ぷよ魔ついのべ

140字以内SSS。主にシェアル寄り。
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まめぽ @yumecra_mepo

いつもの風景に、いつもの場所。腰を掛けて行き交う人波を眺めていると、足元の繊細な細工を施された指輪が手に取られた。「気に入ったかい?」そう声を掛けると、少女は柔く微笑んだ。「幾らだ」横にいた男がさっさと支払いを済ませる。目を丸くした少女は、その背中を嬉しそうに追い駆けていった。

2012-04-24 01:38:09
まめぽ @yumecra_mepo

氷の割れ目から覗く緑の芽生え。ふと、顔を綻ばせるあいつの顔が浮かぶ。今までは足下の花でさえ気にも止めることすら無かったのに。すっかり感化されてしまったものだ、と苦笑しながら一人ごちる。雪と共に心まで融かしてゆく、春の訪れ。

2012-04-06 21:35:49
まめぽ @yumecra_mepo

食事のついでに始まった魔導酒の呑み比べ。酔いに任せて滑り出た言葉は、嘘に混ぜた真実。「実はボクねぇ、キミが好きなんだ」何か言われたらからかったのだと切り返すつもりだった。「その言葉、そのまま受け取っていいんだな?」彼が含み笑いをしながら指した時計の針は、とうに0時を過ぎていた。

2012-04-02 02:43:22
まめぽ @yumecra_mepo

近くを通りかかったなんて嘘。本当は来るのを待ってた。勝負が面倒なんて嘘。食事に誘う口実ができるから。誰でも良かったなんていうのも嘘。キミと過ごせる時間がすごく嬉しい。いくつもの予防線を張り、安全な所を渡るボク。今日はいくらでも嘘を吐いても良い1日。いつもより積極的になれる1日。

2012-04-01 02:37:21
まめぽ @yumecra_mepo

似ていたのは、私と彼を取り巻く孤独。違っていたのは、互いの視線の先に有るもの。水の中から焦がれた闇は、何時も光を追い求めていた。体を鱗で覆われた私は人間にも泡にもなれぬ悲しい運命。これ以上熱を感じないよう、これ以上傷つかないよう、零れ落ちる滴に深く身を沈めた。

2012-03-25 02:15:06
まめぽ @yumecra_mepo

煌々と輝く銀盤は、いとも簡単に足元をすくう。「そんな風に地面を蹴るから転ぶんだ」なんて余裕の笑みで先を行く彼が腹立たしい。寒さでかじかんだ手をさすっていると、差し出されたのは大きな掌。体はまだ痛いけれど。鼻はまだ赤いけれど。そんなのどうでもよくなるくらい、その手は温かったんだ。

2012-01-23 22:49:27
まめぽ @yumecra_mepo

あの方の花嫁になる為の最大条件、「魔導力」。私にはカケラも素質が無い。恋する資格が無いと言われたようで、悔しかった。でも、私には力がある。何より、誰にも負けない想いがある。無い物ねだりではなく、自分の持つ最大の力を、魅力を、磨き上げる。揺るぐものか。私は私自身を認めてもらう為に。

2012-01-12 14:04:26
まめぽ @yumecra_mepo

昔から神秘的なものに惹かれてしまう。魔導。洞窟。遺跡。秘宝。それらはボクを捉えて離さない、甘美な誘惑。だからかな。キミみたいな何を考えているのか解らないヤツは、隅々まで知りたくなってしまう。ボクとは全く違う存在。興味は尽きない。隠されると暴きたくなるのが、探求者ってものでしょう?

2012-01-09 23:05:24
まめぽ @yumecra_mepo

湖から掬いとった透明な水に、満月が浮かぶ。「捕まえた」そう無邪気に笑う少女の瞳は、反射する光を受けいっそう金の色彩を増す。子供染みた発想だと呆れながらもその光景に目を奪われて。促されるまま覗き込んだ少女の手のひらの中に、映り込んだのは自分の顔。少女に捕らわれたのは月か、それとも。

2012-01-09 03:53:50
まめぽ @yumecra_mepo

全ての音が寝静まった夜。遠くで汽笛が鳴り響いている。唯一の道標は、月明かりが照らす線路だけ。足下から伸びる鉛色の道は水平線の果てまで続いている。路銀が尽きたなんて理由で歩くのはもう慣れた。進む手段は何だっていい。キミと他愛の無い話をしながら、隣を歩くこの時間が。堪らなく好きなんだ

2011-12-31 02:36:43
まめぽ @yumecra_mepo

幾度も戦ってきた相手が構成する魔導の流れ、威力、距離。発動の瞬間すら手に取るように分かる。その感覚は共闘でも発揮され、最大の好敵手は最高のパートナーへと変わる。言葉は交わさず目配せ一つで「阿吽(あ、うん)」の呼吸。決して交わらぬ光と闇は、決して離れぬ背中合わせの二人の形。

2011-12-28 23:43:15
まめぽ @yumecra_mepo

薬学だとか生物実験だとか、専門的な話などサッパリ分からない。でも金髪の魔女と銀髪の闇の魔導師が、彼女の店先で意見を交わす姿が楽しそうに見えたから。彼が普段見せない顔をしていたから。ボクは思わず走り出した。胸に渦巻く気持ちと、自分に不似合いな分厚い本を抱えて。

2011-12-28 02:10:51
まめぽ @yumecra_mepo

魔王の城で行われた異国の神の聖誕祭。その帰り道らしく両腕に沢山の箱や袋を抱えた少女は、「おすそ分け」と一輪のクリスマス・ローズを差し出す。素直に受け取ったのは、それが他とは明らかに別に包まれていたから。花の意味を知ってか知らずか、赤い服を来た少女は満足げに笑った。

2011-12-26 03:39:23
まめぽ @yumecra_mepo

魔導学校の長い試験期間が終わって、ボクは浮かれていた。「ボクがいなくて寂しかったでしょ?」久し振りに遭遇した彼をからかう。「まぁな。お前がいないとつまらん」「へっ…?」「じゃあな」残ったのは言葉だけ。やっと勉強から解放された筈のボクは、また頭を悩ませることになってしまったんだ。

2011-12-21 22:28:36
まめぽ @yumecra_mepo

冷めかけた紅茶に角砂糖を4つ、いや5つ落とす。全てが完全に溶けたあと、ようやくカップに手が伸ばされた。「っ甘え!…アルル、お前な」「放置されたモノの恨みだよ!」本に負けた可哀想な紅茶とボク。冷たい仕打ちには甘い制裁を。だからキミも責任取って、とびきり甘い埋め合わせをしてよね?

2011-12-11 23:18:45
まめぽ @yumecra_mepo

闇夜の中で一層輝くその姿を例えるなら、誰もが「月」と言うだろう。周りを取り巻く星達はもはや引き立て役でしかない。華やかなる月光は人を惹き付け惑わせる。僕が「太陽」と呼ばれるならば、他の星達が際立つよう、一つに重なりその光を隠してしまおう。月の視線を浴びるのは、僕一人で良いのだから

2011-12-11 01:05:41
まめぽ @yumecra_mepo

「見てシェゾ。ボクの方が小さいよ」「当たり前だ」縦ではなく横に並ぶ、大きさの違う軌跡。「足跡だけ見ると、コイビトみたいだね」「……阿呆か」彼の頬を染めるのは、夕焼けのせいであって欲しい。共に歩く二人を遠くから見つめる金髪の魔女は、その足跡を箒でかき消すことしか出来なかった。

2011-12-10 00:22:33
まめぽ @yumecra_mepo

暗闇に独り佇むルルーの肩が震えている。足元には私への手紙が添えられた赤い薔薇。だが私は別の少女に花を渡していた。それを見たのだろうか、彼女は声を押し殺して泣いていた。今まで一度も涙を見たことは無かった。己の弱さを私にさえ見せないその気高さに、初めて彼女を心から美しいと思った。

2011-12-09 00:08:12
まめぽ @yumecra_mepo

「どうしてキミがあんな酷いこと言われなきゃいけないんだ」涙を浮かべる金の瞳は、まだ無垢で幼い。「闇は忌み嫌われるものだ」「でも!」光の少女と視線が交わる。「闇に灯る明かりが、一番綺麗だよ…」「……」好きだ、と言われた気がした。華奢な体を抱き寄せると、少女は赤い顔を隠すように俯いた

2011-12-08 00:54:22
まめぽ @yumecra_mepo

いつからだろう。名前だけで呼ばれるようになったのは。いつからだろう。その声に胸が弾むようになったのは。「アルル」。自分の名前が特別な響きを持つ。キミの言葉はまるで呪文、果ては特別な魔導?認めない。ボクがキミに惹かれているなんて、絶対に認めてやらない!

2011-12-06 22:03:29
まめぽ @yumecra_mepo

雨は止みかけている。この程度なら、さほど濡れずに帰れるだろう。「行かないの?」「…魔導書を濡らせたくないだけだ。お前こそ帰ればいいだろう」「今動いたら、カーくんが起きちゃうもん」素直じゃないのはお互い様。不器用なボク達を雨から守っていた木は、可笑しそうにその葉を揺らした。

2011-12-05 23:39:40
まめぽ @yumecra_mepo

巨大な牙が少女の喉元に向かうのを見た瞬間、既に体は走り出していた。何故。自身への問い掛けは、剣の薙ぐ音と化物の断末魔に掻き消された。「何故」――助けたの?同じ問いを少女の金の瞳が投げかける。…解らない。答える代わりに、もう二度と動かなくなった化物の牙に剣を突き立て粉々に砕いた。

2011-12-04 22:33:41
まめぽ @yumecra_mepo

真白い雪に埋(うず)もれれば、髪が銀に輝く気がして。澄んだ空を見つめれば、瞳が碧に染まる気がして。鋭い氷に触れれば、刃の冷たさを感じる気がして。少しだけ君に近づく、愛しい冬。

2011-12-04 01:55:58
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