海堂尊「極北ラプソディ」

翔DMWL @shoDMWL

一般の全国紙に対する興味は、完全に失われている。全国紙の報道する記事内容の大半のことは、破産宣告されたこの街では通用しない。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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情緒的なものを一切絡ませない世良のノーと、心情的に見てあげたいが結果的にノーと言わざるを得ない今中のノーの間には、搬送される患者から見ると全く違いはない。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「中性脂肪は消化器で吸収されエネルギー源になる。その値が高いのは、使う異常に取り入れているというだけのこと。値を下げるのは簡単で、油分の摂取量を減らしエネルギーを使う、つまり運動をしなさいということさ。薬なんて必要ないんだ」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「支払いをしない患者は、この病院には不要だ。病院は慈善団体ではない。レストランで食事をして、代金を払わなければ警察に突き出されるだろう？それと同じさ」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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時に被害者は、加害者よりも配慮に欠ける扱いを受ける。殺されたあげく、メディアの無神経な報道にさらされるなんて、遺族には耐えられないだろう。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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世良は赴任後半月で、市民病院に付着した前近代的な贅肉と無用な人員の削減を終えた。だがそのとき、この病院から今中が大切にしていた何ものかも、同時に奪い去ってしまった。それは何か。信頼と活気だ。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「ワクチン？そんな生易しいものではないですよ。私の存在は例えれば抗癌剤です。健康体にとっては猛毒。私がこの地に招聘された不幸を、極北市民はいずれ思い知るでしょう」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「そうでしょう？悪い空気の中で呼吸をしたら病気になるのは当たり前。だからまずは極北師の病気を治すところから始めないと。一見遠回りですけど、結局はこれが一番の早道なんです」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「僕の今の言葉は、テレビでは放映されないさ。そしてメディアの世界では、伝えられない言葉は言ったことにはならない」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「就任当初からお願いしていたことが半年してやっと実現ですか。この遅さが今日の極北師破綻の原因だということが、市役所執行部は未だにわかっていないようですね」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「地域医療を考える」と銘打っているが、医療器具業界の宣伝講演会だ。こういうところに出没し、未来を切り開くわけか。それは極北市民病院の惨状を改善するために必須なのだろう。だがそれは果たして医療なのか。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「女性にはあまりハードな残業をやらせられないし、すぐ結婚して妊娠するから困るんだ」古参の医局長がローテ表を見ながらため息まじりにつぶやいていたのを、思い出す。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「医局員を何より大切に思う、水沢教授のお人柄が表れていました。けれどもそうやって熱心に教えていらっしゃる根本の方針が、時代の要請とずれていたら、せっかくの薫陶も無駄にならないかと、ふと心配になったもので」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「雪見市の不幸は、財政状態は極北市とそんなに変わらないし、部分的に極北市より悪かったりするのに、病人と思われず、治療されていないことです」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「質問をするのなら、ご自分の所属と名前を名乗るのが礼儀、というものでしょう」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「我々が救急対応しないのは、もしも我々が対応した場合、ひょっとしたら急を要する患者への対応が遅れてしまうかもしれない、という可能性があるからです。できないものは最初から手を出さない。それが私どものポリシーです」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「なぜ北海道か。何かあったとき、助けてくれるのは近くの人たちだから。なぜ東京か。国の決定機関、霞ヶ関があるから。いつ何時、お役人の気が向いて極北に何か話がくるかもしれない。だけどその二カ所以外は意味がない」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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結局、何が正しくて何が間違っているのかは、あらゆる事象の前提が破壊されてしまった都市であるここ、極北市では常識で推し量ることはできないのだ。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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薄暗い階段をゆっくり上っていく。その壁には延々と有名人の色紙が飾られていた。「がんばって」「再建を心から祈っています」などという、ありきたりな言葉が並べられていた。たぶん、死にゆく街にかける言葉は、紋切り型にならざるを得ないのだろう。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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残ったのは、外に飛び出す気概のない窓際一族、現状に対する不満を胸に抱きながらも、それを爆発させることもできずに鬱々と過ごしていた不満分子、そして給料が半額になっても自分の価値はその程度で妥当だと納得している指示待ち族だった。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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田端保健所長は来年定年を迎えるため、やる気のなさが見え見えだ。ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「医師会が運営する夜間二次救急は完全に死に体です。彼らは委託費はしっかり受け取り、業務は市民病院と救急センターに押し付ける。今、僕たちが夜間二次救急に一日でも対応したらどうなるか。当番日以外も市民病院に連絡が来るでしょう。なので医師の増員が必須条件なのです」ー海堂尊「極北ラプソデ

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「極北市で医療を行う最低限の条件は、診療を受けたらお金を払うという常識を徹底的に遵守してもらうこと。こんな常識すら守られていない街は病んでいる、としか言いようがない。だからまず、街を治療するのが先決です」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「ならば仕方がないでしょう。我々にはどうしようもありません。極北市のお年寄りを殺し、見せしめにしようとしているのは霞ヶ関の高級官僚だ、というわけです」ー海堂尊「極北ラプソディ」

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「もちろんです。私は代案なき批判は嫌いですから」ー海堂尊「極北ラプソディ」