山本七平botまとめ／「八百長のある日本、八百長のないアメリカ」

山本七平bot @yamamoto7hei

26】いわば文化的中央による心理的統制、簡単にいえば天皇制がないのである。「荒っぽい」と感じたのは、この警察官の行動だけではなかった。～略～『ワシントン・ポスト』社へ立ち寄ろうとした時、ちょうど同社のストに出合った。サイモン編集長に会う約束だったのだが、ピケの為に入れない。

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27】ところがこのピケが一見実にだらしなく～略～ピケとは名目だけ、簡単に入れそうに見える。私は突破するつもりだったのだが、Ｎさんから「それはおやめになった方が良いと思います。アメリカ人は八百長が全然ない人種ですから……。

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28】日本なら”断固粉砕”の鉢巻きで気勢をあげていても、本当に粉砕される事はありませんが、アメリカ人は正当な法的権利を侵害されたと感じた時は、何をするかわかりませんから……」といわれた。私はその時ふと戦場の米兵を思い出した。

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29】彼らも実にデレっとしており、ついついそれを誤断する。これが非常に危ない。～略～「同じ事かな」と考えてやめた。やめてよかったのである。「スタッフの一人がピケを破って外に出ようとし撲られて相当なケガをした。～略～残念ながらお目にかかれない」と～略～電話があったのだから……。

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30】マナジリを決してテンションの極限にあるように見えても、「６０年安保」の例を持ち出すまでもなく、日本という国はどこかに八百長的合意がある国だ、だからそのつもりでアメリカで生活していると、とんだ事になる、とＮさんは言った。

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31】「アメリカは怖いと言いますけど日本の怖さとは違うんです。私はまだアメリカで”インネンをつけられた”という経験はありません。日本なら盛り場で怖いおニイさんから何かいわれたといった経験は誰でもあるでしょうが、どんなスゴ文句を並べたって、どっかで妥協がつくとお互いに思って（続

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32】続＞いるし、事実、妥協がつくんです。だがアメリカ人は、そうはいかないんですなあ。だから不意にやられたと錯覚する……。どうもこの点、日本の対米外交も対米世論も危なっかしく見えますなあ。繊維交渉のときも、日本側には、どこかに八百長のつもりがあったと思いますよ」

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33】結局、警察官～略～町のオニイさんまで共通する行き方は、アメリカそのものの基本的行き方でもあろう。相手がルールに違反して国境というピケを破って真珠湾に突入したと感じた瞬間、今までデレっとしていた様に見える人々が、八百長的妥協なき戦いへと、一斉に突っ走ってしまう。

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34】アメリカはこの点確かに怖い国だが、これを”護持”しないとアメリカ自身が成り立たなくなるのであろう。そしてその怖さは、Ｎさんの言う通り、「日本的な怖さ」とは別物である。だがそのアメリカ人が、逆にどこかで日本を恐れている（気味悪がっている？）ことは否定できない。

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35】『フォーリン・アフェアーズ』誌のバーンズ氏は「いま日米間には何の問題もありません。しかし相手が日本だと、われわれは問題があればあるで、なければないで神経質にならざるを得ません」と言った。

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36】同じような事は国務省インド担当のブラウン氏も言った。「アメリカとインドの関係は、どんな大問題が発生してもお互いに神経質にならないのですが――日本はネェー」と。

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37】結局、こちらの八百長的テンションを、向こうは本気で受けとめ、向こうの本物のテンションはこちらが八百長で受け止めるという妙な関係が常に存在するらしいのである。