竹取の翁

#twnovel 昔、竹取の翁(おきな)という者がおりました。野山に入り、竹を取りつつ暮らしており、その名を、さかきの造(みやつこ)といいました。ある日、翁が竹林に入りますと、根元が光っている奇妙な竹を見つけました。 #竹取物語意訳
2012-01-24 23:39:46
#twnovel 翁が不思議に思って近寄ると、竹の内から光がもれ出ています。そっと切って見てみると、竹筒になんともかわいらしい小さな人がおりました。「毎朝、毎夕、私が見る竹の中におわすとは。ああ、きっと天が我が子にと授けてくださったお方なのだ」 #竹取物語意訳 2
2012-01-24 23:47:41
#twnovel 翁は竹の中の小さな人を、そっと手のひらに包んで持ち帰り、妻の媼(おうな)に育てさせました。小さな人は本当にかわいらしく、媼もすっかり気に入って、籠の中に入れ、それは大事に育てました。 #竹取物語意訳 3
2012-01-24 23:52:59
1863【竹取物語3】媼(おうな)=老女、老婆。つまりは、おばあさんです。わかりやすさより雰囲気重視です。つまりは私の趣味です。
2012-01-24 23:57:00
#twnovel 竹林で小さな子を見つけてからというもの、翁が竹を取りに行くと、節ごとに黄金の入っている竹を見つけることが重なりました。翁はどんどん豊かになり、その子は何不自由なく、すくすくと大きくなって、三カ月もたつと立派な少女になりました。 #竹取物語意訳 4
2012-01-25 00:03:25
#twnovel 髪上げをさせ、裳を着せ、一人前の少女としての儀式もきちんと取りおこない、翁と媼は、家の奥から決して出さず少女を大切に育てました。少女は世に比類ないほど美しくなっていき、家から暗い所がなくなるほど、少女のまわりには光が満ち溢れていきました。 #竹取物語意訳 5
2012-01-25 00:15:42
#twnovel 光り輝く少女を見れば、翁の身体の苦しみは消え、腹立たしいことは慰められました。そして黄金の竹を取るようになった翁は大富豪になり、少女もずいぶん大きくなったので、三室戸(みむろと)の斎部(いんべ)の秋田を招いて、翁は少女に名前をつけさせました。 #竹取物語意訳 6
2012-01-25 23:40:40
#twnovel 秋田は少女を「なよ竹のかぐや姫」と名付けました。姫の成人の祝いには三日間の宴が設けられ、男は誰でも呼び集められて、それは盛大に行われました。男は皆、姫の美貌を噂に聞き、身分の貴賤を問わず、「なんとか姫を手に入れたい」と恋に落ちてしまいました。 #竹取物語意訳 7
2012-01-25 23:49:09
1867【 #竹取物語意訳 7】「かくや姫」とか「赫映姫」とか、いろんな表記あるっぽいんですけど、ここはいちばん通りのいい「かぐや姫」で。
2012-01-25 23:51:55
#twnovel かぐや姫のいるらしい垣根の近くや家の側、多くの男が群がりました。家に仕える者ですら容易に姫を見られないというのに、男達は眠れぬ闇夜に忍んでは垣根に穴を開け、姫を見たかと言っては騒いでおりました。こうして「夜這い」という言葉が生まれたとか…。 #竹取物語意訳 8
2012-01-25 23:56:10
#twnovel 姫どころか誰の姿もない場所をうろうろ歩いても成果のあるはずはなく、ではせめて姫の家の者に口をきいてもらおうとしても全く相手にされません。あたりを離れられぬ貴公子たちが、夜を明かし、昼を暮らし、やがて愚かな男からこれは無駄だと来なくなりました。 #竹取物語意訳 9
2012-01-26 00:07:36
#twnovel それでもなお、色好みと評判の高い貴公子がかぐや姫を求め通い続けました。石作(いしづくり)の皇子、車持(くらもち)の皇子、右大臣阿部の御主人(みむらじ)、大納言大伴の御行(みゆき)、中納言石上(いそのかみ)の麻呂足(まろたり)の五人です。 #竹取物語意訳 10
2012-01-26 00:18:36
#twnovel 少しでも綺麗だという評判を聞くと自分の女にしたくなるこの五人の好色貴公子たちは、かぐや姫会いたさに食事も喉を通らず、思い焦がれては姫の家でたたずみますが、やはり成果はありません。手紙を書いても返事はなく、切ない胸の内を歌に詠んでも同じ結末。 #竹取物語意訳 11
2012-01-27 00:08:40
#twnovel 真冬の雪、氷。真夏の太陽。貴公子たちは諦めることなく、かぐや姫の家へと通います。ついには翁を呼び出して「娘をくれ」と伏し拝み、もみ手までする始末。けれども翁は「実の娘でございませぬゆえ、思うようにはなかなか…」などと答えるばかり。 #竹取物語意訳 12
2012-01-27 00:11:16
#twnovel 月日だけがどんどん過ぎていきます。家に帰った貴公子たちはうつうつ悩み、神に仏に祈りを捧げ、「いやいや、どんなにかぐや姫がつれなくても、いつかは必ず誰かと結婚するのだから」と自分自身に言い聞かせ、また望みをかけて姫の家へと通うのでした。 #竹取物語意訳 13
2012-01-27 00:17:43
#twnovel うろつく貴公子たちの様子を見かねた翁は、ある日かぐや姫に言いました。「かわいい姫や。仏の生まれ変わりとはいえど、お前をここまで大事に育てたこの翁の気持ちをくんで、少し言うことを聞いてくれるかね」「まあ、当然のことですわ」かぐや姫は答えます。 #竹取物語意訳 14
2012-01-27 00:23:53
#twnovel 「わたくしが仏の生まれ変わりだなどと。ずっと翁が親だと思っておりました」かぐや姫の言葉を聞いて、翁は感激しました。「けれどね、姫や。翁はもう七十過ぎだ。明日の命も知れぬ身だ。一族繁栄のためにも、結婚しはしないかね…」 #竹取物語意訳 15
2012-01-27 00:34:48
#twnovel 「どうして結婚などするのです」かぐや姫は尋ねます。「仏の生まれ変わりとて、姫も今は女の身の上。翁が生きている間はよいでしょう。けれどずっと結婚せぬわけもいかぬでしょう。長年通ってくださる方々に、一度決心してお会いなさい」翁が姫を諭します。 #竹取物語意訳 16
2012-01-27 23:10:44
#twnovel 「わたくしは別に美人というわけでもありません。よく知らぬままその方々にお会いして、うっかりと恋に落ちて、もしも裏切られたらと思うと…。ですから、わたくし、どんな立派な方であっても、本当の愛情をお持ちとわかるまではお目にかかりたくありません」 #竹取物語意訳 17
2012-01-27 23:25:21
#twnovel 「まさしく姫の言うとおり。だが本当の愛情とは何なのかね。あんなに思い、通いつめ、愛のない方々などいないだろうに」かぐや姫は翁に答えます。「わたくし、高望みなどいたしませんのよ。ほんの、ちょっとしたことなのです」 #竹取物語意訳 18
2012-01-27 23:30:13
#twnovel 「人の思いの深さなど、結局どなたも同じとか。ましてわたくしにはその優劣などわかりません。ですから五人の方の中で、わたくしが見たいと思うものを持ってきてくださった方にお仕えしたいと思います。そうお伝えくださいな」翁は「名案だ」と喜びました。#竹取物語意訳 19
2012-01-27 23:41:03
#twnovel 日暮れ頃、貴公子たちが常のように集います。笛吹き、歌い、口笛、扇を鳴らし。そこへ翁が現れました。「むさ苦しい所へ長年お越しくださり、誠に恐縮…。先の長くない私としては、皆さまのような熱心な方に姫をぜひ嫁がせたいと思い、姫を説得いたしました」 #竹取物語意訳 20
2012-01-27 23:52:43