高校時代の深夜0時、突然好きだった女の子から電話がかかってきた その瞬間俺の脳内にはさまざまな疑問が浮かんだ 『なんで?』 『いやそもそも彼氏いるじゃん』 『この時間になんの話だ?』 ショート寸前の俺は何故かその電話を取ることができなかった。その時のことを今でも思い出す つづく
2024-03-30 15:11:41高校受験では俺は第一志望であった都内ではそこそこ優秀な新宿の公立高校に合格した。新宿にあるだけあり通学路に背の高いビルが立ち並び、まさしく日本の中心にある高校へ通う事への期待に胸を躍らせていた
2024-03-30 15:12:01とはいえ、普通の公立校であり立地以外は特段普通の高校と変わらなかった。そこそこ部活が盛んで学生も真面目な人が多かった 入学後1月ほどで高校生活も慣れはじめ、ポツリポツリと知り合いの輪も広がってきた。その中にその女の子はいた。
2024-03-30 15:12:18その子はいわゆる大人しめな女の子で、黒髪のセミロングで色白な肌が印象的な子だった。高校のクラス内にあまり友達はおらずいつも自分の席で張り付くようにスマホを眺めていた。可愛らしい顔立ちなのに何かに怯えるように自信なさげに節目がちに歩いてる姿をよく見ていた記憶がある
2024-03-30 15:12:39その子と仲良くなったきっかけは、その子の中学の友達と俺が仲が良かったからだ。いわゆる友達の友達。大人しめなその子だったが、共通の友達がいるからか早々に心を開いてくれた。クラスで1人で居る時と打って変わり笑顔でよく喋りかけてくれるその子は案外人懐っこく良い子だった
2024-03-30 15:12:56仲良くなったきっかけはもう1つある。某坂道グループが全盛だった時代であり、俺もその子も同じアイドルグループが好きだった。共通の趣味もあり入学して早々毎日のようにラインをするようになった 毎日のやり取りは楽しく、段々俺の中でその子が大きな存在になっていた
2024-03-30 15:13:14LINEでその子は俺のことをよく褒めてくれた。『〇〇君って凄い優しいよね!』と何度も内面をよく褒めてくれていた。今思うと"優しい"など他に取り柄がない人に言う言い回しだろうが、そういった日本語特有の行間などまだ知らない俺には真っ直ぐ褒めてくれるその子の言葉はたまらなく嬉しかった
2024-03-30 15:13:37話していくと中学時代から付き合っている彼氏がいる事を知った。決して驚きはしなかった。それだけ彼女は魅力的だった。段々と強くなっているその子への好意は胸にしまっておこうと決意した。たまに話す彼氏の惚気や愚痴を感情を殺しながら聞いていた
2024-03-30 15:13:56ある日、きっかけは思い出せないがその子と電話をした。たわいもない話をしていたのだが、その子は突然俺に好きな人がいないのかを尋ねた。その突然の質問に心臓の鼓動が早まった。押し出された血液が体内を素早く駆け巡る。 『気になる人はいるかな...』 『えー、誰だろう...ヒントとかない?
2024-03-30 15:14:28もう夜が深まっていて、既に俺の脳は疲労で限界を迎えていた 『えぇそうだなぁ...うーん...』 疲れ切った脳では明らかに自分から生まれてしまった強い"動揺"を隠せず俺は不自然な間を生んでしまった。同時に俺の脳内には拙い打算も巡っていた。
2024-03-30 15:14:41『実は俺の事が好きで、だから俺にこんな質問をしているのではないか』 『前に彼氏の愚痴を言っていたし気持ちを伝えたら俺と付き合ってくれるのではないか』 この不自然に生み出したしまった間が既に"この子の事を好き"だと自白してしまっているように思い俺はその子に好きだという気持ちを伝えた
2024-03-30 15:14:58突然の告白に対するその子の反応は 『え、あぁ...なんか...ごめんね...』 あの時のその子の反応は容易に思い出せるほど脳内にこびりついている。 電話越しの見えるはずのない彼女の表情が急速に曇っていくのを感じた 実は俺の事が好きだなんていう漫画のような幻想を打ち砕くには十分な声音だった
2024-03-30 15:15:17その子の声から勝手に驚きと落胆を感じとった俺は早口で『ま、まあ彼氏いるし困るよね笑、マジで忘れて笑』など傷つくのを恐れて予防線を貼りまくった言葉を散々吐き出し逃げるように電話を切った。なんて格好悪い男だと今は思うが当時は傷つく事が怖く、逃げる事しかできなかった
2024-03-30 15:15:29その後何かラインが来たが、勝手に気まずさを感じ1ヶ月ほどLINEを未読してしまった。夏休みにも入っていたのであの子と顔を合わせないで済む事が何よりもの救いだった。
2024-03-30 15:15:501ヶ月後に意を決してLINEを返した後何事もなかったようにポツリポツリとまたラインをする日々が続いた。 しかし、学校が始まってラインはするのにクラスで話す事はなくなった。
2024-03-30 15:16:14話しかける勇気を持てなかったくせにまた俺はその子と前みたいに話したいと思った。その子の席の近くの友達に話しかけに行き時々会話のボリュームを上げて気を引こうとするなど彼女の視界に入ることに躍起になった。騒がしい場所が嫌いな彼女には逆効果だったと思うが接し方がわからなかった
2024-03-30 15:16:30それからまた数ヶ月後、深夜0時突然その子から電話がかかってきた その瞬間俺の脳内にはさまざまな疑問が浮かんだ 『なんで?』 『いやそもそも彼氏いるじゃん』 『この時間になんの話だ?』 ショート寸前の俺は何故かその電話を取ることができなかった。その時のことを今でも思い出す
2024-03-30 15:16:50電話を取る事ができなかった俺はすぐさま返信をした 『取ろうとしたらちょうど切れちゃった。何の用事だった?』 するとその子は『ごめん、今ライン壊れちゃって色んな人に電話かけちゃってる』と返した。 嘘に決まっている。 と、今ならわかるが当時の俺は何故か信じてしまった
2024-03-30 15:17:27後でわかった事だが、その電話がかかってきた時期にその子は彼氏と別れたようだった 電話の内容がどういうものだったかわからない。卒業後何年経っても思い出すこの出来事は"後悔"以外に他ならない。 なぜ出なかったのだろう 『タイムマシンがあったら』なんてステレオタイプの言葉が浮かぶ
2024-03-30 15:17:482年になり、クラス替えで俺とその子は違うクラスになった。しばらく経ちその子が俺も喋った事もないサッカー部の男と付き合い始めた事を知った。一緒に登校しているところも何度も見かけた。その男が他のサッカー部員に『〇〇(好きだった子)の処女を奪った』と活き活きと自慢していると言う話も聞いた
2024-03-30 15:18:07腹を立てることも悔しがる事も行動しなかった俺にはできない。 逃げる事は簡単だ。何事も向き合うのは苦しい。でも逃げた後も後悔が付きまとうなら俺はこれからはこの2択では向き合う方を選びたい。 去年行われた同窓会にはその子の姿はなかった 卒業して数年、きっと綺麗になってるんだろうな
2024-03-30 15:18:42