江川卓×落合博満対談(NTV『Going! Sports&News』より

落合前監督の采配の事実をもっと知りたい人にはお勧めです。
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江川:どういう感じなんですか、監督の仕事って?
落合:人間ってやりようによっては上手くもなるし悪くもなる。日々成長はあるけど、これを見られたっていう楽しみはあるし、それがまた下手になっていく子っていうのもいる。「この子、こういうことやるから下手になるんだよな」って。反面教師じゃないけれど、それを考えると人間って面白いな――ということは、別の角度から勉強させられた。そっちの方は楽しかった。
江川:監督をやっていて一番興味をもたれたことは、選手が変わっていくことを見ることだと。
落合:これは面白い。毎日見てるから。

江川:今年3位にいたときは、越せると思っていたのか?
落合:100%思っていた。
江川:どうして思うんですか。変ですよ。
落合:なんで? 8月一杯まではヤクルトでしょ、巨人でしょ、阪神、そこに広島が絡んでた。横浜はどうやっても無理だなっていうのはわかったから。広島はバリントンとジオを中4日で回してきたから、「これはどっかでへばるだろう」と。それにそんなに点数を取ることもなかった。巨人と阪神、いいことにヤクルトが突っ走っていることで、ある意味マスコミが洗脳しちゃった。「打順の組み合わせが悪い」とか「ローテーションが悪いとか」書いて、負けの原因を新聞で叩き始めた。そうなると巨人は慌てるだろうし、阪神もそうなる。叩かれないために絶対に早めに仕掛けてくるはずだよな。過去の例を見てもウチが勝つときは、競ってたり相手が上でも8月の前半から慌て始める傾向があるときは、大体ひっくり返してる。
江川:中日のことだけを考えているわけじゃなくて、セリーグ6球団を分析しながら野球をやっていたんですね?
落合:だと思います。それでヤクルトは10年勝ってない。あんなに早くトップに立っていてマスコミは「これだけ離してるんだから優勝だ優勝だ」って書く。絶対に浮かれてくるし、疲れる。ウチは9~10月にかけてヤクルトと名古屋で9試合残っている。9ゲーム離されていても、前後の試合をうまく戦っていけばこの9試合でなんとかなる。で、一番助かったのが上位を走っているチームが最終的に横浜とのゲームを残していたこと。ウチは1試合しかなかった。どの試合が一番イヤだったかといえば、オレは横浜とやるゲームが一番イヤだった。
江川:落とせないから?
落合:落とせないから。周りはチーム状況を考えて、「絶対ココには勝てるよな」って星勘定するでしょ? そんな甘いもんじゃない。オレらがやってて、まぁ普通に考えたら「横浜が(上位球団に)1個勝ってくれればそれで十分」って思っているところで、2つ勝ったり3つ勝ったりしてたでしょ。「これはやっぱり思いどおりにコトは運ぶんだな。横浜と試合を残さなくて良かったなぁ」ってずーっと思ってた。
江川:これは意外なハナシですね。
落合:強いものが必ず弱いものを倒すわけじゃない。弱いものっていうのは、周りがそう思うのであって、やるほうは大変。だから今回、ウチとやったソフトバンクは大変だったと思う。データは全て向こうが上でしょ? オレ、もっとマスコミが騒いでくれと思ってたもん。騒げば騒ぐほどウチにチャンスがあると思ってたもの。ウチのピッチャーにしても、いくら相手の打線が良いといったってそんなに点を取られることはない。ウチ何点とれるのかなと思ったら、7試合で9点。それで4勝3敗までいくんだから大したものだと思えば大したもの。
江川:今回のインタビューでは、落合さんの考えていることが良く出ている感じがしますね。
http://tsuzukiyuu.blogspot.com/2011/12/ntvgoing-sportsnews1.html