神楽山洋子と僕

和伊啓太 @waikeita

「はい、タップリ入れときましたよ」とネバは瓶を紙袋に入れて返す。小さな箱も入れて。それから男の子の耳元にそつと囁き告げる。「巣蜜も一緒に入れました。スプーンなどで２人で食べてみてください」 @to_rakei #空想の街　#神楽山洋子の休日　#ルグッグ蜂蜜の巣箱

原 沙良葉 @harasaraha

驚いて見返すと青年はにっこりと笑った。ちょっとだけ会釈して踵をを返す。握った手を振り回す彼女は気づかなかったらしい。確かに、蜂の巣を食べるなんて珍しいことは喜びそうだ。初対面の人間に見抜かれた彼女に笑った。　@waikeita #空想の街　#神楽山洋子の休日　#ルグッグ蜂蜜の巣箱

原 沙良葉 @harasaraha

「風鈴欲しいわ」「風鈴なんてあるかなあ」「鉄製のやつ」「ますますないと思うけど」時計ころりんをつまんで彼女はむうと唸った。「目的意識さえあればどんな事象も見つけられ、あっ」途切れたのは少女とぶつかったからである。道に芍薬が転がった。　#空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

ハコ @amenohakoniwa

屋台をちらりちらりと見て、矢張り、人混みは苦手だ。帰り道でも花火は見えるだろうし。くるりと踵を返したとき、「…あっ。」「あっあっ済みません！」鮮やかに翻る橙色のコートの女性とぶつかる。けれど顔を見る間もなく、人混みに紛れてしまった。　#空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

原 沙良葉 @harasaraha

「綺麗ね」「そうだね」春の淡い色の空と海に、実際花火はよく映えた。握った右手に力が込められる。と思ったらいきなり彼女が目の前に立ち塞がった。「え、ちょ花火、」「今日、」いつものように目を覗き込んで「とても楽しかった」「・・・うん」「ありがとう」　#空想の街　#神楽山洋子の休日

@keitoura1123

東の海からの花火打ち上げがはじまっています。20:45頃に、スペシャルな花火があがるらしいです。(窓口:佐々木類) #時計塔フェスタ #空想の街

原 沙良葉 @harasaraha

触れたのは、一瞬だった。彼女の向こう側で響いた一際大きな音と周囲のざわめき。「スペシャルなやつ見逃したね」そういうと彼女は仁王立ちのまま片眉を上げた。「花火は来年も見れるわ」「男前だなあ」くすりと笑うと彼女も小首を傾げて笑った。繋いだ手が、温かい。　#空想の街　#神楽山洋子の休日

@keitoura1123

みなさま、空をうめつくしておりますのは、水風船屋からあふれたぶくぶく風船であることを確認いたしました。危険なものではありません。足元が暗くなっておりますが、お帰りの方はお気をつけください。(窓口:佐々木類) #時計塔フェスタ #空想の街

原 沙良葉 @harasaraha

「・・・なにあれ」「・・・」空を埋め尽くす風船という異様な光景に咄嗟に言葉など出るはずがない。なんだ、あれ。「ぷっ」突然隣の彼女が吹き出して僕は我に返る。「ふっふふふっあはは、」笑いながら彼女は僕の腕を強く抱き締めた。「だから私この街が好きよ！」　#空想の街　#神楽山洋子の休日

原 沙良葉 @harasaraha

「色々欲張って食べすぎるからだろ」「分かってる」僕が口に運ぶ時計ころりんを彼女は睨み付けた。出店も少なくなってきていて、あれだけいた人ももう半分以下だ。「ん」上がった声に隣を見るとふらふらある出店に立ち寄るところだった。「可愛い」　#空想の街　#神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird

しづく @siduku_xxx

ふぅ、とためいきひとつ。視界のはしにorangeをみました。ふたりぐみのオキャクサマ。「いらっしゃませ」にっこり、しようとしてみる。 #神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird #時計塔フェスタ #空想の街

原 沙良葉 @harasaraha

そこはどうやら雑貨屋であるらしかった。外国の方だろうか、売り子の少女が愛想よく微笑む。「いらっしゃいませ」「どうも」会釈した僕を尻目に、彼女はストラップをつまんだ姿勢のままいつもの様に少女の目を覗き込む。「あなた留学生さん？」　#空想の街　#神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird

しづく @siduku_xxx

商品を選びはじめるふたりは、こいびとでしょうか。「あなた留学生さん？ 」ストラップを選んでいらしたおんなのひとが急にと目をのぞきこむので、びっくりしました。「ぁっ…と、ええ」どうしてわかったのでしょうか。 #神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird #時計塔フェスタ #空想の街

原 沙良葉 @harasaraha

「ふふ、やっぱり」「いや何も答えてないだろ」「私は分かるの」彼女は酷く幸福そうに微笑んで少女を見つめたままストラップを摘まみ上げた。「この街はいい街」その笑顔に僕は「どうか楽しんで」不覚にも泣きたい気分になった。「これ二つ下さい」　#空想の街　#神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird

しづく @siduku_xxx

なんだかすごくあかるく、おんなのひとはやっぱり、と声をあげました。ここはいい街、と彼女が微笑んだとたん、カレシははっとしたような顔をなさいました。その後、ストラップをもとめた彼女にお店の名刺を渡しました。 #神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird #時計塔フェスタ #空想の街

しづく @siduku_xxx

なんとなくこのおふたりは、ずっといっしょにいらっしゃるんだろうな、とおもいました。またきてほしい、と言葉にはだせないけど。 #神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird #時計塔フェスタ #空想の街 http://t.co/z4GI5Y50

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原 沙良葉 @harasaraha

商品とお店の名刺を受け取った彼女は嬉しそうに二度瞬き、少女に一度だけ手を振って歩き始めた。僕を一度も見なかったのはきっと僕があの瞬間に息を飲んだのに気が付いたからだろう。最後に会釈をして後ろから駆け寄った僕も、何も言えなかった。　#空想の街　#神楽山洋子の休日　#鳥雑貨bird

原 沙良葉 @harasaraha

駅へ向かいながらなんとなく気まずい空気を引きずっていたら、ふと時計ころりんを頬張る少女が目に入った。「あ」声を漏らすと同時に彼女が振り返る。「どうしたの」「あの子」「え？あ」夕方ぶつかった少女だった。　@rippouhakoniwa #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

ハコ @amenohakoniwa

「あ。」聞き覚えのあるaの発音にハコは路地を振り返った。誰。知らない二人連れ。私は耳は良いのだけれど顔は全く覚えられないのだと言うか時計ころりん口一杯に頬張って振り返るな私の馬鹿んぐんぐ「あ…橙色のひとだ…。」　@to_rakei #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

原 沙良葉 @harasaraha

ぶつかってすぐに人混みで見えなくなった少女のことを気にしていた彼女はぱっと顔を明るくした。どちらかというとお人好しなのだけど「私のこと分かるかなさっきはごめんねあの」詰め寄るのは止めろ、と裾を掴んだ。　@rippouhakoniwa #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

ハコ @amenohakoniwa

まさか。先程、人混みでぶつかってしまった方、だ、あ、ああ「ももも申し訳ございませんでしたーっ！」と三段跳びからのスライディング土下座。「お詫びにこの時計ころりんをば！もしくは…硝子の材料ですがこの芍薬でご勘弁を！」@to_rakei #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

ハコ @amenohakoniwa

「あれ、一輪足りない…。」いつの間に、落としたのだろうか。　@to_rakei #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

原 沙良葉 @harasaraha

と。止める間もなく土下座をかましてきた少女に僕と彼女の動きが止まった。どこから見てもか弱そうな感じの子なのに予想外すぎる。芍薬を見ておろおろするのは何処か小動物的で「く、」悪いけどこれは、笑う。　@rippouhakoniwa #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

ハコ @amenohakoniwa

「あ、あの…？(わ、笑っていらっしゃる…お一方は堪え…きれてない！お二人とも笑っていらっしゃるー！何故っ？許されているの私？！どっち？)」右手にカステラの袋、左手に芍薬の花二輪を持ち、地べたに正座して瞬きをした。　@to_rakei #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋

原 沙良葉 @harasaraha

ぱちぱち瞬く少女は事態を飲みこめてないらしい。いや、笑うなんて失礼と分かってるけど。くすくすと笑いながら彼女が口を開いた。「こちらこそ悪いと思っていたから。これあなたのでしょう」芍薬を一本取り出した。　@rippouhakoniwa #空想の街　#神楽山洋子の休日　#地下の硝子屋