#twnovel 7

ついった小説ななこめ
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@prefab000

#twnovel 「なんで変色しないんだろう」私は苛立っていた。いつもなら手帳を一枚ちぎれば青や赤に変わる。日記代わりだったのだけれど。「仕方ない」伸びた前髪を切るため鏡へ向かう。鋏を縦に入れていく。落ちる髪はピンク色だった。「さすがに毎日は切れないな」私は自分の黒い髪を撫でた。

2011-12-28 21:15:32
@prefab000

#twnovel 周りが美味しいというので合わせて食べる。けれども、フォークが止まってしまう。無理に押し込めて後で吐いてしまうか。身体に合わないのだと白状して差し支えない場なのか。「乾杯!」私は窓にたどりつく。「もっと見付けやすい場所に設計してほしかったなあ」外はとても暗かった。

2011-12-28 20:44:58
@prefab000

#twnovel もう随分前から空間が歪んでしまって元通りにならない。例えば景色はざっくり切り取られて襖みたいに横にずれているし、口に持っていったはずの料理は全然違う場所に落ちる。ただ、料理をするときはスリッパをはくと足元が割と安定する。今年はもこもこのやつを選んだ。あたたかい。

2011-12-24 04:17:44
@prefab000

#twnovel 彼女は美しいと言われるのを嫌っていた。実際、彼女の容姿は美しかったが、今日は見るのも痛々しい。「海に浸すと沁みる」足元に虫がいた。しゃがみ込んで眺める。「気持ち悪い色」「自分もそう言われたいの?」彼女は驚いたように僕を見る。その後は顔を伏せて黙り込んでしまった。

2011-12-22 14:26:25
@prefab000

#twnovel 私は文字が読めない。だから届いたメールは彼に読んでもらう。「久しくメールを寄越さないけれども元気か、といった内容が書かれてたよ」「ありがとう」私は文字が読めない。代わりに不思議な能力がある。私にメールをくれた友人はいない。彼の優しさが脳にひどい音楽を響かせる。

2011-12-21 21:24:51
@prefab000

#twnovel 目の前のおうちが崩れそう。雨がどんどんひどくなってついにぺしゃんこになった。おうちは私の何十倍も大きかったし、けがをしたらお母さんが悲しむと思ったから何もせず見てた。「古くなったら壊れるのは当然なんだよ」私の眼と脳みそが張り付いて、私をその場から動けなくさせた。

2011-12-21 11:39:49
@prefab000

#twnovel まっ黒になった手帳を開く。重要であろう黒をいくつか発見できる。それについては目立つよう、赤い線を引く。街を歩くと光が多い。だからいつだって輪郭をはっきりさせておく必要がある。散らばった紙片を片付ける。ここまでを終わらせ、私はようやく食事をとろうと思えるのだった。

2011-12-21 11:13:32
@prefab000

#twnovel 夢を持てというから、好きに描けというから、そうした。明日は早く起きて、花に水をやろうと思う。何度やっても、枯れてしまう。「そうじゃない。貸して」じょうろを奪われた。毎日、奪われた。彼女は、うまく花を咲かせることに成功した。私は、じょうろの水を大切に持って帰った。

2011-12-18 03:32:08
@prefab000

#twnovel バルコニーの手すりに座る。裸足の向こうの景色が素晴らしい。「歩けそうな気がするんですけど!」すると軽く背中を押された。心臓が跳ね上がる。後ろを振り返る。誰もいない。下にはサンダル。あれ、私、裸足で出てきたように記憶している。「……洗濯干そう」私は日常に戻った。

2011-12-17 17:50:53
@prefab000

#twnovel 掌を太陽に透かしてみたところで赤は見えなかった。だから世界の見え方は人それぞれ違うのだろうと既に疑っていた。赤をばら撒く。「ひどい!黒板にまでかかった!」赤が見えない僕にはどうでもいい。「表現が幼稚。つまらない」僕はこの時、彼女こそ理解者だと勘違いしてしまった。

2011-12-16 04:32:22