ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/04/22~23

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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千原こはぎ @kohagi_tw

明け方のキッチンでくぅとなるお腹を撫でつつ冷蔵庫を開ける。咄嗟に(あ、食べちゃダメだ)と頭の中の自分が呟く。(いいんだよ)もう一人の自分。そうだ、もういいんだ。あの人のために我慢するのは昨日が最後。習慣って怖い。まだ当分あの人のものだった自分が捨てられそうにない。#twnovel

2012-04-22 00:26:24
加瀬ナカレ→藤野ゆくえ @sayonara8989

「もう四時だよ」僕がそう言うと、彼女はまぶたをこすりながら囁く。「四時ってどっち? 午前? 午後?」僕は答える。「四時は四時だよ」彼女はまぶたがとれそうなほどこすったけれど、また眠ってしまった。四時を指したまま壊れて動かない時計が、壁に張りついて僕らを見ていた。 #twnovel

2012-04-22 04:12:34
紺屋淳之介 @Jun_nosukeKoya

遅く起きた休日、今朝もトーストとコーヒーの簡単な朝食だった。一服してから家を出た時、無意識に微笑んでいるのに気がついた。風はまだ涼しいけれど、空はすっかり初夏の青。買い物に行くのは今度にしよう。僕は、心に浮かんだ明るい緑色の景色を探すため、車のエンジンをかけた。 #twnovel

2012-04-22 11:21:58
とおる7th @windcreator

地球を持ち上げてみたくなった。上下ひっくり返したデジカメを彼女が構えると、勢いをつけて逆立ちする、つもりが、勢い余ってそのまま前回り。「ちゃんと止まりなさいよ」楽しそうに呆れ顏で覗いてくる彼女の向こう、曇り空の向こう側から夏が静かに近づいて来ている。「もう一回」 #twnovel

2012-04-22 13:39:59
@tapotapo85

何にも面白くない国には面白い事が何にもない。とこらがこの国が貧しいのかといえば違う。他国よりも豊かで栄えている。幸せそうな人々は笑顔で言う。「全くこの国には何にも面白い事がない」そして訪れた旅人は驚いた顔する。「こんなに面白い事で溢れている国はない」 #創作都市 #twnovel

2012-04-22 14:25:32
すわぞ @suwazo

#twnovel 生まれたばかりの小さな神様は、別宇宙の死にかけた古い神様から宇宙船を一機、託されました。宇宙船には少しの生き物と種と卵が冷凍保存されていました。古い神様のボロボロのノートをたよりに、小さな神様は一つの星を用意し、水と空気を作り、宇宙船を不時着させます。そして。

2012-04-22 16:28:14
N.T.Works/凪司工房@介護生活中 @nagi_tter

#twnovel 今日子さんは外に出る。「外酷い嵐だよ?」「いいの」「濡れるよ?」「いいの」「飛ばされるよ?」「いいの」「そんなに昨夜のドラマが録画されてなかったのが悲しかったの?」「違うの」「なら何?」「わがまま言いたい気分なの」「あ、そう」と僕は座る。「だから止めてよ、私を」

2012-04-22 16:30:55
雪月 @setugetufuka

それはすっかり錆びて、もう動けなくなっていた。この街のガイドとして作られ、道案内や歴史の紹介をしていたロボット。自由に訪れることは出来ないが、道案内で図書館に行くのが好きだった。人間が去って数世紀。それは「図書館はどこ?」と声がかかるのを、今もずっと待っている。 #twnovel

2012-04-22 16:35:14
雨音 @candypeal

猫はふいに忘れた。忘れたことが何かも忘れてしまった。それがとてつもなく悲しくて泣いた。忘れてしまったことを思い出すにはどうしたらいいのか。自動販売機の神様に聞いたら、それも全部忘れなさいなとコーラをくれた。神様はすっかり忘れてる。猫はコーラなんて飲めないのに。 #twnovel

2012-04-22 18:15:08
モギイ @fluffymoggie

#twnovel 皇帝は次に現れた巨大なアイスクリームサンデーの基礎をスプーンで崩し始めた。甘いモノを見ると挑まずにはいられないらしい。当分は私が面倒をみるしかないようだ。今、仕事を辞めるのはまずいな。滅多に見かけないとはいえ、あの人と同じビルで働くのは気が進まないのだけど。

2012-04-22 19:45:31
夢名 七志 @mumei7c

「あの話聞いた」深刻そうな顔で同僚が問いかける。出処が不明な噂。「あの話ってホントかな」心配そうな表情で友が聞いてくる。誰が話したか解らない噂。元を辿ろうとしても、聞いた本人さえ曖昧な噂が増えた。しだいに多くなっているのだろう。数も増えたのだろう。噂の一人歩き。 #twnovel

2012-04-22 20:02:12
すわぞ @suwazo

#twnovel 長い長い旅の末、椅子に座った一人の男の前にたどり着いた。「ようこそ。私が世界の果てだよ」と男は言う。男の後ろには背中合わせで同じ形の椅子が並んでおり、そこに「やあ、私が世界の始まりだよ」同じ顔をした男が座っていた。それは、自分が長い旅に出る直前に見た男だった。

2012-04-22 20:15:28
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 春風を分けて、龍族の娘が駆けてゆく。食材でいっぱいの袋を笑顔で運ぶ若妻に、そんな季節かと村人が目を細める。「ただいま!」寝室をのぞくと夫はまだ眠っている。彼女は料理にとりかかった。長い眠りを匂いで覚まし、空腹を満たしてもらうため。彼は蛇族。愛があれば種族なんて。

2012-04-22 22:08:58
七歩 @naholograph

ひつじ雲の群れが空を覆う。もう幾日も動かない。呼ばれた彼女、ひつじ雲から毛糸を紡ぐ。するする紡ぐとひつじは消えた。夜に追われてまた明日。疲れすぎたかなかなか眠れず彼女はぼんやり数えだす。ひつじが一匹ひつじが二匹。眠った彼女を抜け出たひつじは空へと登って雲となる。#twnovel

2012-04-22 22:19:27
黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel 若手俳優のドロン・ドロンはその見事なドロンぶりからロンドンドロンオリンピック日本代表に選ばれるが選手村に着いた途端早くもドロンしようとするので関係者が宿舎に監禁し暴行し何とか留まらせたが大会が始まる頃には歩くこともままならない状態だったため散々な結果に終わった。

2012-04-22 22:58:45
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 球根にお湯をかけると元の姿に戻るんだよ、と少女がやってきて言った。チューリップかい、ときくと少女の代わりに傍らの猫が目を細めた。お遊びに付き合うつもりで、お湯をトポトポ。花でも咲くのかなと思ったら、球根はだんだんと膨れて、目鼻と口ができて、ぼくの生首へと戻った。

2012-04-22 22:59:03
onai shigeo @onaishigeo

#twnovel その国では傘を差すのが最も恥ずかしいことだった。やがて傘売りが見えない傘を持って現れた。「売れるわけない」市民が口々に忠告する。やがて傘も差さずに濡れていない者が続出。「誰だって一度は恥ずかしい事してみたいのさ」次に男は見えないドレスを売り出した。男が殺到した。

2012-04-23 00:03:50
17+1 @17plus1

「幽霊が複数いる場合の数え方を教えてください」国語の時間であった。「兎の幽霊の場合は」「烏賊の幽霊の場合は」「箪笥の幽霊の場合は」立て続けに、それぞれ違う方向から。「類人猿の幽霊は」「人魚姫の幽霊は」「ゾンビの幽霊は」本当に困ってるんです、と三人の声がそろった。 #twnovel

2012-04-23 00:18:51
17+1 @17plus1

『鶴の幽霊と亀の幽霊がいる.』算数の時間であった。『頭の数:250』『足の数:0』チョークにはアルコールがしみこませてある。削れる音がして、やや遅れて字が現れた。『まず,幽霊がすべて鶴であるとする.』先生、それでは亀が浮かばれません。たまらず誰かが大声で叫んだ。 #twnovel

2012-04-23 00:19:35
黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel 運転がしは人々が落とした運をせっせと集めて丸めて転がします。ころころころころ転がします。どこまでも転がして、どこまでも大きくします。けれどいつも自分がその運を使おうとした途端、悪い人に奪われてしまいます。それでも運転がしはまた一から運を集めて転がし始めるのです。

2012-04-23 00:43:39
layback @laybacks

小さなおっさんになってからというもの苦労が絶えない。どのくらい小さいかというと身長約15センチ。鳩より小さい。寝床は公園のベンチの下だった。朝食の時間だ。散歩に来た爺さんがパン屑を投げる。おれは必死に飛びつく。鳩たちとの熾烈な争いの末ようやくひとかけ手に入れる。 #twnovel

2012-04-23 00:47:52
ぼろいねこ讃 @nekoboro

まるい石を蹴り上げたら泥がはねて雲まで汚した。その雲の向こうに消えてった石は落ちてはこなかった。それで廻りはじめた。いい距離を見つけたんだろう、自分が最もきれいに見えるところ、わたしが休みなく歩いて十年かかる。石にとっちゃ、十年くらい何だというだろうけど。#twnovel

2012-04-23 01:14:51
T&T @Sayok_7

カウンセラーが優しく語りかけると男は素直に聞き始めた。カウンセラーの話に男は深く聞き入った。カウンセラーが帰った後、男は鞄から書類を取り出しカウンセラーが話した内容を細かく記述し始めた。男はカウンセラーだった被告人の精神鑑定を依頼されていた。 #twnovel

2012-04-23 02:24:08
あまたす @amatasu

昔々、海の底には繁栄を極めたひとつの王国があった。しかしある時、王国は一瞬にして消えた。死の病に倒れた妃を嘆いた王が、古代の魔法を使って王国の全てを一枚の絨毯の中に封じ込めたのだという。絨毯は今も王と妃と王国すべての時間を包んだまま、海の底にあると言われている。 #twnovel

2012-04-23 03:56:46
オガタx世界卵 @eggofuniverse

#twnovel 取っ掛かりがない。切れ目なく滑らか。起伏なく平板。それが垂直になっている。または重力が水平に作用していると言い換えてもいいが。ともかく、何かのきっかけがない限り、爪を立てることも、ぶら下がることも、張り付くことも、中に這入り込むこともできない。お手上げ落下中。

2012-04-23 07:46:44