェアウェル・コンサートでもあり、その意味で格別である。
2024-02-24 14:34:09④本人は、客演は別として、その地位には今後就かないとも言っていたが、彼の言うことであることだから当てにはならない。室内楽やソロピアノの活動に専念するとも言っていた。 コペンハーゲンの音楽院ホール、内部は全て木材、座席は革張りの落ち着いた、温かみのあるホールである。
2024-02-24 14:35:42⑤この日のために上岡が選んだのは、自ら弾き振りをするモーツァルトのピアノ協奏曲17番とツェムリンスキーの「人魚姫」。モーツァルトの17番は、彼がモーツァルトのピアノ協奏曲の中で一番好きだと行っていた曲。
2024-02-24 14:36:08⑥「人魚姫」は、彼がこれまでも折りに触れ取り上げてきた十八番といっても良い得意な曲で、人魚姫の国デンマークにふさわしい。この二つを選んだのは本当によくわかる。この演奏会、完売が告げらたれていたが、本当に満席である。
2024-02-24 14:36:57⑦最初の曲はモーツァルトの17番。拍手と共に迎えられた上岡、ここで思わぬハプニングが。ピアノの椅子に座るも、座面が上がらない。何度も、座りながら高くしようと持ち上げるも上がらず、まるでMr.ビーンのようなその様に会場が笑いで包まれた。上岡と客席の一体感が生まれた。
2024-02-24 14:37:38⑧彼の弾き振りは独特だ。ピアノの前に座り、少し腰を浮かせるというのではなく、始まりは、指揮台はないものの指揮者の位置に。途中、ピアノの向こうまで回り込んで指揮をするなど、指揮者とピアニストがまるでそれぞれいるような錯覚を覚える。
2024-02-24 14:37:52⑨途中、指揮に専念しすぎて、慌ててピアノの位置に戻る場面もあるなど、自身のフェアウェル・コンサートに対する照れもあったのかもしれない、やや落ち着かない様にその都度会場がざわついた。曲は、オーケストラの骨格がしっかりしていたのに対して、ピアノは常に繊細にやさしく入ってくる。
2024-02-24 14:38:19➓このコントラストがたまらない。ピアニストとしての上岡は、オーケストラの各楽器のとの対話を楽しむかのように弾き合って、そして溶け込んでいく。こうした対話のような演奏は実に見事だ。ちょっと指が回らないところもあったが、それは愛嬌だ。今日は、上岡のフェアウェル・コンサート。
2024-02-24 14:38:56(11)第三楽章の終盤、ピアノとオーケストラの対話は最高潮に達し、指揮者の位置で曲を終えた。柔らかな拍手からスタンディングオベーション。ところで、この曲の後アンコールが披露されている。曲は、モーツァルトのコンチェルト23番の二楽章である。
2024-02-24 14:39:25(12)短調楽章のこの曲で上岡は、17番とうって変わってピアノに没頭し、別れを惜しむような心情が吐露されている。客席は、涙を浮かべ彼との別れを惜しんでいた。
2024-02-24 14:39:57(13)後半は、ツェムリンスキーの「人魚姫」である。ここコペンハーゲンには、世界三大がっかりの一つと言われる人魚姫の像があるが、上岡の人魚姫は決してがっかりさせない。その物語性、骨格の太さ、随所に見られるしなやかさ、ロマンティシズムあふれるこの曲は彼が愛して止まなかった曲だと思う。
2024-02-24 14:40:23(14)映画人でもあった彼の父の影響があるのかもしれない。もっとも、人魚姫とはいえ、作曲家がオーストリア人のせいであろうか、この曲を知らない客も多いようで、二楽章の終音、弱拍から、突然脅迫になる場面では、客席は驚きを隠さず、拍手までなされた。
2024-02-24 14:40:48(15)クラシック音楽はこう聞かなければならないという堅苦しさはなく実に自然だ。フェアウェル・コンサート終演。ここコペンハーゲンで彼は本当に愛されていたんだなと思う。演奏が終わると、客は総立ちで、割れんばかりに拍手、花束の贈呈などもあり、公演は終了した。
2024-02-24 14:41:14(16)楽屋を訪問しようかなとも思ったが、他にも今日で最後となる人もいるので、楽団としては特別の日でもあり、終演後いろいろなことが予定されており時間をとらせてもらえないかもしれないと聞いていたこともあり、この感動をそのまま持ち帰ることとした。(終)
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