20240421 #潮ちゃんvsシリーズ 潮ちゃんvsKAIJU

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飛び石 @Tobiishisan

日がとっぷりと沈んだ沖合で潮風が頬を撫でていく。私は今から向こう側のあの島に砲撃をするんだ。 潮、しゃんとしなさい! 人間の体って難しいですね 砲の角度を調整する。 潮タンは初々しいですな〜 朝焼けに照らされた海面には多くの人が

2024-04-21 15:50:59
飛び石 @Tobiishisan

あんた本当に美味しそうに食べるね。こっちも食べちゃいな 君らは艦娘になった。もう戻れない。 曙ちゃん、ダメだよ提督にクソなんて言っちゃ━━ ・・・・・ ━━お、━━しお、うしお 「潮!しっかりしなさい!」

2024-04-21 15:51:50
飛び石 @Tobiishisan

頭の中に響く聴き馴染みのある曙の声に意識が戻る。 目の前には、ホロディスプレイに投影された会敵間近を警告する表示がいくつも。 はっとした私は急いで機体の神経伝達をチェックする。 ━━問題無し 試しに自分の右腕を動かすと外気に触れた<もう一つの右腕>が上下するのが分かる、実感する。

2024-04-21 15:53:13
飛び石 @Tobiishisan

良かった。ブレイン・ハンドシェイクは成功した。 左隣を見ると、白地のウエットスーツに似た形状━━網目状に組み込まれた電気回路が各部で輝くドリフト・スーツを着た曙がこちらの状態を確かめる様に見ていた。

2024-04-21 15:54:38
飛び石 @Tobiishisan

彼女の身体は中空でモーションキャプチャ・リグに固定されている。この指令ポッド内での身体の動作、つまり脚の動きから手、頭の動きまでトレースされ腰部の艤装ソケットに繋がった神経ドライバを通じて機体へと命令を下し、反対に外部の触覚から損害状況も含めてこちらへ情報はダイレクトに伝達される

2024-04-21 15:57:00
飛び石 @Tobiishisan

私━━潮もまた、曙と同じドリフトスーツを着込み、リグに固定されている。 何故ならこの機体は二人乗り用だからだ。 二人の艦娘が人間でいう右脳左脳の働きを分担して、全長120mの高さを誇るこの鋼鉄の人型機械を動かしていた。

2024-04-21 15:58:09
飛び石 @Tobiishisan

甲冑を着た人間の縮尺をそのまま拡大し、全身を何層もの銀色の複合装甲で覆われ、腹部に内臓された核反応タービンが轟音と共に出力を上げていく。 かつて人間の時にはスカートが覆っていた臀部にはロケットエンジンの推進器、左腰部には碇型の巨大槌が懸架され、

2024-04-21 15:59:24
飛び石 @Tobiishisan

右腕部には主武装の12.7cm連装砲を2基計4門装備しているこの巨大機械は、現代の「艦娘」だった。

2024-04-21 15:59:39
飛び石 @Tobiishisan

特Ⅷ型駆逐艦「ユーラシア」 眼前に広がる荒廃した高層ビル群の合間から現れた「ユーラシア」と同サイズの巨大な生物━━深海棲艦を倒すために人類が創り出した、最後の切り札だった。

2024-04-21 16:01:27
飛び石 @Tobiishisan

ーーーーーーーーーーーーーーー 「潮、敵の解析が済むまで距離を保って牽制するわよ」 音声ではない。曙の意識が潮の頭に流れ込んでくる。この指令ポッド内では音声でコミュニケーションを取る必要が無い。

2024-04-21 16:03:04
飛び石 @Tobiishisan

ブレイン・ハンドシェイクを果たした二人はまるで一人であるかの様に思考は束ねられ、機体の動きに反映される。 元々一人乗りとして開発が始まった「ユーラシア」だが120mの人型機械の歩行から火器管制、通信までこなすのには一人分のCPUでは限界があった。

2024-04-21 16:04:36
飛び石 @Tobiishisan

そこで編み出されたのが二つの頭脳、CPUを使って分散処理させる「ドリフト」という技術だ。

2024-04-21 16:05:05
飛び石 @Tobiishisan

この技術のおかげで艦娘はまるで人であった時と変わらぬ動きをこの巨体でも可能にしていた。 この技術が開発されるまで志半ばで敵になす術もなくやられていった友軍も少なくない。 そうまでしても倒さなければいけない相手、深海棲艦は距離1000を保ちながら蠢いていた。

2024-04-21 16:05:39
飛び石 @Tobiishisan

蠢く。 そう表現するのが正しいほど、潮のホロディスプレイに映る敵の姿はかつてのものとは大幅にかけ離れていた。 まず足が無かった。体を支えているのは甲殻類の蟹が持つキチン質で覆われた脚と吸盤を持った蛸の脚。

2024-04-21 16:06:24
飛び石 @Tobiishisan

胴体は甲羅の箇所もあれば魚の鱗に見えるちぐはぐさで所々を大人の頭ほどもあるフジツボが覆っている。 頭部は異常さの際たるもので、鋭く突き出したサメの頭が二つ別方向を向いている。さらに間からはニョキッと突き出した蟹の眼と、得体の知れない体液を吐き出し続けるタコの口腔部。

2024-04-21 16:07:02
飛び石 @Tobiishisan

かろうじて片腕は人の形をしているがその色はどす黒く濁った緑色で、もう片方の腕の半分から先は蟹の挟がバランスを考慮しない大きさで生えていた。 先ほどちらりと見えた背中にはイソギンチャクの触手がうねうねと獲物を探す様に蠢いている。

2024-04-21 16:07:40
飛び石 @Tobiishisan

まるで神様が海洋生物を雑にコラージュした生き物。この醜悪な生物は全長が130mまで達している。 ━━それが、今の潮達艦娘が戦っている深海棲艦だった。

2024-04-21 16:08:18
飛び石 @Tobiishisan

ーーーーーーーーーーーーーー 初めはただの巨大化だった。 段々と劣勢になり始めた深海勢が採った戦略は、自身の体を巨大化する事による既存戦力の維持だった。 そして、艦娘の武装は敵を攻撃した際に空いた傷(穴)に術式を流し込んで調伏する形式のもの。

2024-04-21 16:09:40
飛び石 @Tobiishisan

つまりは装甲に対して火力が不足していれば穴が空いても小さくすぐに塞ぐ事が可能だった。この戦略を採用した深海側は一時的に戦局で優位に立つほどだった。 対して艦娘側も武装の大型化を計りこれに対抗した。

2024-04-21 16:12:05
飛び石 @Tobiishisan

46cm砲が珍しくなくなっていくと同時に深海艦はさらに巨大化を目指し、人類と深海棲艦の愚かなチキンレースが始まった。 そして、そのレースは人類側に巨大人型兵器を。深海側は僅かに残っていた人間性を捨ててまで生物としての巨大化を選ぶという所まで行き着いていた。

2024-04-21 16:13:04
飛び石 @Tobiishisan

かつては等級と艦種で分類していた深海棲艦も、その姿を「艦」と呼べるものは次第に減っていった。 誰かが言っていた。 言葉も通じない、人類を滅ぼす意思だけしか感じさせない化け物。あれではまるで「怪獣」だ、と。

2024-04-21 16:13:41
飛び石 @Tobiishisan

事ここに至って、人類と深海棲艦の「和平」は不可能となり、絶滅戦の様相を呈してきたこの戦いが続いて20年、「ユーラシア」は人類に残された五体の艦娘のうちの一つとなっていた。

2024-04-21 16:16:52