140文字描写企画・冬 【和風編】
概要
【描写企画:冬】同じお題写真を物書きさんにタグ込み140字で描写していただき違いを楽しもうという企画。お題は【和風編】【洋風編】それぞれ二種類(片方でも両方でもOK)【和風編】は10(土)0:00~23:59【洋風編】は11(日)0:00~23:59。タグはこちら #tn_by
2012-03-09 23:38:30【140字描写企画・冬】 http://t.co/WTW9QnYk お題写真その1「雪」です。このお題を使うときは文頭に①と入れてください。提供は八束さま@yatsukami #tn_by http://t.co/MQDzCjOr
2012-03-10 00:01:53①曇った硝子はひんやりと重たい。指先が結露で濡れるのも構わずに、窓を開けて深呼吸。鼻につんとくるような冷たさはもう感じられない。空は低く、屋根は白いが、植え込みの下には土の茶色が覗く。置き去りのボールは所在なさげに持ち主の帰りを待っている。春はもう、すぐそこだ。#tn_by
2012-03-10 01:24:41#tn_by #twnovel ① 寒さで目を覚ますと、庭に雪が積もっていて驚いた。薄暗さの中に、柔らかな白がほんのりと浮かび上がる。おしろいを塗られた木々と離れがなんだか寂しそうに見えて、私はそっとカーテンを閉めた。
2012-03-10 14:04:38#tn_by ① その日は凍てつくような寒さだった。青い薄暮の中で、今朝方に積もった雪は凍っている。しんと音を吸い込んだしじまを歩けば、ぱらぱらと蔵のひさしから氷の破片が落ちた。雪に覆われて、庭はしばしの静謐に包まれている。
2012-03-10 14:43:24①この前、古い民家の庭にボールを蹴り入れてしまった。ママに「取ってきなさい」と言われ渋々向かうと、まるで幽霊屋敷のような佇まい。外から恐る恐る覗き込んでボールがあるのは見つけたが、結局逃げ出してしまった。ボールの傍、巨大な目玉二つが睨んでいたから。 #tn_by #twnovel
2012-03-10 20:00:02①冬の早朝は静寂に満ちている。薄灰色がのっぺりと頭上を覆い、夜通しちらついた雪は枯葉の落ちた庭を一晩のうちに真白く包みこんでしまった。足跡ひとつない地面はあわい青を宿しほんのりと陰影を映しだしている。無温の太陽が昇れば、この小さな世界につややかなひかりが踊るだろう。 #tn_by
2012-03-10 21:31:20①カーテンを開いて覗いた風景は白一色だった。常緑樹も白を纏い、厳しい冬が過ぎ去るのをじっと待っている。しんと静まり返った庭先にぽつんと転がるサッカーボールは、雪溶けを待ちきれなかった子どもが置き忘れた物だろうか。人間も動物も植物も待ち侘びる春の気配はまだ遠い。 #tn_by
2012-03-10 22:54:48①いやに寒い。差し込む光が暗い。蔵の整理を始めてから、もう何時間経っただろう?身を縮こませたまま外に出ると、眼前が白に染まっていた。夜に入り掛けの空は暗い。ーーあのときは朝だった。暁の光の中、小さい足あとをつけて走り回った。埃まみれの重い車輪を抱え、黄昏を見つめる。 #tn_by
2012-03-10 23:36:31①雪の朝には、えいえん、なる生き物がすんでいる。それは黒松の葉、棕櫚の皮、褪せた軒の下、打ち捨てられた車輪、持ち主のおらぬ毬といったものの中にあおく息をひそめて棲んでおり、わたしはそやつをいとしゅう思うては、夜明ける前に、うつくしいもの、と名付け、瞼を閉じる。【冬】 #tn_by
2012-03-11 02:05:07【140字描写企画・冬】概要http://t.co/WTW9QnYk お題写真その2「枯葉」です。このお題を使うときは文頭に②と入れてください。10日23:59まで。提供は八束さま@yatsukami タグはこちら #tn_by http://t.co/k3Eov2Qk
2012-03-10 00:04:24②見下ろす崖の下には、すっかり見慣れた白い車。「本当にここでいいの?」隣で一緒に屈む妹の台詞に、私は黙って頷く。さよならは言わないと決めていた。只、この目にはしっかり収めなければと思ったのだ。街から去るあの人の姿を。これからの私の為、けじめの為に。 #twnovel #tn_by
2012-03-10 20:21:02②地面にしゃがみ込むと、積もった枯葉のにおいがより近くなった。肺を圧迫するほどだ。呼吸が少し苦しい。靴の下で無数の命の墓標が悲鳴を上げているからかもしれない、とちらと思う。ふと隣を見ると、彼女は真っ直ぐに前を見つめていた。虚空の向こう、薄暗い冬の曇天の果てを。 #tn_by
2012-03-10 23:50:11②一面の落ち葉が風に音を立てる。ふと視線を転じれば寒空の下、身を寄せ合って語る少女が二人。何を話しているのか、時折枯葉の囁きに混じる楽しげな笑い声。絶妙なそのハーモニーを聴くうち、若い彼女らと新たな命の元となる枯葉に、命を繋ぐという共通点があることに気付いた。 #tn_by
2012-03-10 23:53:37②枯れ葉が一面に敷き詰められた地面の上に、二人揃って腰を下ろす。むせぶような土の匂いだ。手慰みに指先で葉を拾い上げれば、すぐに掌の中で粉々になる。何度も何度も命の残骸を手の中で押し潰す。ふと視線を上げれば、呆れたように友達が自分を見ていた。 #tn_by
2012-03-10 23:55:35