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みちる @mcr376

「雨は嫌いなんです」彼はぽつりと呟いた。「昔を思い出すんですよ。…まあ、どこまで本当なのかわからない記憶ですけどね」俺は、不自然に明るく続ける彼の手を取り、「…まだ無理かもしんねえけどこれからは、」俺と一緒だからさ。囁いた言葉は彼の口内へと消えていった。＜雨：みちる＞ #同題ss

みちる @mcr376

「お前ほんっとに白いな」僕の膝を枕に寝転がっていた彼が、呟く。「人種の差ですよ」雑誌から視線を離さずにそう返すと、彼は手を取る。「ここなんて肌色っつか白だもんな。血管が青く透けて、」ちゅ、と小さなリップ音。「すぐ赤く残って跡付けやすい」＜手首：みちる＞ #同題ss

みちる @mcr376

「虎徹さんのここ、跡くっきり残ってますね」「ん、着けっぱなし、だから…、風呂と、ぁん、寝る時くらいしか、外さねえ…しっ」普段曝されてない皮膚は、傷一つなく初々しい。彼は、誘われるままに歯を立て、吸い、跡を残す。「んなとこ、いいからこっち…、して？」＜手首：みちる＞ #同題ss

みちる @mcr376

彼の眠りは、とても深い。一度寝てしまうとなかなか起きない。その癖起床時間になればパッと目覚め、その直後からさっさと行動できるのが謎だ。「バニーちゃんはほんと朝弱いよな」水の入ったグラスを僕に差し出しながら、彼は言う。「でも甘やかせるから、まあ…いっか」＜眠り：みちる＞ #同題ss

みちる @mcr376

彼の眠りは、とても浅かった。最近は不眠も中途覚醒もなくなってきて改善はされたようだが、逆に寝汚くなってしまったようだ。「…あと5、ふ…ん…」シーツを抱き込むようにして丸くなる。「きす、してくえたら…おきましゅ…」寝ボケて言えてないのも可愛いったら！＜眠り：みちる＞ #同題ss

みちる @mcr376

俺は、ローズたんの華奢な背中が好きだ。脚線美も生意気な唇もいいが、一番はあの背中だ。後ろから抱きしめて、守ってやりたい。…と思っていたのだが。「ここは危険よ！一般市民は下がって！」俺らの前で俺らを守るその背中は、紛れもなく守る側のヒーローの物だった。＜背中＞#同題ss

みちる @mcr376

汗の伝う褐色の肌。抽挿に合せて揺れるS字カーブ。反らした背中によって目の前に差し出された肩に、本能のまま噛みつく。「いっ、たぁ…！」無理矢理上半身を捻り涙目で睨まれたら、煽られることはあっても止められるわけがない。今度は突き出た肩甲骨に思い切り歯を立ててやった。＜背中＞#同題ss

みちる @mcr376

バニーちゃん。バニー。バーナビー。虎徹さんが僕を呼ぶ声がする。今でも僕の記憶がどこまで正しいのかはわからないし、これからも正解が得られる事はないだろう。だから不安になることもある。だけど、虎徹さんが虎徹さんの声で呼んでくれるから、僕はそれを標に前に進めるんだ。＜声＞#同題ssTB

みちる @mcr376

「こてつさん」甘ったるい砂糖菓子のような蕩けてぐずぐずの声で呼ばれるのは、とても気恥ずかしいけど嬉しい。あいつに合わせたように上擦った自分の声は、自分のとは思えないほど甘さで耳を塞ぎたくなる。だけどあいつの声も聞こえなくなるから、いつも我慢せざるを得ないのだ。＜声＞#同題ssTB

みちる @mcr376

「いい加減にしてください！全くおじさんは…」「虎徹さん、今日一緒に飲みに行きませんか？」小生意気におじさんと呼ぶ声も、蕩けそうな笑顔で虎徹さんと呼ぶ声も、全部お前だから嬉しいんだろうな。記憶操作されたまま終わらなくてよかったと、お前が俺を呼ぶ度そう思うよ。＜声＞#同題ssTB

みちる @mcr376

唯一無二で最高の相棒、ワイルドタイガー。彼と対等で彼に恥じないヒーローでありたいと願う。私生活でも歳は離れていても最高の友人である、はずだ。それなのにスーツの下の顔が思い出せない。そればかりか僕の名を呼ぶ声すら。僕は何と呼ばれていたのか？考えると頭痛がするんだ＜声＞#同題ssTB

みちる @mcr376

「何か慣れないんだよなあ」「何がです？」「アンダースーツ」「はい？」「落ち着かないっつか納まりが悪い？」「何の話ですか？」「ちんこ」「ちょっ、あんな全身タイツみたいなの着てたくせに…！」「それだから、前は下に1枚穿いて更にスーツの上からもう1枚穿いてたの！」＜全裸＞#同題ssTB

みちる @mcr376

「なあ、サンドイッチ買ってきたけど食う？」「あ、ありがとうございます」「あの店の、好きだったよな？」「覚えててくれたんですね、具も僕の好きなのだし。…何じっと見てんですか」「俺ね、お前が食べてんの見るの好きなの」「はぁ」「野良猫餌付けしてる気分」「えっ」＜食べる＞#同題ssTB

みちる @mcr376

倒れた両親。燃え広がる炎。無声映画のよう。繰り返される悪夢。自分の悲鳴で覚醒し跳ね起きる。「平気、か？」枕になってくれていた膝の持ち主が顔を覗き込んできた。「…大丈夫、です」虚勢を張る。「…悪夢はこのタイガーがワイルドに食べてやっから、もっかい寝ときな」＜食べる＞#同題ssTB

みちる @mcr376

いつも、不思議に思っているんです、けど。な、…にっ…？セックスでは、入れる方が入れられる方を食べるって、言いますけど、どう見てもこれ、食べられてるのは、僕ですよね。あ、っん、やめ、穴、なぞるな…っ！まあ、何でもいいんですが。僕は虎徹さんと、こうできれば。＜食べる＞#同題ssTB

みちる @mcr376

「バニーちゃん、お腹空いたー」「僕も空いてますけど、それよりあなたを抱き枕に寝てたい」「ええー、食べに行こうよお」「だって今日は揃って休みで、緊急出動もない」「これからあるかもしんないだろ」「そしたらレーションでも食えばいいんですよ」「横着よくないって！」＜食べる＞#同題ssTB

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気持ちよくないむしろ気持ち悪いので無心に天井のシミが何に見えるか考えていたら別のことを考える余裕なんてまだあるんだねって言われて余計に気持ち悪いことさせられてほんと早く家に帰りたい。あいつに食われちまってなくなっちゃえばもうこんなことしなくていいのかな。＜食べる＞#同題ssTB

みちる @mcr376

スカイハイさんではないけど僕も空を跳ぶ。飛ぶ、じゃなくて跳ぶ。自慢の脚力で地を蹴り背中のバーニアを吹かして、空を跳ねまわる。重力に任せて落下する感覚も嫌いじゃない。でも、着地体勢を整えている途中に目に入る僕を待つ相棒がいるから、やっぱり地上でいいって思うんだ。＜空＞#同題ssTB

みちる @mcr376

ランプの点灯する手術室の前で待つこの時間だけは絶対に慣れない。彼は頭より体が先走るから、たまにこういうことになる。それをフォローするのも僕の役目だったのに。あの時、何故彼を独りにした？自分を守る対象に勘定しないなんてよく知ってるだろう！ああ、どうか無事で。＜走る＞#同題ssTB

みちる @mcr376

少しくすんだ金色が視界の端でゆらゆら揺れている。ふわふわのカールも一緒に揺れてまるでひよこみたいだと思った。バニーちゃん、眠いならベッドで寝なさい。やです。眠かったら見てもわかんないだろ。隣で可愛いひよこが船漕いでたら俺だって映画の内容なんて頭に入らないって！＜金＞#同題ssTB

みちる @mcr376

ヒーロー事業を維持し続けるためには、巨額の金が必要だ。うちほどの大企業だってスポンサーから資金を集める必要があるわけで、そんなことくらい理解しているけど。「いいねえ、金髪のアポロンが痴態を晒してるってのは」ヒーローが枕営業なんて滑稽で、もう笑いしか出ませんよ。＜金＞#同題ssTB

みちる @mcr376

芋虫みたいな指先で触られて鳥肌が立つ。気持ち悪い。吐き気がする。「タイガー君もこの方が嬉しいだろう？」は？何言ってんの？あいつと同じ香水だってお前が付けたらゴミ溜めの臭いだ。でもこの場で一番最低のクズは、こんな豚共に媚びて股開いてあんあん言ってるこの俺だよな。＜金＞#同題ssTB

みちる @mcr376

「バーナビー殿、先輩・後輩のよしみで介錯を頼むでござるううう！」悲痛な叫び声がトレセンにこだました。「ちょっ、先輩、何やって」「拙者もう生きていけない…切腹するしか！だから介錯ううう！」「ジャパニーズ・ドゲザまでして無関係の僕を巻き込まないでくださいよ！」＜土下座＞#同題ssTB

みちる @mcr376

唇合わせて舌絡めて唾液交換して。ぽってりとした形のいい唇をぺろりと舐める。額をくっつけて視線だけ交わして。もう一度キスしようとした所でお互い止めてまた見つめ合った。目配せしたらかけてた眼鏡を外してくれる。睦事にゃしゃべんなくても成立する会話があんだよな。＜沈黙＞#同題ssTB

みちる @mcr376

「あ、バニー、ちょっとそこのコンビニ寄って」「まだ何か買うんですか、さっき酒もつまみも買ったじゃないですか」「違うって、もうゴムないだろ」「ちょっ、そんな…」「えっ、だって使うだろ？それとも…しないの？」「…します、けど…」「どんなのがいい？薄いやつ？」＜コンビニ＞#同題ssTB