トーキョーＮ◎ＶＡのＳＳ

Hellbaby @Hellbaby

なんとなく思いついたのでＮ◎ＶＡのＳＳ投下

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私は物心ついた時から檻の中にいた。檻は白く、家具などは殆どない。食事だけが日々提供される。そんな環境で何年も暮らしていたのだ。

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私を世話する人々にはそれなりの理由があった。私の檻には常に人々が私を見るために集まっていた。皆、大枚を払って私を眺めているのだ。檻には監視カメラがあり、私を世話する人々が運営する組織の会員になれば無料でその映像が配信された。彼らは私達を飯の種にしていた、という訳だ。

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私達、と言ったのは、檻の中にいたのは私一人では無かったからだ。いたのは私と同じぐらいの年齢の少女だった。私たちを世話する人々は、コードネームで私たちを呼んでいたが、私たちは互いの事をその名では呼ばなかった。檻には二人しかいないし、互いに遊ぶうちに以心伝心で通じ合っていたからだ。

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私たちは遊びあい、やがて成長するにつれて愛し合い、痴態を演じるようにもなった。私達を観に来た人々はそれを見ると喜び、いつもより食事が豪華で多くなっていた。私たちは生きていくためにより痴態を演じるようになった。

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ある日、彼女が檻から出されることになった。数日の間孤独を味わっていたが、彼女は檻に戻された。私が安心していると彼女は抱きついて愛を求めてきた。私は不安を消すためにも彼女を抱いた時に違和感があるのに気付いた。彼女は義体化されていたのだ。恐らくは檻で生き続け、見世物であり続けるために

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もう彼女と遊ぶ事も愛することも嫌になった。機械人形と戯れて生き続けることに何の意味があるのだろう。そう思った時に、私も檻から出されることになった。連れていかれた場所は医務室で、どうやら伝染病が流行したので精密検査を受けるらしい。

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私は頭痛を感じると共に、急に頭が冴えていくのを感じた。医務室で人々が喋る言葉を把握する。「イクシード事件」「ヒルコウイルス」。どうやらヒルコウイルスによって私はヒルコとなり、その影響で脳細胞が活性化し、知能指数が上昇したらしい。

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私は世界の状況と自分の立場を把握した。そしてこのいまいましい檻から出る方法も判明した。人権擁護団体を利用して、立場を主張し、市民ＩＤを確保すればいいらしい。それならば、今なら４１通りは実践するための方法が浮かぶ。ただ、惜しむらくはどの方法を実践しても檻にいる彼女は救えないことだ。

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義体化した彼女を哀れに思ったが、ヒルコ化した私を世話をする人々がそのままにするとは思えない。私は自らの生命の危機を感じ、思いついた方法を実践することにした。

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─あれから数年が経った。私は市民ＩＤを獲得し、Ｃ-のランクを持つＮ◎ＶＡ市民となった。ヒルコ化した身体データをモニターさせることを条件に企業から生活資金も提供してもらえうようになった。生活には不安や不満はない。

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そして今日は大枚をはたいて、彼女の檻へ向かう事にした。とうとう私は見られる側から見る側に回ったのだ。

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何故今檻へ向かうのか？自分の過去へ復讐するためか？それとも彼女と檻に対してサヴダーデでも抱いているのか？自問自答しながら檻の前に来ると彼女はいた。

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彼女は相変わらずだった。義体の体を動かして、観客の前で痴態を演じている。それを見て観客は喜んでいる。

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彼女がタイヤに載って体を動かし、培養笹を齧っているいるのを見たら胸が苦しくなってきた。彼女が私を見つけ、昔と同じ声で呼んだとき、涙が溢れた。私はもうあそこには帰れない事と、体の痛み以外で泣くことを初めて知った。

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『観察記録』対象：ヒルコ。特徴：新宿インペリアルパークのパンダ。ヒルコ化したことにより知能指数が増大し、人権擁護団体「フリーダム」を通じて自らの人権を主張し、市民ＩＤ：Ｃ-を獲得。現在は千早グループの庇護下にある。文面はウェブに本人が書き込んだ日記データより抜粋。