工房径ついのべ集 2012年1月

1月は鶏庭子様の企画に参加させていただきました。  「キーワードはオブラート☆」 http://togetter.com/li/239557  「お題de小説」 http://togetter.com/li/242658 は「通勤電車・スーツ」「眼鏡」「年下・制服」です  1月14日のついのべの日 お題は「試験」でした。  ほとんどのついのべは3題などのお題を拝借。 続きを読む
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「もしもし?」彼女の声は少しよそゆき。周りに家族がいるんだな。「今年もよろしく。ごめんな。直接、声、聞きたくて」あれ、返事がない。移動したのか、がさがさとした音のあと、ふう、と俺の耳に届く彼女の吐息。「その声、卑怯。会いたくなっちゃう」君の方がよっぽど卑怯。

2012-01-01 17:48:21
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 元旦から仲間内の新年会。なんとか君の隣に座るまでは成功した。香水だろうか、仄かに漂う君の香りは、酒よりもっと質が悪い。お猪口を傾けた君の、こくりと動く白い喉を眺めながら、俺は君を手に入れるための策を練る。1年の計は元旦にあり。今日僕は、絶対一歩も引かないから。

2012-01-03 05:57:04
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 仕事始めの楽しみは、上司のあの人に会えること。淡々と自分のタスクをこなしつつ、きちんと部下を見ていてくれる。例えるなら彼は森に住む賢者。知恵を授けられると、その的確さに跪きたい気さえして。いつかその森に住みたいと憧れて、花の種を蒔くように私は仕事に没頭する。

2012-01-04 08:25:57
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 大学院も卒業間近。研究室の整理が手間取り深夜になった。「ちょっと来て」彼が連れてきたのは大学の教室。席に座らせ教壇のマイクをオンにする。「卒業しても俺の傍にいろよ」暫し見つめ合ったが彼の真意が掴めない。私は挙手で質問した。「先生、それはプロポーズの枕詞ですか」

2012-01-04 18:24:06
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「お前ね」マイクごと教壇に突っ伏す彼。きーんとハウリングの音が響く。「俺の一世一代の告白を……」冷静で無口だったはずのあなた。「らしくないことするからよ」私は憎まれ口をききながら歩み寄る。「らしくなくさせてんのは誰だよ」彼は舌打ちしながら私を胸に抱きとめた。

2012-01-04 19:38:10
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 君という小鳥が、僕の心にころりと落としていった豆。はじめはただのエンドウ豆だと思ってた。それなのに君が僕に優しい歌やかわいい羽ばたきをくれるから。蔓はどんどん伸びてゆく。甘い香りの花が咲いたら、ほら瞬く間に実を結ぶよ。僕と君とのハッピー・エンドゥ。

2012-01-04 21:56:00
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#twnovel 「ランチ奢りますから」と後輩の男の子に連れてこられたのは、まさかの高級レストラン。慣れた様子で注文を済ませ、テーブルの上の手を取られる。後輩なんかに好きにさせるか、と思っても、手錠をかけられたみたいに動けない。「あれ、いつもの勢いはどうしました?」この、策士め!

2012-01-05 08:49:05
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 排水溝に流れる泡を見つめて、入れ替わりに浴室を出ていった彼のことを考える。友達だった彼に別人のように迫られて、気がつけばホテルの部屋に。「俺のこと、好きだろ?」切なそうな瞳に困惑した。わからないの? 秋の訪れを告げる金木犀みたいに、ずっと好きだと香ってるのに。

2012-01-05 22:58:49
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel カフェのテラス席。差し込んでくる陽光が眩しいふりで、僕は帽子のつばをぐっと下げる。「ねえ」向かいに座る彼女の声が、それでも僕を追いつめる。「私のこと好きって、本当?」やっとの思いで言ったのに、こんなところでもう一度? だめだよ、次はふたりっきりの秘密の場所で。

2012-01-06 06:11:53
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel つきあってからクールな彼が、がらりと変わった。翌日仕事がある私に「朝、車で送ってやるから泊まっていけよ」とわがまま言って。駅に着いても手を離さずに寂しがる。「何歳児よ」と笑うと「0歳。誕生日来てねえし」と真顔で言う彼。「君とつきあってから、まだ1ヶ月、だろ?」

2012-01-06 19:39:32
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「今日中にやれ」そう言われたから残業したのに。上司はそんなことを忘れ帰社した後。後回しになった自分の仕事を済ませればもう深夜。泣きじゃくりながらエレベーターのボタンを押すと、開いた扉の中には愛しい彼。「じゃーん、ヒーローの登場です」「馬鹿」温かな胸に抱きついた。

2012-01-07 08:28:14
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 君を目の前にした僕の心はカフェオレ。そのまま眺めていたい気持ちが半分と、すぐさま連れ帰りたい気持ちが半分。なのに君は無邪気に僕の顔を覗き込むんだ。好奇心は猫をも殺すって知ってるかい? フローライトみたいに透ける君の瞳は、僕をすぐさまその気にさせてしまうのに。

2012-01-07 19:02:25
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「あなたの部屋に行ってもいい?」ゆうべ君の電話をうけてから、俺はティーンエイジャーばりに大興奮。君の座るのはここ、俺はここ、なんて箱庭を作るみたいにシミュレーションして。でも実際に君を迎えたら計画は全て吹っ飛んだ。お土産のドーナツ? 正直そんなのどうでもいいよ。

2012-01-08 11:46:12
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 月が太陽に出会う早朝の街。居酒屋の前で寝ているところを小突かれた。運命の女に出会ったと有頂天だった俺。彼女が違う男と歩いていたショックでやけ酒を食らい、閉店で追い出されたまま、ここで。目を上げれば彼女が俺を睨んでいる。「探したわよ。何で私と兄を見て逃げたの!」

2012-01-08 16:59:37
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「もう寝るね」そう言ってもあなたは背中越しに「ああ」と答えてPCに向かう。仕事なんてなくなっちゃえばいいのに。ねえ、誘う術を教えてよ。真綿のような優しさよりも両手でぎゅっと抱きしめて。愛されてるって感じたいの。天国は、ほらここ。ふたりのベッドの中にあるんだよ?

2012-01-08 21:44:38
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 日曜日の昼下がり。カフェの窓際でブーツの爪先を揺らしながらあなたを待ってる。ただの友達だったのに「ふたりだけで会おう」って電話してきたのはなぜ? とまどいながらもときめきは隠せない。乱暴な物言いでいて、ときどきすごく優しいあなた。ずっと胸に温めてたの、恋の卵を。

2012-01-09 09:35:04
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「好きだよ、君が」突然の告白に目が泳ぐ。誰が見てもすてきなあなたは、例えるなら薔薇。私はせいぜい道端の小菊。「からかわないで」と背を向けると、彼の腕が後ろから伸びる。「信じてよ」抱き寄せられて、背中から伝わる甘い声。ああ、もう、あなたの箱庭から出られない。

2012-01-09 17:29:43
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel こつん、と窓を叩く音。カーテンを開ければ、現れたのはあなた。家族を気にして、そっと夜の庭に出る。「ちょっとした密会だね」と笑う彼の出張は、確か明日までだったはず。「だって今日、誕生日だろ?」どんな魔法を使ったの。日付が変わる少し前、彼はプレゼントのキスをした。

2012-01-09 19:01:03
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel プリンタのインクカートリッジを替える、彼女の杏色の細い爪。スーツ姿の先輩は、クールに見えて案外天然。「ああっ、これ黒だと思ったらカラーだった!」恥ずかしいのか、きょろきょろ辺りを見回す彼女に微笑んだ。「大丈夫、僕しか見てません」口止め料は、一緒のランチで。

2012-01-09 19:35:14

@工房径さんは『「貴女といると、つい気が緩みますね」黒髪で童顔の、どこか寂しげな、高校の恩師の男性』とのイベント創作をお願いします。 #創作オジプラス http://shindanmaker.com/168136

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 偶然カフェで会った高校の恩師。「貴女といると、つい気が緩みますね」生徒にも敬語で通す真面目な彼。そのどこか寂しげな笑顔に惹かれていた。変わらない、少年のような顔も、黒髪を掻き上げるその仕草も。「何か顔についてます?」ううん、確かめたの、その指に指輪がないのを。

2012-01-09 21:57:05

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#twnovel 年末年始は海外旅行で賀状の返事も出しそびれて。昨日の昼になって、慌ててLOFTで葉書を選んだ。「遅くなってごめんね」久しぶりの出勤日、会社で直接葉書を渡したのは懐いてくれてる後輩くん。「いえ、直の方がうれしいし」なぜか意味深に微笑む彼。「今年こそよろしく、先輩」

2012-01-10 08:20:53

「 #オブラート 」は、キーワードはオブラート☆ http://togetter.com/li/239557 に参加させていただいたものです。 

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

「今晩暇か?」そう言うのは同期の男。「え、飲み会?」「いや、とにかく空けとけ。飯行くぞ」はっきりしない物言いが気に懸かる。「あんたと、他に誰?」「俺だけだ」どうも解せない。首を捻ると彼は唸って「オブラートに包んで言ってやってんのに! お前を口説くから覚悟しやがれ!」 #オブラート

2012-01-10 20:16:25
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