世良の深い絶望が伝わってきた。存在し続けることが復讐。復讐のために自らの存在を捧げること。世良の輪郭を深い孤独の影が縁取っている。なんという、苦難の人生なのだろう。だがそれも運命なのだろう、避けることができないという、ただその一点において。ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-05 21:21:39世良は唇を歪めて笑う。運命に抗うたったひとつの方法は、斜に構えて笑うことだと知っている、と言わんばかりの笑顔。ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-05 21:22:46「世良君は相変わらず性急だね。悲壮感のオーラに包まれているよ。それでは他人が助けてあげようという気持ちになりにくいだろうね」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-05 21:24:27「役場の人が力になってくれるようになったのは。たかだか10年前だ。私が何を言いたいか、わかるかな。世良君がここを去って、自分の右腕を得るまで10数年、ひたすら待ち続けた。君がうらやむ環境なんて、そんなもんだよ」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-05 21:26:14「日常に必要なものは、患者が差し入れてくれる。とれたての野菜、陸揚げされたばかりの新鮮な魚なんかの食材はもちろん、衣服や文房具までみんなサービスさ。お金を受け取ってくれないんだよ。この島ではお金は何の役にも立たないんだ」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-05 21:27:59若いパイロット。この人の操縦がこれからどれほどの人を運ぶのだろう。そんなパイロットの可能性を、こんなところで失ってはならない。ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-06 21:35:10「急性腹症ではどう対応すべきかな?」「…ためらわず、回復すべし」久世は笑顔になる。「ほら、世良君だって知っている。身体が知識を忘れていただけさ」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-06 21:37:04「僕は世界中を敵に回し、一人で戦う正義の騎士を気取っていました。そして僕は、どうにもならない現実に打ちのめされていた。だから、僕がどんなことをしたとしても、それはこの世界に対する報復であり、僕にはそうする権利がある、と無理矢理思い込もうとしていたんです」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-06 21:40:01「そんな世良君の判断に救われる命もある。世良君は世界を背負い、神様に喧嘩を売っている。世界は一人で背負うには重すぎるから、疲れてしまうんだ。でも、世良君が背負ってくれたことで救われた人が、どこかに必ずいる。だから疲れたらそのときは、休んでいい」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-06 21:41:53「長くなんてありません。たった18年、です。そしてわかったんです。速水先生の目には患者しか映っていない。そこに私の居場所はないんです」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-06 21:44:42「医療を救うには、医療を取り巻く空気を変えなければならない。特効薬は、市民の意識教育だ。医療を叩いて利益を得ようとする邪悪な意志から、無垢な市民と善良な医療を守らなければならない。そう思ってるんだよね」ー海堂尊「極北ラプソディ」
2012-02-06 21:46:28極北ラプソディ(海堂尊)読了。財政破綻した極北市の市民病院でメディアの嵐のような攻撃にさらされ孤軍奮闘する医師、世良。一人ぽっちで生きていく運命だと半ばあきらめの気持ちで突き進み心折れそうになる中、その姿をずっと見守ってくれていた存在に気づかされるのです。#mybooklist
2012-02-06 21:51:46