ジュニつばの日SS

ジュニつばの日SSまとめ
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ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

【三日前】「というわけで頼むぜ。バレンタインは譲ってやるから相子だろ?」「嫌だって言っても聞く気ないくせにねぇ…まあいいよ。お土産に明太子と辛子蓮根買って来て」高崎が五月蠅いから。そう言って昔馴染みはにやりと笑った。「なんだよ」「まあゆっくり欲求不満解消してきなよ」一言多いんだよ

2012-02-08 00:05:52
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

【二日前】「行くのはいいけど、大丈夫なのかい?」青い瞳がひたりとこちらを見据えて来る。以前に『君のやっている事は大分最低だよね』と半ば本気で言われたことを思い出した。「大丈夫だ」「何が」「九州上官に会いに行くって言うから」「誰に」「兄貴に」「ちっとも大丈夫じゃない!」怒鳴られた。

2012-02-08 00:17:34
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

【前日】「…あの、ジュニアさん」「頼みますね、山陽さん」目の前の整った顔が鬼でも見たかのように引き攣った。失礼な。「東海道ちゃん怒り狂うと思うの」「そうですね」「俺に死ねって言ってる?」「可愛い仔猫がじゃれるようなもんでしょうが」ほら卒倒する位嬉しい癖に。傷まみれになりやがれ。

2012-02-08 00:41:44
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

【朝】「そういう訳で九州行ってくるな」「っそ…?!」何を言われたかわからない、とまさに鳩が豆鉄砲をくらったような顔でぽかんとする兄。その隣では遠い目をした西の上官。二人ににこりと笑いかけて「それでは」と素早く離脱。閉じたドアの向こうの阿鼻叫喚は聞かなかったことにする。

2012-02-08 08:25:22
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

後方の嵐を無視して乗り込んださくらの東海とは異なる仕様を観察していてふと思い出す。「…連絡してないな」ついいつもの癖が、と携帯を取り出すも電波が。「あのED野郎が…」呪詛を吐き出しても後の祭り。不穏な空気を発する青年を快適なシートで包みながらさくらは駆けた。

2012-02-08 11:54:33
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

「邪魔する」ノックはしても返事は待たず開いたドアの向こう側に居たのは目的の人物と、それから。「おやどうした駄鳩。節分の豆でも食いすぎたか」なんとも言いがたい顔をしてこちらを見やるかつての妹特急。「ッ」「はいはい九州それ俺の決済がいる?ちょっとまってろよー」ぱっと奪われる書類。

2012-02-08 19:25:41
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

山陽はぎりぎりと歯軋りをする東海道の隣でペンを走らす。「はい」普段の倍以上の速さで完成した書類を確認する。「いつもこれならな」「五月蝿い!早く九州に帰れ!」癇癪球が爆発した様な罵倒。面白い、迎え撃とうと東海道を見ると「何だその顔は」思わず問いかけるほど、その顔は複雑怪奇だった。

2012-02-08 19:49:01
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

「とりあえず何も聞かずに九州戻って、な?」苦笑しながら山陽がそっと東海道を背中に隠す。「どういうこと、」だ、まで言い切る前に携帯の振動。取り出してさっと目を走らす。「お前の言いたい事は把握した。が、職務を放棄する気は無い」「…まあ言うと思ったよ」じゃあとっととお仕事済ませましょ。

2012-02-08 20:36:08
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

じゃあ行くわ、と東海道に告げる。「さっさと片付けろ」返った言葉の意外さに振り返るも、既に背中しか見えずにドアは閉まった。「明日は雨か」「何にだって変化はあるよ」意味深に山陽は笑う。若造が生意気を。「伝言だ」「…何」「へし折る、と」何を!と叫んで青くなる。ナニをだろうな、ご愁傷様。

2012-02-08 20:49:34
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

色々と諦めて降り立った博多駅でメールをした。非はこちらにあるので相手を責めるつもりは無い。きっとあれは自分の責務をきっちりと果たしてくるだろう。すっぽかされるという心配はどうしてかしていない。したこともない。そうさせてくれたのだと、随分前に気がついている。知っていた、ずっと。

2012-02-08 21:26:36
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

せっかくだからのんびりと彼の本拠地となった地を巡る。ご自慢のつばめお嬢さんにも乗って、可愛らしい少女にも会ってきた。ああ、と形容しがたい吐息が漏れた。この地で彼はこれほどに愛されているのだと。一歩、また一歩この地を踏みしめる度に感じる。ああ。感傷だとわかっていても吐息は止まない。

2012-02-08 22:20:09
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

胸が疼くままに任せていたら日が暮れる。気を取り直して頼まれた土産物でも買うかと物色していると携帯が震えた。『6時には帰る』それだけの簡潔な文章。こちらも簡潔に伝えたいことを間違いなく送る。返事はきっと無いだろうが気にしない。あっさりと浮き立つ心を笑って勧められた焼酎を手に取った。

2012-02-08 22:59:37
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

肌に馴染んだ大気が身を包む。駆ける喜びに身を震わせていた車体を撫でると、お疲れ様と逆に労わられた。ここで携帯を取り出すのは既に癖のようなものだ。新しいメールは無いというのに指先は受信箱を開く。車内でも数回見たそれ。『待っている』とたった一言。それでも迷うことなく、この両足は動く。

2012-02-08 23:17:22
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

「おかえり」声をかけても返事は無かった。ただ動かない表情がそれでも困惑しているのだとわかるのは、自分だからだと自惚れてもいいのだろうかと凭れていたドアから身を離す。「いつもは勝手に入っているくせに」「待っていると言っただろう?」だから。「どういうつもりだ」「待っていた、ずっと」

2012-02-08 23:27:12
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

待っていたなどと今まで聞いた事もない言葉をのうのうと話す。「まあ我慢がきかなかった事もあったがな」「貴様」蟀谷が引き攣ったのは気のせいではない。「俺もまだ青いということだ」「どの口が言う」図々しいにも程がある。吐き捨てるとそれもそうかと笑い、するりと猫のように立ち位置を変えた。

2012-02-08 23:40:48
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

今まで彼に遮られていたドアが視界に入る。「お行儀良く待っていたんだ。だから入れてくれないか」するりと指先が絡まる。僅かに緊張するのは接触が苦手だからなのだと既に知られて長いので隠すつもりもなかった。が、「頼む」そういわれて驚きに息を呑んだことについては、失態と言うほかなかった。

2012-02-08 23:46:14
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

息を呑んだ後、僅かに眉が顰められた。驚愕の後の鮮やかな後悔は彼の矜持から来るものだ。その矜持が、何ゆえであるか追及はしない。けれどそれが酷く好ましいことは事実で。「つばめ」酷く舌に馴染んだ名を呼ぶ。真っ直ぐに返る赤い視線を絡めつつ、再び求めて呼ぶ。「…九州」この声に応えるなら。

2012-02-08 23:53:19
ういろうプリン@5号車31・32番 @1228soul

赤い視線が緩やかに移り、滑らかにドアが開かれる。半身を内側に滑らせた九州は絡められた手を解くことなく、僅かに振り返ると「入れ」とだけ返す。ほんの二歩。それだけで内側に滑り込み、東海道本線は彼の唯一を抱き寄せて囁く。「おかえり」それに返された密やかな囁きには笑って額に口づけた。

2012-02-09 00:02:11