マブリットキバさんが語る岩手のちょっと怖い話し　その5

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

「でも、おらとおっかあは喜んだんだ、こりゃあな、ついに山神様に会えたってな。でな、おっかあ偉く喜んでよ、持ってきた白米の握り飯ば木に供えてな、おらさ言うのよ。あんだ、これはきっとカミサマだべ、願掛けすっぺってな。」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

「んだもんだから、おらとおっかあはとにかく拝んだんだ。おらだぢは貧乏でいい、何を捧げてもいい、どうか子どもを授けてなんせ。その子どもば絶対にしあわせにすっから。こう頼んだのよ。んで帰ってきたんだげども、おっかあは偉く喜んでな。絶対に子どもが授かるんだってな」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

父親は話しながら泣いていた。鼻水をすすりながら笑って娘に話し続けた「んでな、そしたらどういうことか。やっぱりご利益だなぁ、お前を授かったんだ。おらもおっかあもおらいの母ちゃんも偉い喜んだんだ。これは授かりモノだ、宝物だってなぁ。」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

「確かにお前のおっかあはお前が産まれた後に亡くなったんだども、決して悲しい事じゃねえ。お前を何よりも大事にしていたし、これはきっと山神様、おそらく木花の咲耶姫さんのお導きなんだ。だってよ、山に入っても何処にもあの木はねえんだ。おらだちの願いを聞きに現れた授かりの木だったんだな」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

父親は一生懸命の笑顔で娘に語る「だがらな、お前はカミサマからの授かりものなんだ。おっかあとおらとカミサマがこの世にいでくれって望んだ宝物なんだ」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

「おらはな、お前がこの世で一番大事だし、なにより必ず幸せになるために産まれてきたんだ。おらがもっと働いて必ずそうしてけっからな。忘れてはなんねど、お前はカミサマからの授かり者なんだ。おっかあとおらとカミサマが守っているんだ。だからな、決して不幸な身の上じゃねえんだ」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

そうしたところに祖母が団子をこしらえてやってきた。滅多に話さない父親の優しさと涙、そして不思議な授かりの木。その日、娘さんは父親と一緒の布団で寝た。先にも後にもその時の父親のありがたさ、そして自分は愛され守られている事の安心感は決して忘れる事は無いと言っていた。

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

話が終わって、お婆さんはオレにお茶を出しながら笑顔で話す「どうですか？不思議なものでしょう。私はね、頑固で無骨だった父親の優しさとありがたさ、この世に望んで産んでくれた母親、そして願いを聞き届けた授かりの木にとても感謝しているんです。」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

お婆さんは続けて話す「だからひな祭りにはこうして、木に一杯の赤ちゃんが飾られる授かりの木の雛飾りをするんです。遠野物語にはならないでしょうけど、わたしにとってこれこそが本当の遠野物語なんですよ」

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

オレはそれに答える「この木、なんの木、気になる木ってハワイのオアフ島にあるんだよな、そんな感じ？あのＣＭは印象に残るよな」一緒にいた相棒から「最低の返し」と言われ本当に先に帰られてしまった時は焦った。

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

そしてオレは遠野銘菓の「明けがらす」と笹村精肉店の「塩ホルモン５００グラム」を買って意気揚々と一匹、山に帰ったのだ。

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

今回のひな祭りにまつわる話。長くなってすまないぞ。あまり不思議な話じゃないと言う人もいるかもしれないな。オレは鬼で親はいない。だから人の親子の情と言うものはよくはわからないんだが、何かこう、胸に残るのだ。

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

授かりの木は本当にあったのか？それはあんまり重要じゃないかもしれない。マブダチの中にも今日は家族と一緒にひな祭りをする人もいるかもしれないな。そうしたら自分が生まれた事に感謝して、両親や親戚と仲良くやってほしい。

用心棒のキバさん（四代目キバ） @maburitto_kiba

そして、今日１人で過ごす人はオレと一緒にモチでもガジガジかじろうぜ！マブダチ！