- yumecra_mepo
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少年が闇を継承してから幾月、冬を迎えた頃。教師も生徒も、正体の見えない不穏なものをその少年から感じ始めていた。いつの間にか広がる腫れ物扱い。教室は暖炉で暖かい筈なのに、酷く、空気が冷える。「…寒い」ぽつりと呟いた言葉は誰にも拾われること無く。凍りついた結晶は、床に落ち脆く砕けた。
2015-01-17 02:43:03【闇の魔導師駅】へヨウコソ。次は【魔導少女と対峙駅】デス。汽車でも、馬車でも、お好きな『運命線』へお乗り換えくだサイ。ああ、行き先の『宿命駅』の変更は出来まセン。イキカタは自分で選ぶことが出来マス。終点【死駅】まで行くと、また最初から出発デス。今度こそ、良い旅になるといいデスネ。
2015-01-17 02:16:28盲目の幼女の唯一つの楽しみは、鐘の音を聴くことだった。「どうかその歯車を」秘宝だと思い手に入れたそれを、元にあったであろう位置に嵌め込むと、美しく荘厳な音の振動が時計塔を突き抜けた。成程、旅路の気紛れは無駄足では無かったか。動かぬ骨と化した小さな手を、緩んだ輪郭に触れさせた。
2014-12-27 03:19:47黄色い鳥の行方を誰か知りませんか。それは綺麗な色彩の羽根で、光を受けると黄金に輝くのです。黄色い鳥の行方を誰か知りませんか。柔らかな桃色の髪が、風にふわりと軽く靡くのです。黄色い鳥の行方を誰か知りませんか。その歌声は脳を揺さぶり、僕の心の中から一向に飛び去ってはくれないのです。
2014-12-27 02:56:44闇が静寂などと誰が言ったか。途方もなく広く深い空間に苦悶の呻き声が木霊し、孤独が身を引きずるように這い回っている。重く濁った塊の、忙しない視線が其処かしこを走り回っている。惨めに生を求めて彷徨う腕を、透き通る剣で払い落とす音が耳に付く。少年は膝を抱え、ただひたすらに受け容れた。
2014-12-26 07:56:11「夜風はお身体に障りますよ」「はっは、まだそんな歳では無いのだが」「…そんな歳まで、貴方のお側に居られるでしょうか」「私に見合う女になれるか?」「少なくともあの娘を大事に思う気持ちは一緒ですから、私たちは気が合うと思いますわ?」笑う貴方を見返すの。今は差し伸べられた手に口づけを。
2014-12-23 07:43:48「む、無念だ…」「やったあ!え〜とカレー屋は制覇したし…」「い、いい加減に…何で毎回奢らにゃならんのだ!」「魔導師の命に等しい魔力を毎度理不尽に寄越せと言うのは誰?それにこんなのぼくの魔力の対価に全然見合わないよ。ぼかぁ、優しいんだ。所詮この世は弱肉強食。そして今夜は焼肉定食!」
2014-11-10 10:23:52「いずれ肉体が果てた頃、魂を迎えに行ってやろう」「あは、ごめん!多分それはきっともうアルルじゃない。シェゾは魂の片割れだから、その時僕らは一つになるんだ。丸ごと迎え入れてくれるなら、受けてあげても良いけど?」大笑いをした。流石私の選んだ娘。行くが良い。惜しむこの手をすり抜けて。
2014-11-02 23:49:17鏡のある衣装部屋が何やら賑やかだ。「私はポニーテールがいいと思うぞ!」「そうですか…?わたくしは三つ編みの方が好きですわ」微笑ましく思い覗いてみると、立っているのは我が主人。梳かれているのは緑色の髪。普通は、逆だろう。拍子抜けをしながらも、自分に髪が無いことを少し恨んだのだった。
2014-11-02 23:12:25「…アルル、起きろ!早くしないと学校に遅刻するが、俺はもう空間転移で送らんぞ」「ん〜わかったよ…おとうさん…」「おと…!」「あ…」寝ぼけて呟いた言葉に、明らかにショックを受けてしまった彼。年齢差的にはひいおじいちゃんが正しいんじゃない、という心の声は、胸にしまっておくことにした。
2014-11-02 07:30:56どこまで行っても赤の世界。追いかけてもなかなか捕まらないのは、一面の紅葉が飛び跳ねるキミを隠すから。夕焼けに染まってゆく空。優雅に泳ぐ赤蜻蛉。乾いた葉の音に、ちらりと覗くイチョウ色の小さな相棒をようやく見つけた。お腹が空いたねカーくん。カラスが鳴くからそろそろおうちへ帰ろうか。
2014-10-23 17:58:38@328_doc 早く。早く逃げなければならないのに、視界が遮られる。その赤い壁が自分の血だと気づくのに数秒。遅れて激しい痛みが全身を襲い、たまらず悲鳴をあげた。それまで無表情で追い詰めてきた少年は、楽しそうに口を釣り上げる。これは遊びだ。獣の仔が、遊びながら狩りを覚えている。
2014-10-21 00:33:51@nodobatoke 静寂に包まれた湖の水流が乱れる時、底に溜まった泥が巻き上げられる。それは深く沈んでいた古びた剣の周りを覆い、やがて集まり男の姿となった。重く淀んだ泥は上へと足掻くように手を伸ばし、男は光を求めるように水面を仰ぐ。暫くすると男の姿は崩れ、再び只の泥となった。
2014-10-16 21:46:41@sara_no4 道端で出会った。只それだけなのに、何故か涙が溢れ出る。突然の事に困惑するシェゾは、不器用に頬を拭ってくれた。「もう、どこにも行かないから…泣くな」お互いが、自分の行動に疑問を感じている。なのにどうして、こんなに嬉しいんだろう。どうしてこんなに、切ないんだろう。
2014-10-12 22:46:18@chi_jojopuyo 当てもなく闇を彷徨っていると、少女が泣いていた。「暗いのが、こわいの」ならばと抱き上げ慣れた光の呪文を唱える。「…お外で見るよりとっても、きれい!」その言葉に、何故かゆらゆらと淡い光が滲む。「また、会いに来るね」そう呟いた少女は、光の粒と共に霧散した。
2014-10-07 15:00:45