藍童話集 

街に伝わる伝承や歴史が元にした童話を集めた藍童話集です。 愛、合、逢、相、哀、藍・・・。 あなたの i はそこにありますか。
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原 沙良葉 @harasaraha

只今はらが連載してる #藍童話 シリーズは「街」の歴史や伝承を元にした童話集となっています。もしもお話に使いたいなんてことが(万が一)ありましたら連絡無しでどうぞお好きにお使い下さいませー。 #空想の街

2012-04-20 14:23:14
原 沙良葉 @harasaraha

あるところに海と山に囲まれた街がありました。その街には賢い王様と美しい女王様と幸福な住民たちが住んでいました。何もかもに満足していた彼らでしたがたった一つだけ憂えることがありました。王様と女王様にはまだお子がいなかったのです。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 08:23:04
原 沙良葉 @harasaraha

女王様はその美しいしろい肌に涙をこぼしながら毎晩お祈りしていました。「どうか私にお子をお授け下さいませ」 ある春の夜のことちかちかっと☆が瞬き、女王様は不思議な声を聞きました。「もし私の願いを何でも一つだけ叶えるのならおまえの願いを叶えてやろう」 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 08:26:03
原 沙良葉 @harasaraha

「あなたは神様でしょうか」「さあ分からない。でもお前は子供が欲しいのだろう」「ええとても」「ならば云えばいい。願いを叶えると云えばいい」「あなたの願いを叶えます。どうかわたくしにお子を授けてくださいな」女王様が言った途端に☆は瞬くのを止めました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 08:28:41
原 沙良葉 @harasaraha

ところがその声の主は神様どころか森に住む偏屈な魔女だったのです。そんなことも知らずに女王様はそのことを王様に報告しお子を授かれると喜びました。賢い王様は少し不安ではありましたがそれでも女王様に微笑み返しました。そしてとうとうお姫様が生まれたのです。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 08:32:46
原 沙良葉 @harasaraha

お姫様は太陽を切り取ったような金の髪にきらきら光る青い目のとても可愛らしい女の子でしたので、王様と女王様、住人たちはたちまちお姫様に夢中になりました。王様はしばらく声の主が気にかかっていましたが声は現れず、時が過ぎるうちにやがて忘れてしまいました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 10:01:51
原 沙良葉 @harasaraha

完成したばかりの時計塔の下で騒いでいた人々は魔女の登場に静まり返りました。皆、魔女が意地が悪くて捻くれてることを知っていたのです。魔女は言いました。「願いを叶えてもらいにきた」あの声が魔女のものだったことに気が付いて、女王様は手で顔を覆いました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 10:26:19
原 沙良葉 @harasaraha

そうしてお姫様は時計塔の中に住むことになったのでした。魔女はお姫様に呪いをかけ、時が止まるまで誰もがお姫様を思い出せないようにしました。からくり仕掛けに囲まれて、お姫様は誰からも忘れられたまま生きていました。たった一人で、生きていました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 10:31:41
原 沙良葉 @harasaraha

幾年かが過ぎ、街へ一人の旅人がやってきました。彼は少々考えなしなところがありましたが好奇心旺盛で正義感に溢れていました。観光を楽しんだ後、感心して時計塔を見上げた彼はふと時計塔に扉が付いていることに気が付きました。(これは探検しない訳にはいくまい) #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 10:39:09
原 沙良葉 @harasaraha

「だあれ?」時計塔の上部の小部屋にたどり着いた旅人が目にしたのは、とても美しいお姫様の姿でした。8年も外に出てないせいでお姫様の肌はいよいよ白く金の髪は床を覆うほどに長く伸びていました。「旅人です」「何しに来たの?」顔を歪ませてお姫様は言いました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 10:43:43
原 沙良葉 @harasaraha

「私はお姫様」「どうしてお姫様がこんなところに?」「悪い魔女に閉じ込められてしまったの」そう言ってお姫様はふいと旅人から顔をそらしてしまいました。「呪いでみんな私を忘れてしまった。あなたも早く何処かへ行って。どうせ忘れてしまうのだから」 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 10:45:51
原 沙良葉 @harasaraha

ところが旅人の方はもうすっかりお姫様に心を奪われておりました。「どうすればあなたの呪いを解くことが出来るでしょう?」旅人は跪いてお姫様に尋ねました。「出来やしないわ」投げやりにお姫様は答えました。「時が止まるまで私はここに居なきゃならない」 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 10:55:04
原 沙良葉 @harasaraha

「時が止まるまで」「お父様も学者も妖術使いも皆試したけど無理だったわ」だからどうか放っておいてちょうだいな。小さな声でお姫様が言いました。小さな涙がドレスの上を滑りました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 11:01:21
原 沙良葉 @harasaraha

ふむ、と旅人は考え込みましたがそれは長くは続きませんでした。にっこり笑って旅人は言いました。「それでは僕が呪いを解いて差し上げましょう。そうしたら一緒に街に遊びに行きませんか」「本当に?」「ええ」そこで初めて旅人はお姫様の笑顔を目にしたのでした。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 11:04:41
原 沙良葉 @harasaraha

それでは下へ降りていてください、と旅人はお姫様に言いからくりへと向き直りました。お姫様の足音が遠ざかるのを確認して、旅人は荷物の中から鉄の棒を取り出しました。そして思い切り、からくりをぶん叩きました。この街の”時”を旅人は止めるつもりだったのです。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 15:19:58
原 沙良葉 @harasaraha

旅人は何度もからくりを打ちすえ、とうとう時計は止まってしまいました。街中に響いていた秒針の音が止みました。と同時に、下からお姫様の歓声が聞こえてきました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 15:29:53
原 沙良葉 @harasaraha

塔を降りた旅人にお姫様は微笑みました。旅人もすっかり嬉しくなって微笑み返しました。そこへ異変を知った住人たちが駆けつけてきました。幸福でいっぱいのお姫様は叫びました。「みんな!呪いが解けたの!彼が解いてくれたの!」住人は答えました。「お前は誰だ!」 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 15:34:40
原 沙良葉 @harasaraha

訳が分からないまま、お姫様は怒り狂った住人たちに引き倒されました。何故?呪いは解けたはずなのに?旅人は魔女がまだ生きていることを忘れていたのです。呪いを解いたことに気が付いた魔女が黙っている筈がないのでした。旅人はお姫様の手を取ると走りだしました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 15:41:15
原 沙良葉 @harasaraha

やがて森の入り口で二人は追い詰められました。ぎらぎら目を光らせた住人たちは魔女に操られているのに違いありません。囲まれながらお姫様はさっと辺りを見回しました。住人に引き倒され殴られ蹴られながら森の一点を指さしました。「魔女があそこに、」 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 15:45:42
原 沙良葉 @harasaraha

旅人もそちらを向きました。彼はまだ手に鉄の棒を握っていました。お姫様の声はもう聞こえません。旅人は最期の力を振り絞って鉄の棒を投げました。棒はびゅうと音を立てて飛び、  魔女の胸に突き刺さりました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 15:47:53
原 沙良葉 @harasaraha

はっ、と住人たちは我に返りました。一体どうしてここにいるのか分からないという表情で辺りを見渡して、やがて自分たちの前の三つの骸に気が付きました。鉄の棒を胸に突き立てて絶命した魔女と、手をつないだまま倒れ伏す旅人とお姫様の姿がそこにありました。 #空想の街 #藍童話 #時計姫

2012-04-20 15:51:28
チーズトースト @_urt

花は咲いたか十五にならず絶えた椿の姫の胸 *都々逸 #時計姫 #藍童話 #青い椿 さすが時計塔の街だけあって、この街には、それにまつわる話がいっぱいだ。少女は病院のベッドで、母が買ってきた藍童話集(http://t.co/8Ra62VcZ)を胸に抱き、溜め息をつく。 #空想の街

2012-04-21 02:25:04
原 沙良葉 @harasaraha

北区を走っている少女がいた。朱いワンピイスを翻して石造りの通りを少女は走る。ながいながい坂道に差し掛かった時、つ、と少女の腕から抱えていた林檎が落ちた。アッと小さく声が漏れ、林檎は坂を転がり落ちていく。 #空想の街 #藍童話 #坂をおちる

2012-04-21 08:59:21
原 沙良葉 @harasaraha

ながいながい緩やかな坂を林檎はおちる。くるくるくるくると回りながらおちる。石に傷つき皮がところどころ剥ける。それでも林檎は止まるすべを持たないから落ちるしかない。ながいながい坂を林檎が落ち切ったのは夜になってからだった。 #空想の街 #藍童話 #坂をおちる

2012-04-21 09:01:02
原 沙良葉 @harasaraha

母の仕事を手伝う少女は毎日その場所を通る。仕事場と家とをつなぐのはその道しかない。椿の花を両手いっぱいに抱えて、少女がその坂に再び通りかかったのは林檎を落としてから三日後のことだった。 #空想の街 #藍童話 #坂をおちる

2012-04-21 09:02:45