インコ・文・学

インコと文鳥が見つけたのは、とても優しくて暖かい素敵な【鳥かご】だった。 姫野韻子 … インコ 鳥嶋文 … 文鳥 籠山学 … 籠山先輩。カゴッち。ガクさん。 続きを読む
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ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 韻子という名前が珍しい彼女は私の親友で且つ敵である。「裏切り者」大学で会うなり私は韻子に文句を言った。「何の事?」「昨日。本屋」「…な、何の事?」そうきたか。「抜け駆け禁止でしょ」私達は恋敵。「ブンチョーには悪かった」「ふみ。鳥嶋文です」これはインコと文鳥の恋物語。

2011-12-21 16:28:41
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 学食で韻子と遭遇。二人でいかに己の恋を成就させるかについて討論していたら、一緒に座っていたサークルメンバーが口々に叫びだした。「怖いよお前ら!」「犯罪だ犯罪者がいる!」「籠山先輩!危険です!インコとブンチョウから逃げてー!」失礼です。

2011-12-27 21:31:59
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 籠山学先輩は2つ年上。優しくて、笑顔がふんわりしていて、背が低くて、くせっ毛で、方向音痴で、運動音痴で、勉強が苦手で、英語が壊滅的で、鳥が苦手で、特にインコと文鳥の3m以内に近づけない。「不思議だ…プラス要素が殆ど感じられない…」「何言ってんの」「ドストライクです」

2011-12-27 22:42:22
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「カゴッち、暇?」「籠山先輩、お時間ありますか?」構内ルール『声をかける時は一緒に』という訳で、私と韻子は図書館で本を読んでいる籠山先輩に近づいた。「やあ、二人とも。いつも仲がいいね」「…ええ」「…まあ」この鈍さも堪らない。「何か用?」「美術館行きませんか?」

2011-12-30 23:36:39
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「美術館?何か面白いのあってたかな?」「うん」「はい、とっても面白そうなのが」私達の言葉に籠山先輩は携帯を取り出した。「この後は講義も無いし…うん、じゃあ行こうか」「やった!」「じゃあ、行きましょう!」私達の声が重なる。「「【インコと文鳥展】へ!」」「…え?」

2011-12-30 23:41:56
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「インコ…文鳥…展…え?え?」「鳥ばっかの美術品らしくってさー」「特に文鳥とインコをメインにしてるらしいんです」「あ、あの」「本物のインコや文鳥も特別に展示するらしいよ」「ポスターがすっごく可愛くって!私、ポストカード絶対買おうと…あら?」籠山先輩が逃げていた。

2011-12-30 23:46:12
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 籠山先輩は鳥が苦手。私がいつものように大学構内を歩いていると、前方に先輩を発見した。つい周囲を確認する私。オーケー、敵は不在のようです。『一人では声はかけない』…ルールは破るためにある。私は恐らく同じ事をしているに違いない敵に心の中で詫びると先輩に近づいた。

2012-01-18 22:36:17
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「こんにちは、先」「うわあああ!!」ズザザーと後退する先輩。笑顔が固まる私。え?私何かしましたか?ショックで硬直する。「あ、鳥嶋さん…」先輩は震えながら「カ、カ、カ」「カ?」先輩の視線を辿ると、ゴミ箱に群れる数羽のカラスがいた。「カ、カラスが」死にそうで可愛いです。

2012-01-18 22:42:09
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「とりあえず離れましょう」私が言うと先輩はコクコク頷きながらついてきた。「ごめん、本当に鳥がダメで…」恥ずかしそうに耳を真っ赤にする先輩。ダメだ、お持ち帰りしたい。「幼少期のトラウマ…でしたか」「そう、小学生の時田舎で野性の鷹に襲われて」嘘のような本当の話らしい。

2012-01-18 22:46:47
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「体が小さかったから、肩を捕まれて浮いちゃってね」そこはトラウマ故の誇張表現ではないだろうかと思う。「それから鳥全般ダメになっちゃって」「大変ですね」「鳥嶋さんは文鳥を飼ってるんだよね」「ええ、可愛いですよ」「理屈では分かるんだけど…本能が拒否しちゃって」壮大です。

2012-01-18 22:50:48
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「そうだ、今度文鳥見にきませんか?」さり気なく誘ってみた。「えーと、その、生命線が二倍に伸びたらね」何言ってるか理解できません。残念だけど、焦っている先輩の表情も素敵です。「そうですか」「えーと、ひ、姫野さんもインコ飼ってるんだって?」話題をそらそうとする先輩。

2012-01-18 22:55:58
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 「ええ、会話できるそうですよ」「え?」「『オナカスイター』『スイタネー』『ゴハンツクッテー』『エエーツクッテヨー』『イヤイヤ』『イヤイヤ』…とか」「「本当に?」「本当に」ちなみに名前は【インコ】らしい。名前なのか。「仲いいんだね…」感心していた先輩が歩みを止めた。

2012-01-18 23:01:44
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 そのまま、街路樹脇の草むらに近づく。「…?」しばらくするとガクガク震えながら先輩が戻ってきた。「と、と、鳥嶋さん」手にそっと何かをのせて。「小鳥…怪我してますね」「ど、どうしよう」「近くに動物病院あります。連れていきますか?」「うん、そ、そうする」

2012-01-18 23:07:34
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 うわーうわー、と言いながら歩き出す先輩。「私の手に載せます?」「いや、無理!硬直しすぎて、手が何するかわかんない!」真っ青になりながら返事する先輩に、私は思わず笑ってしまった。鳥が苦手で、トラウマで、カラスを見ただけで大騒ぎする先輩。

2012-01-18 23:12:50
ハラヨシ @harayosy

#インコ文学 だけど、怪我した小鳥を見れば無視できなくて放っておけなくて。「う、羽毛の感触がする!」「鳥ですから」「ぐわー動いたー!」「生きてますから」大慌てな先輩のリアクションに答える。動物病院までの道のりを私は先輩と楽しく過ごした。…後日、韻子にバレて怒られた。けど、満足。

2012-01-18 23:21:23