ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/04/27

斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

ぜんまい仕掛のこおろぎを拾った。ぎこちない動きが可愛い。が、よく見ると足を古式泳法のようにひらひらさせつつ涙を流しているのだ。思いつきで洗面器の水に放つと、達者な泳ぎを見せて嬉しげ。以来、背にぜんまいのあるこおろぎ型の水生生物がうちにいる。名前はまだない。 #twnovel

さくらだ かぞく @sakurada_kazoku

何か文章を書こうとするけれども、何一つ書けない。時間のせいにし、家庭の事情のせいにする。彼は仏頂面らしい仏頂面を捏ね作り、ぶつぶつ文句を小声で呟く。遠目に「書けない、とそれだけを書いたとしても、すでに小説」彼の口の形はそう語っている。　#twnovel

140字物語 @shortshortshot

兄弟が多いらしいS君の家に遊びに行った。家に入ると確かに沢山の子から挨拶される。「本当に多いんだな。あれ？ご両親は？」「ああ、親はほとんど家にはいないんだ」「え？じゃあこの子たちは、一体…？」「全員養子さ。世界各地から送ってくるんだよ。孤児をね。僕もその一人さ」 #twnovel

秋月蓮華 @akirenge

菜の花が咲き誇り、櫻の花弁が列車を引っ張るように幾重にも風に流れる。「春になったみたいだ」かつて神だった少年が、赤いコートを着た少女に話しかける。「春だな」何処へ行こうとしているのか分からない列車に乗っている二人はこうしてたまに話す。それ以外は景色を見ている。 #twnovel

あまたす @amatasu

時間だ。あたしは炭酸水で薬を飲む。赤と青、毎晩一錠ずつ。パパとの約束。頭がすごく冴えてきた。体が軽い。今、たぶんロボットより速く正確に動ける。部屋がノックされた。パパだ。準備はいいかな？はい、パパ。渡された銃はパパからの愛。あたしは今夜も人を殺してそれに応える。 #twnovel

工房径（koubou-kei） @pleaseinuplease

#twnovel カフェで朝食をとりながら、今日１日の流れを考える。上司の予定、出さなければいけない書類、そして、君のこと。ベーグルを噛みしめるように思い出せば、すぐ幸せになってしまうお手軽な僕だ。「おはよう」と送ればすぐに返ってくるメール。「おはよ。私も今あなたのこと考えてた」

七歩 @naholograph

病床の父に呼ばれた。「これを預ける薔薇を守れ」庭の温室の鍵だった。父の死後暫くして温室へと向かう。茂る薔薇。園芸したことないのに託されても、なんて思いながら扉を開く。#twnovel　薔薇にまみれて沢山の箱。箱の中には女の写真。「先祖代々思い出の墓使用心得」僕の趣味は園芸です。

浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel 「カノジョがさ、自分との連絡専用にってケータイを買ってくれたんだ。余計な料金かかるから他人との電話やネットには使わないで、あと電波の届かない所には行っちゃだめよ、だって♪」「お前、それは…いや、なんでもない」「うふふふふ。首輪。首輪」「お前…ああ、なんでもない」

銭喰 @zeniqui

#twnovel 閻魔帳の二重帳簿が発覚した。地獄に落とした罪人を過小に申告して輪廻に横流ししていた疑いがある。閻魔は本誌の取材に対し「私は知らない。地蔵菩薩がやったことだ」と答えており、地獄の管理責任問題に発展する可能性がある。なお過小申告されていた罪人は主に親不孝の罪などで…

七歩 @naholograph

月がみえないその日を選んで月の見えない丘に登る。丘の上にはウサギの行列。ぴょんぴょん跳ねて待っている。黒く黒く染まった月が、丘の淵へと降りてきた。落ちたウサギを回収したなら再び空へと帰ってく。月はとっても綺麗だった。讃えながら、愛しながらウサギたちは月へと帰る。#twnovel

おこげ @okoge_ver2

彼女はキスが嫌いな女の子。道を歩けば左手をせがみ、並んで座れば抱きついて離れない、そんな子なのにキスだけは一度もした事が無い。もしかして本心では気を許していないのでは？と不安を吐くと、彼女は俯き加減にこう言った。「だって、舐めるだけで食べられないなんて残酷だよ」 #twnovel

ささやか @ex_bungaku_girl

屋上にはいつも鍵がかかっていたから、私たちは息のできる場所を求めてその手前の階段の一番上に座り込んだ。ここでなら何を話しても許された。私たちしかいないその場所は、壁と天井と決して開かない銀色のドアに包まれたまゆのようで、無機質だけれどどこよりも安心できた。#twnovel

久島岩伸 @Kuzma_Ivanov

廃屋で赤ん坊を見つけた。箱に入れられ捨てられていたのだ。赤ん坊は男の子で、まだ息をしていた。私は彼を育てることにした。朝は家から持ってきて、放課後は給食で余らせたものを持ち帰り、牛乳を飲ませて栄養を与えた。じきに夏休みがはじまる。自由研究のテーマはもう決まった。 #twnovel

芹沢文書 @DocSeri

#twnovel「多数の小型人工衛星が、厳密な誘導に従い精妙に計算された軌道に遷移する。それらは木星衛星群の重力場と複雑に絡み合い、曲がりくねった軌道を描きながら通過してゆく。プロットされた軌道を重ね合わせた時に何が浮かび上がるのか、プロジェクトは明かしていない」 #衛星芸術

芹沢文書 @DocSeri

#twnovel 「衛星が分割されてゆく。塊は梱包され電磁カタパルトで次々に射出、惑星表面へ落下しクレーターを生じる。痘痕の穿たれた惑星表面は複雑な陰影を描き出し、自転に伴い映像を変化させる巨大な彫刻と化した。衛星芸術と呼ぶべきか惑星芸術と呼ぶべきかの論争は続く」 #衛星芸術

夢名 七志 @mumei7c

連休の予定を公開しているので、旅行先の出会いも計画的だ。予定が合わない人も事前に分かる。親しい人でも実際に会って無い人はいる。自分が休みの日には必ず仕事が入ってしまう人がいて、かえって残念なこともある。頻繁に泥棒に入られる我が家を心配してくれるいい人なのだけど。 #twnovel

七歩 @naholograph

来たわ、新しい女よ！私達家庭の味三姉妹は新たなる敵を迎え撃つ。卵焼き！味噌汁！肉じゃが！代表的な家庭料理。この味に馴染める？この味を作れる？できなきゃあんたは捨てられる。ここの僕ちゃん、私達を愛しているの。「うちもお味噌汁は麦味噌なんです」もしかしたら強敵の予感。#twnovel

layback @laybacks

奇術師がシルクハットをサッと取るも鳩は現れない。観客がざわめく。奇術師は鳩に囁きかける。出てこいよ。嫌だ。奇術師は鳩に手を伸ばす。鳩は奥へ逃げる。奇術師は鳩を追いかけてシルクハットの中に飛び込む。持ち手を失ったシルクハットは舞台に落ちる。観客は一斉に拍手をした。 #twnovel

ゆう @yukiririkiriri

#twnovel 初めて電気がきた日。家族は皆小さな電球に不思議顔。こんなちっさい玉で、本当に部屋が明るくなるのかね？ばあちゃんはろうそくを握りしめる。さぁ、つけるよ。父さんがスイッチをいれると、あれ？初めてきた電球は、ろうそくの炎よりも小さかったけれど、僕らの心をほっこりさせた

斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

今夜は大粒の雨がどんどん大きくなって、ピンポン玉くらい、スイカくらい、終いには樽くらいのが降ってきて、ずぶ濡れだったよ。ふうん、うちの方では、霧雨がもっともっと、霧よりも、煙よりも、見えないほどに小さくなるから、傘を畳んで歩いたら、気づくとびっしょり濡れてたよ。 #twnovel

オガタx世界卵 @eggofuniverse

#twnovel 何か聴こうとするとシンバルが響き、何か見ようとすると目の前を太陽が遮り、何か捕まろうとすると巨大な蛸や鰻が現れ、何か暖めようとすると雛は既に卵から孵った後で、何か忘れようとするときみの顔が瞼に貼り付き、何か飲み込もうとすると苦くて黝い錠剤が皿に山盛りされ、何か…

tokoya @tokoya

#twnovel 少女は独りで夜空を見上げていた。静かな、星の綺麗な夜だった。流れ星が一つ、少女の瞳に映った。とっさの事で、少女は「世界中の人間が幸せになれますように」としか願えなかった。翌朝、少女は保存食を見つけた。一週間ぶりの食事だった。少女は幸せだった。そして願いも叶った。