TAKASHIMA Hidehiro さんによる東電と原子力損害賠償紛争審査会の批判
(20)このように審査会は,自主的避難による損害を確定するにあたり,客観的データを一切示さず,また,医学的判断をも示さないまま,”妊婦や子供さんは放射能を怖がってもしかたないから,12月末までは避難の賠償を認めてあげよう。”という空虚な判断を示しているだけなのです。
2012-03-15 12:42:34(21) もっと分かりやすく言えば,原子力損害賠償紛争審査会は,子供を連れたお母さんの必死の避難を,実態のない"風評被害"だと評価したのです。
2012-03-15 12:42:55(22)このように書くと,政府の一機関である審査会がこんないい加減な判断をする訳がないとお考えの方も多いと思います。中間指針追補はそれほど難解ではありませんので,ぜひ一読して下さい。私がウソをついていないことがお分かり頂けると思います。→http://t.co/lOuzxQ9y)
2012-03-15 12:43:48(23)では,なぜ審査会は,本来ならば一番必要な医学的判断を曖昧にしたまま,自主的避難の合理性を単なる「恐怖や不安」の問題としているのでしょうか。推測でしかありませんが,次の理由に基づくと思われます。
2012-03-15 12:44:07(24)この点を明確にすれば,自主的避難等対象区域に現在なお住民が居住していることの矛盾が露呈するからです。現に住民が居住しているにもかかわらず,医学的に避難が推奨される地域であることを認めれば,これに対する無策もまた明らかになり,人権無視等の非難が生じるでしょう。
2012-03-15 12:44:27(25)そこで,「恐怖や不安」が自主的避難の合理性を根拠づける理由だとせざるを得ないのだと考えられます。
2012-03-15 12:44:50(26)しかし,妊婦以外の成人が自主的避難等対象区域から避難することが医学的に適切かどうかは,地区によって異なるでしょうが,一般的には避難が望ましいとされていると思われます。控えめに見ても,医学的には決着がついていないと評価すべきでしょう。
2012-03-15 12:45:13(27)本来なら,医学的にみて避難に合理性があるか否かを明らかにしたうえ,少なくとも避難が医学的に合理的選択肢であると判断される地域の住民には,避難するか否かの判断を住民自身に委ね,その自主的判断の帰結として避難費用ないしこれに代わる費用を賠償として提供するのが適切でしょう。
2012-03-15 12:45:41(28)その際には,住民に対し,α線核種,β線核種,γ線核種の測定結果,及び継続的に居住する場合にこれらが全体として健康にどんな影響を与えうるのかの医学的見解(対立する有力な見解があればこれを含む),さらに避難する場合と滞在する場合の予想される賠償額がきちんと説明されるべきです。
2012-03-15 12:46:25(29)この私の理解を前提とすれば,追補において,この点に触れないまま,いわば逃げの態度がとられていることこそが,被害の実態を隠し,本来であれば合理的に認められるべき損害額を極端なまでに少なくしている原因であるといえます。
2012-03-15 12:46:44(30)その結果,福島県内においてすら避難の賠償を得られる者と得られない者とが分断され,住民同士の新たな対立の原因を産み出しています。まったく東電の思うツボです。実際に,福島県内ですら対立が生じていると指摘するブログもあります。→http://t.co/Mpazxm6U
2012-03-15 12:47:08(31)以上をまとめますと,審査会の追補における基本姿勢自体が,被害者の実質的救済を妨げている原因であるのみならず,新たな分断の原因をも作り出しています。追補の内容を詳細に検討しますと,残念ながらそう言わざるを得ません。
2012-03-15 12:47:23(32)日本最高の頭脳を集めた審査会がなぜこのような結論に至ってしまうのかを,今後,公開されている議事録で検証する必要があります。従来の議事録はこちら→http://t.co/BSVNH6Qb @anminteiさん,研究資料としても使えそうですよ。
2012-03-15 12:47:43(33)従来私は,中間指針やその追補が行政の一機関の見解に過ぎず法的拘束力を持たないこと,この指針を前提とした和解あっせんにはあまり期待できないことを折に触れてツイートしてきました。私のこれらの判断の裏には,上で述べたような構造的問題があるのです。
2012-03-15 12:48:03(34)さらに審査会は,現在,避難者に対する慰謝料の支給を今年8月末で打ち切る案をまとめつつあるとの報告がなされています。→http://t.co/9MZO2XB5
2012-03-15 12:48:14(35)他方,東電との和解を仲介している紛争解決センターは打ち切りに反対し,この打ち切り案が定められてしまえば,「将来、当センターにおいて、法律の趣旨に沿った適切な和解案を示せなくなることが危惧される。」と強い調子で批判しています。→http://t.co/RXIrHEu0
2012-03-15 12:49:02(36)紛争解決センターといういわば身内の団体から,このような強い批判が出されるのはかなり異常な状態です。この批判の存在自体,審査会の議論は現場の意見を反映していないことを示しています。
2012-03-15 12:49:17(37) 以上のことからすれば,もし将来,自主的避難等対象地域内で被曝による健康障害が多数報告されるに至れば,自主的避難の合理性を単に「恐怖や不安」に矮小化した審査会の姿勢は批判されることになるでしょう。
2012-03-15 12:49:29(38)しかしそれでは遅いのです。本当に被害者の救済を目指し,医学的判断を基礎とした避難費用や被曝防止費用の賠償が正面から認められるようにするには,学者がこの点を指摘するだけでは足りません。
2012-03-15 12:49:50(39)願わくば,医師の協力のもとで,弁護士会や地方公共団体が追補の不当性をアッピールしていただければと思いますし,私を含めて,SNSでこれをバックアップできればと考えております。惑わされず,分断されずに,被害者を支援していきましょう。
2012-03-15 12:50:05(40)被害者支援に向けた心強い取組みとして,3月16日19時から,岩上さん@iwakamiyasumiのIWJによる,第26回 原子力損害賠償紛争審査会中継があります。Ch4→ ( #iwakamiyasumi4 live at http://t.co/DBw9oKUl )
2012-03-15 12:53:06(42)被害者の救済と東電の法的責任の追及に当たって,従来の法律はことごとく適切に機能しませんでした。そしてこれに対して迅速に対処できなかったのは,政治家と,私を含めた法律家の責任です。適切な損害賠償の実現は,被害者救済の最後の砦なのです。
2012-03-15 12:53:48(41)このような取組みによって,現在の損害賠償の枠組みの不適切さを広く知ってもらうのは,非常に重要なことです。
2012-03-15 12:53:18(43)岩上さん@iwakamiyasumiも,このことを理解して審査会を中継されるのだと思います。
2012-03-15 12:54:16