ジ・インターナショナル・ハンザイ・コンスピラシー #4

公式note https://diehardtales.com/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【このアカウントは】 サイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の最新話を連載しています。連載が始まると数分ごとにセンテンスが投げ込まれタイムラインを形成します。このアカウントをフォローすると、良さがあります。(読めるので) #ニンジャスレイヤー

2024-05-09 21:28:13
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【現在のニンジャスレイヤー】 月が割れ、政府が消滅して10年。ネオサイタマは繁栄と混沌の極みにある。そしてニンジャの悪事も! 現在のニンジャスレイヤー=マスラダ・カイと、かつてのニンジャスレイヤーであるサツバツナイト=フジキド・ケンジは、今日もどこかで邪悪なニンジャと戦うのだ!

2024-05-09 21:31:45
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【現在のエピソードのあらすじ】 謎の存在、ブギーマン。ペンタゴンを脱出し海をわたってネオサイタマに上陸した超常存在を追い、アルカナム社のエージェントは調査を開始した。 一方、ブギーマンの存在を追う者達は他にも存在した。邪悪なる汎罪組織「ハンザイ・コンスピラシー」だ……!

2024-05-09 21:35:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

我は太陽 / I am the sun 七つの海を / and the ruler of 統べるもの / the seven seas. 我は雲 / I am the cloud 西より東へ / that traverse from the 至るもの / west to the east. 「これらのハイクは尊大なるブギーマン自身を歌っているように思えます。しかし……」 1

2024-05-09 21:39:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブギーマンは実際、西から東ではなく、東からやってきた形ですので、これら二つのマキモノの連歌の内容にそのまま当てはめるには違和感があります。読み直すと、ひとつめのハイクは大英帝国の継承者を自認するカタナ・オブ・リバプール社を暗示する可能性がある事に気づきます」 2

2024-05-09 21:43:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「二つ目のハイクの"西から東へ"は古い謎かけで、スペルのLをRに置換せよという指示です。cloudをcroudへと置換します。これは古語の"雲"であり、違和感があります。よって、同じ音であるcrowd「群衆」を当てはめます。カタナ社、そして群衆の集まるところ。……それは間違いなく、博覧会会場です」3

2024-05-09 21:48:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

画面の中で、イイダ博士の手元が動き、二つの不穏なブラック・マキモノの実物を指し示した。ビル・モーヤマとザルニーツァの緊迫した表情に、端末モニタのバックライトが、蛍光色のディジタル輪郭を付与した。 4

2024-05-09 21:50:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ジ・インターナショナル・ハンザイ・コンスピラシー】#4

2024-05-09 21:52:13
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネオサイタマの湾岸地帯、ヨコハマから臨むドリームランド埋立地の南端域に、デジマ・アイランズと呼ばれる新興埋立群島が存在する。高機能迫撃ブイが浮かび、オスプレイ・ツェッペリンや迎撃ドローンが24時間体制で領域警備を行うデジマへの進入路は、ただ一本の巨大橋ブリッジ・オブ・デジマのみ。5

2024-05-09 21:58:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

落日が美しく湾岸を染め上げるなか、風を切ってブリッジを走る、白いクラシック・カーの姿あり。平たく鋭角的で、後部のテイル・フィンは宇宙時代を夢見るがごときロケット尾翼めいている。電子戦争以前の名高きクルマ、カモメハヤイのハンドルを握る眼帯の男は、ハンザイ・コンスピラシーの一員だ。6

2024-05-09 22:05:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼、ペイルシーガルは、助手席に油断ならぬ「相棒」を伴っていた。これから共にアタックを仕掛ける仲間である。背中を預けられるだけの実力と、ビジネスの重大さを理解する最低限の知能、しかも緊急時には容易に切り捨てられる繋がりの薄さが必須。ネオサイタマにおける現地登用の傭兵だ。7

2024-05-09 22:11:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

PVCクロームコートを着た男は、ツーブロックヘア側面に、自身のニンジャネームを剃り込んでいる。「エラボレイト」。サイバネアイの表面には01のディジタルが滝めいて流れ、デザイナーズじみて切り込まれたコートの腕部スリットからはサイバネ置換された腕のUNIXライトがのぞく。 8

2024-05-09 22:16:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エラボレイトはUCA出身のニンジャだ。それも重要だった。ペイルシーガルと故郷を同じくするゆえに、ものの考えの機微は、擦り合わせるまでもない。無形の信頼とでもいうべき素地があり、扱い易いといえた。今回のミッションはある意味、突貫工事だ。真の信頼を培う時間的余裕ははなからない。 9

2024-05-09 22:21:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――(博覧会オープニングセレモニーへの潜入?デジマだと?フン……)彼らが顔を合わせたのは99マイルズ・ベイの廃屋だった。ブラインドの影が、対峙する彼らに縞模様を刻んだ。(バカげた話だ。KOLの偏執的セキュリティを知らんのか)(……ゆえにこそ、ハンザイ・コンスピラシーは行動する) 10

2024-05-09 22:25:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ペイルシーガルはUNIX端末にデータを挿し込んだ。エラボレイトのサイバネアイが「解析」の漢字を灯し、口元が歪んだ。(回りくどい真似だ。正体不明のブギーマンとやらを待ち構える……その為だけに、わざわざ獅子身中へ身を投ずると?)(その通り。ゆえにこその報酬額だ)(フン……面白い)11

2024-05-09 22:30:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブギーマンは、端的に言えば、神出鬼没の怪盗だ。だがプロフェッサー・オブ・ハンザイはその超数学的頭脳とやらで怪盗の動向を予測し、確定させた。KOLの博覧会には幾多のレリックが集められる。そこに奴は必ず現れる、と)(予想が当たらずとも、報酬の3割は頂くぞ)(構わん。必ず当たる)12

2024-05-09 22:36:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(なんとも厚い信頼だな。"犯罪芸術"とやらのロマンを信奉しているのか?)(信奉ではない。プロフェッサーの言葉に興味はない。結果だ。俺はハンザイ・コンスピラシーのニンジャとして、彼の行いを見続けてきた。ロマンなど不要。奴に近づけば、カネとチカラが手に入る。それだけだ) 13

2024-05-09 22:40:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(それを信奉というのだ、ペイルシーガル=サン)エラボレイトは低く笑った。(まあ、いい。俺はそんなお前のおこぼれに預かり、マネーを頂く。それ以上でも以下でもない。……俺は真のプロフェッショナルだ)差し出された手を、ペイルシーガルは握った。その姿がエラボレイトの鏡写しとなった。 14

2024-05-09 22:45:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(成る程)エラボレイトは微かに表情を動かした。(それがお前の変身能力。ツツモタセ・ジツか)(そうだ)ペイルシーガルは頷いた。(触れた相手の姿を盗む。対象には、必要に応じ、眠るなり死ぬなりしてもらう)(……どの程度、持続する?)(対象から一定の距離を離せば無効となる)15

2024-05-09 22:50:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ペイルシーガルは手を離し、変身を解いた。エラボレイトは鼻を鳴らす。(随分とあけすけに手の内を明かすじゃないか?)(契約は既に成立した。契約不履行は全コンスピラシーへの敵対を意味する。その行き着く先はデス・ライユーの処刑だ。貴様は既に選択肢を持たぬゆえ、躊躇なく教えるのだ) 16

2024-05-09 22:53:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――「飛んでいるな。カモメ(シーガル)が」エラボレイトが呟いた。たしかに水上にカモメの群れがわきあがっている。ペイルシーガルは「嫌いな鳥だ。虫唾が走る」と言った。「妙なアイロニーもあったものだ」と、エラボレイト。「セキュリティ・システムは鳥を撃墜せんのだな?」「鳥獣ゆえにだ」 17

2024-05-09 22:58:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オレンジ、赤のグラデーションが夜の青に遷移するなか、カモメハヤイは橋上の検問所に辿り着いた。一時停止。スキャナの光が車体を撫で、エラボレイトのサイバネのUNIXが明滅する。一秒の沈黙。係官が詰め所のドアを開けて出てきた。そしてマグライトを向けた。「ちょっといいですか?貴方がた」 18

2024-05-09 23:02:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キュウイイイ。エラボレイトの腕の奥で不穏な駆動音が響いた。ペイルシーガルは彼を一瞥し、そのまま係官が近づくのを待った。「確認しなければいけない事項がありまして……」「ああ」ペイルシーガルは頷いた。すると係官は身を屈め、しめやかに、手の甲を差し出した。その指には蜘蛛の指輪。 19

2024-05-09 23:04:59