ぷよ魔ついのべ

140字以内SSS。主にシェアル寄り。
5
前へ 1 ・・ 7 8 次へ
ソラマメ @soramame_sss

僕達には、超えてはいけない線がある。舞台や時代が変わっても、与えられた役以上の事はしてはならない。敵。獲物。好敵手。味方。望まれた始まりから、望まれた終わりまで。何度も何度も手を伸ばし、やっと手が触れる。瞬間、何かが切れる音がした。遠退く記憶にーーまた、元通りの音。

2013-12-07 01:32:27
ソラマメ @soramame_sss

「今回の情報はこんな所だな」狭い店内にしわがれた声が響く。眼鏡を下ろした魔物の老人は、青年から硬貨を受け取った。「あと掘り出しもんの装飾品があってな。お前さんにはちと、小さいが」嫌な笑い方だ。これだから昔馴染みは厄介だ。もうあいつを連れて来ないと決心し、青年はそれを懐にしまった。

2013-10-27 00:12:11
ソラマメ @soramame_sss

「月にはさ、うさぎが住んでいるんだって」「そんな訳が無いだろう」「はぁ。君はロマンってやつを知らないの?」「御伽噺など信じる意味は無いからな。」「月がキレイですね」「やっと俺の物になる気になったか。」「…君のそういうとこ嫌いだ」

2013-09-19 21:53:19
ソラマメ @soramame_sss

いつもみたいに、終わらせようとしただけだ。降り頻る雨の中、呆然と立ち尽くす。水溜りに横たわる君。首から広がってゆく赤い波紋。思考は止まっているのに、君は動かないのに、水滴を弾く肩当ての金属音が、時間の流れを冷たく奏でている。ああ。君の体温は、雨に流れたまま二度と戻らないんだ。

2013-08-30 22:15:25
まめぽ @yumecra_mepo

君がいなくても生きていけるし、依存する気なんて更々ない。ただ君が側にいれば、僕の人生はもっと色付いて楽しくなるんだ。理由なんてそれでいい。大層な肩書きだろうが世界の法則だろうが僕の前にはただの無意味な文字に成り下がる。それでも足踏みするのなら、僕が君を手にするけど覚悟はいいかな?

2013-04-18 23:34:00
まめぽ @yumecra_mepo

そいつは両手に酒瓶を持ってやってきた。いきなり猪口を差し出したかと思うと「飲め」と言う。「春になった」「変態が出てくるね」などと好き勝手に喋っては瓶を空ける。「でも今日は、変態の誕生に…乾杯」少し染まった手を見てそういえばそんな日だったなと、込み上げる何かを酒と一緒に飲み下した。

2013-03-16 22:28:22
まめぽ @yumecra_mepo

全身に重い衝撃と痛みが走る。魔力も尽き、もはやこの強大な敵に立ち向かう術は無い。闇の剣で切り裂いた次元の向こうへ二人を逃がす。それで限界だった。血を失いすぎた足はもう動かない。穴が閉じる瞬間、あいつの泣き顔が見えた。自分の名を呼ばれる最期も悪くないと、迫り来る光に目を閉じた。

2013-03-06 00:15:12
まめぽ @yumecra_mepo

「ふははは!さすが魔界の貴公子。魔物から人間の女の子たちにまで大量のチョコをもらってしまったのだ。」「…用が無いなら行くぞ」「待て待て!お前は何個もらったんだ?ん?」「何個って…1個だが」「1個wwお前にあげた心優しい女の子は誰だ?ww」「アルル」「……私はもらってない…だと…」

2013-02-14 14:08:54
まめぽ @yumecra_mepo

最初は軽く当てるだけの、ちょっとした悪戯のつもりだったんだ。そしたら向こうもムキになっちゃって、最後には本気の雪合戦!疲れ果てた頃には二人とも雪まみれでぐちゃぐちゃで。もうおかしくなっちゃって、心から笑い合った。莫迦みたいだね。そんなことで彼を好きだって気づいたんだ。

2012-12-28 00:42:08
まめぽ @yumecra_mepo

朝陽に目を開けると真上には悪趣味な魔王の城の天井。昨夜の「お祝い」にこぎつけた連続ぷよ勝負に飲めや歌えのお祭り騒ぎのせいで、頭が割れるように痛い。同じように呻き転がる人間や魔物たちの中には見覚えのある銀の髪。誰も起きていないのを確認し、今日だけ、とこっそりその黒衣に顔を埋めた。

2012-12-25 08:06:53
まめぽ @yumecra_mepo

プレゼントが欲しくば奪い取れ――突如課せられた問答無用のぷよ勝負。記憶に懐かしい塔を上りながら、馴染みの魔物たちから熱烈な歓迎を受ける。数多の戦利品を抱え、たどり着いたは最後の階段。立ち塞がった変態な彼と、居丈高な彼女からの戴き物も忘れずに。さあ、残るはサンタ。いざ頂上へ!

2012-12-24 23:42:47
まめぽ @yumecra_mepo

爆発呪文で吹き飛ばされ、家に戻ってきた時には日が暮れていた。苛々としながらノブに手をかける。罵声の一つでも浴びせてやろうと勢いよくドアを開けた。「アル…!」不覚にも腰を抜かしてしまった。部屋の中からドラゴンと化したアルルが睨む。本物より手強いと感じた俺は、闇の魔導師失格だろうか。

2012-12-14 21:52:41
まめぽ @yumecra_mepo

しんしん。小さな傘に降り積もる雪の音だけが、二人の世界を包んでいる。普段より高い位置にある傘の内側で舞い上がる白い息を見つめた時、少女は人の体の温かさを知った。時折青年の右肩に積もった雪を少女が払う度、「そこまで」の距離を延ばして歩く度、傘の雪は淡く溶けていった。

2012-12-05 00:26:25
まめぽ @yumecra_mepo

平行線は交わることない。いつも通り戦いをして。いつも通り傷を癒して。いつも通り悔しがる彼の側に膝をついて笑って。でも、手が触れてしまった。見上げると目が合ってしまった。息がかかるほど近くにいて。引かれる腕すら熱を帯びて。角度を変えた直線と唇は、血の味と共に交わった。

2012-12-04 21:05:27
まめぽ @yumecra_mepo

「寒い」「…」「寒い!あー寒い!」「だーっうるせえ!」「寒いなら火を炊けばいいだろうが」「だってもう燃やせるものがないんだもの」「…なら、こっちに来い」「その魔導書燃やしていいの?」「ばっ!いいから来い」「(こ、これってもしかして…)」「ほれ」「何これ?」「芋」「は?」「焼き芋」

2012-12-04 13:24:00
まめぽ @yumecra_mepo

いつも見ていたから気づいてしまった。お祭騒ぎの中のふと酷く寂し気な顔に。永遠とも思える年月を重ねた貴方は、どれだけ多くの変化をこうして独りで見送ってきたのだろう。“今”を惜しむように佇む背中に寄り添えたら。貴方が私を救ってくれたように、貴方を孤独から救いたいと願う夜も更けてゆく。

2012-11-29 02:12:23
まめぽ @yumecra_mepo

鼻歌なんて雨が降るんじゃないか、と耳を傾けてみる。よく聴いてみるとそれはいつもボクが歌っている曲だった。無意識だったのだろう、ハッとこちらに気づいた彼は決まりの悪い表情をして顔を反らせた。癖を共有する程長い時を一緒に過ごして、改めてボクは今この人を、とても愛しいと思うんだ。

2012-11-24 01:36:40
まめぽ @yumecra_mepo

「―あの娘なら、今頃魔物の餌だろうよ」怒りが衝動となって突き上げる。お人好しの少女は余所者を嫌うこの村に騙されたのだろう。他人なら聞き流すところだが、自分の所有物に手を出されて赦しはしない。その後誰もいなくなった村を不思議がる少女に告げた。この村に“ヒト”は住んでいなかった、と。

2012-11-19 22:58:08
まめぽ @yumecra_mepo

「美味い」なんて珍しく褒めるから、まあ、また作ってあげても良いかなって思って来たのに。キミは水辺の“トモダチ”と、よりによってボクと同じカレーを食べてた。結局、ご飯も魔力も誰でもいいんじゃないか。一人で舞い上がって馬鹿みたいだ。余ってしまった二人分のカレーは、少ししょっぱかった。

2012-10-17 22:26:35
まめぽ @yumecra_mepo

“魔導師殺し”と名高い銘酒の杯を傾け、顔色一つ変わらないとは面白く無い。生意気な客に「樽を呑み干せばタダ」と賭けを申し出た所一蹴されたが、半ば意地で「出来なければ女をもらう」と脅した瞬間、男の目付きが変わった。結果樽どころか秘蔵の酒々まで空。カウンターに伏したのは自分の方だった。

2012-09-05 22:56:51
まめぽ @yumecra_mepo

キミを怒らせるのは、罵る為ではなく、自分を律する為。キミの言葉の意味を勘違いをしてはならない。高まる鼓動に気づかれてはならない。期待させないで。それが言えないから、ボクは何度だって言ってやる。「このヘンタイ!」

2012-08-31 14:52:30
まめぽ @yumecra_mepo

破れた袖の上から包帯代わりに巻き付けたバンダナが、赤黒く染まってゆく。駆け寄ってきた少女は、傷の中心に手を添え癒しの呪文を唱え始めた。朦朧とした意識では、それを払い退ける術はない。敵を救うなどどういう訳だと問う。「キミは迷惑だけど、嫌いじゃない」と笑う少女を、甘いと力無く咎めた。

2012-07-14 13:08:26
まめぽ @yumecra_mepo

「もし自分が織姫だったらどうする?」「1年なんて待たずに、箒で空を飛んで会いに行きますわ」「私は天の川を泳ぎます」「ミノに橋を作らせるわ」「ボクは…じゅげむでぶっ飛ばしちゃうかな、天帝を」「「「……」」」

2012-07-08 00:14:18
まめぽ @yumecra_mepo

美味しいカレーの作り方。クミン、ターメリック、コリアンダー。ナツメグ、サフラン、黒胡椒。隠し味にはももも酒少々。ルーを多めに盛り付けて。銀のスプーン、冷たいお冷。向かいの席に、闇の魔導師。

2012-05-23 01:01:23
まめぽ @yumecra_mepo

闇の中で燃え盛る黒い塊は、確かに人の形をしていた。鼻をつんざく様な異臭が漂う。魔物の時とは違うそれの恐ろしさに、思わず彼の服の袖を握りしめた。「愚かな人間の末路だ」そう呟いた彼は、炎の向こうに何を見ていたのだろうか。ただ揺らめく火影に照らされた横顔だけが、僕の脳裏に焼き付いた。

2012-05-16 09:53:00
前へ 1 ・・ 7 8 次へ