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20240401

不在之夢
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⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

ねむるばしょは毎日ちがくて、すこしいたいばしょでおにいさんにつつまれてねむったり、上にソラとホシが見えるばしょで服みたいなものにつつまれてねむったり、やわらかいものの上だったこともある。 そんなことがなんどもなんどもすぎて、おにいさんは元気がなくなっていった。

2024-04-01 19:49:52
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

頭は撫でてくれないし、おしゃべりだってぼくよりもゆっくりで、あるくのだってぼくのほうがはやくなっちゃったんだ。 おにいさんとあるけないのはさみしくてかなしかったけど、おにいさんは明るい指を向けて「あの光の場所が僕達のゴールだ。だから鬼太ちゃんは先に行って待ってて」っていった。

2024-04-01 20:00:31
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

「『可愛い可愛い墓場の子。愛おしい愛おしい雨夜の子』。そういっておにいさんはぼくをおして、おきたんだ」 「ぁ……」 「でもね、ヘンなんだ。おにいさんだとおもうんだけど、おにいさんの音じゃな……どーしたの?」 腕の中の半身を軋むほどに抱きしめ、どうして貴方はと恨まずに居られなかった。

2024-04-01 20:27:24
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

全てを僕に押し付けて忘れてしまった彼でさえ視てしまうほどにあの人の呪いは、かつて『███』と呼ばれた幽霊族最後の末裔の根底の根底の、それこそ定義遺伝子だとか、定義の領域まで侵しているのだ。 あの言葉も、あの日々も無ければ無情に居られたというのに。 「……ひどい……酷い酷い酷いッ!」

2024-04-01 21:59:14
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

逃げて逃げて、逃げてなおこんなに苦しまずに済んだのに。 ただの少しズレた妖怪として、そう在れたのに。 その呪いが口汚い呪詛と怨嗟に塗れたものであれば恨むことも出来たはずなのに。 「……だいじょうぶ……?」 「ごめん、ちょっと駄目……。だめ、だ……」 栗色の柔い髪に顔を埋める。

2024-04-01 22:03:45
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

あの愛おしい日々を僕達は結局捨てることが出来ない。あの日々とあの人を憎むことすら出来ない。 目を逸らして僕に押し付けて、或いは忘れた振りをしてもその魂に刻み込まれているせいでどうしたって切り離さない。そのなんと残酷なことか。

2024-04-01 22:10:32
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

可愛い可愛い墓場の子。 愛おしい愛おしい雨夜の子。 哀れなその成れの果てが僕達であり、僕であり、彼で、そんなのはきっとあの人が望んだ形ではなかったはずだ。 ましてやそれが呪いとなって苦しむことなど彼の願いとは真逆だと言うのに。 「ぅ……、ッ、ぅウゥ……っ……」 「よし、よし、いーこ」

2024-04-01 22:13:04
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

僕が時折する真似をするようになってない撫で方で髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているのに、今はそれでよかった。 「だいじょーぶ、ぼくがいるから」 「……そう、だな、……うん……、うん……」 嗚咽は止まらない。何の慰めにもならなければどうせ言ってる意味だって分かってない。

2024-04-01 22:18:52
⚠️無法地帯⚠️ @simayayarisaze

「大丈夫……、うん、大丈夫……。大丈夫、なんだ」 それでも都合よく父と養父と僕との幸せだった時間がこの子の中に残されていることが、僕が苦しみ続ける理由として成立することに安堵していた。

2024-04-01 22:24:49