ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/02
ある朝目覚めるとグレゴール・ザムザは巨大な一本の足になっているのに気付いた。立ち上がろうとするも腰に繋がってもいないし支えとなるものも何もないので起き上がれない。一本の足のまま必死にばたついた。#twnovel「足が勝手に動くんですけど…これがむずむず足症候群ってやつですか?」
2012-05-01 23:59:49むかし来世ゲームというのが流行った。円座して、隣の人の来世が何だか適当に決めて十秒以内に言う。隣、また隣へ。「猫」だの「みみず」だの「悪魔」だの、きゃあきゃあ盛り上がったっけ。それにしても本当に神社の鈴になるとはね。多分歯ブラシになってる隣の子、元気かな。 #twnovel
2012-05-02 00:06:16やさしく、素直な親指姫はチューリップのつぼみから。気高く、わがままな親指姫は赤いバラのつぼみから。几帳面な親指姫は時計草のつぼみから。集まると、たちまち賑やかなお喋りがはじまる。魔法使いのおばあさんは、今日もせっせと水をやる。静かにしなさい、とたしなめながら。 #twnovel
2012-05-02 00:39:47#twnovel 2つの国がある衛星の所有権を巡って争っていた。自国の旗を衛星の丘に立てるため、無重力の中を跳ねていく黒と白の宇宙服。一方が旗を立てれば他方が抜くの繰り返し。見苦しい泥仕合。その頃、宇宙空間を挟んだ惑星で1人の少年が望遠鏡をのぞいていた。「あ、兎が餅つきしてる!」
2012-05-02 01:26:38#twnovel 幻想保育士はこの季節にもっとも神経を使う。王国のどの保育園にも花壇が必ずある。お絵描きの時間、子どもたちは自由気ままに色とりどりの花々でスケッチブックを埋めていく。多くは幼児の発達過程通りの絵であるが、ごくまれにチューリップの本当の姿を描いてしまう子がいるのだ。
2012-05-02 01:38:59#twnovel 拾い手の現れなかった落とし物はモグラたちが集める。地下の秘密貯蔵庫で。いつか大地が壊れるとき、貯蔵庫は裂け、あらゆるものが飛び出すだろう。なくしたはずの物・夢・記憶が。滅びるみんなはそれでちょっぴり癒される。この計画はモグラ以外にはないしょです。モグラ外秘です。
2012-05-02 02:40:34#twnovel 愚にもつかないツイノベをならべたて続けて、999個になった。記念というわけでもないけど、ひとつだけ、本当の心を吐き出してみた。誰にも気づかれたくなかったから、忘れずにちゃんとツイノベのタグを付けた。少しして、ずいぶん久しぶりに彼女からDMが来た。『ばーか。』
2012-05-02 07:10:35空想する。星を空を大地を海を。世界を空想で作り上げ、空想の君を住まわせる。可愛い君は空想する。星を空を大地を海を。世界を空想で作り上げ、空想の僕を住まわせる。君と僕。どちらが本当の夢なのか。そんなのどうでもいいじゃない。砂時計みたく、二人で今を分け合いましょう。#twnovel
2012-05-02 08:04:51#twnovel 自分で寝支度をした皇帝は、押入れの中でウサギの人形を抱えている。なんだかかわいい。「何がそんなにおかしいのじゃ?」棘のある言い方だ。「不機嫌だね」「余は慈悲深き皇帝であるぞ。機嫌など損ねたりはせんのじゃ」扉が閉まる。その晩、押入れから祈りの歌声は聴こえなかった。
2012-05-02 16:11:07【ダーツの気まぐれである村を訪問した。その日10人の村人が山に入り、山の神への感謝として狩猟した動物たちの肉片や骨を燃やす儀式が行われていた。私が「人間が燃されてもわかんないね」と口を滑らすと、突然私以外の9人に緊張が走った】 #twnovel
2012-05-02 18:27:29強風の中をあるいていると、前方から何かが飛ばされてくるのが見えた。それは女で、背には白い羽が生えていた。私は身を挺して彼女を受け止めた。女は自らを天使と称し、助けた礼に天国へ連れていってくれると言った。私は彼女を受け止めた拍子に頭を打ち、死んでしまっていたのだ。 #twnovel
2012-05-02 18:44:02#twnovel 遊園地も温泉も、あなたが忙しいと言うから我慢した。あなたの側にいられるのが一番大事だったから。だけどあなたは他の女と会うのに忙しかったのね。それも今日でお終い。ずっといっしょにいられる。浮気の心配もないし、旅行にも行ける。私は膝に載せた彼の頭部を撫でて微笑んだ。
2012-05-02 19:18:44#twnovel 「おい、新人、よそ見をするな」「先輩先輩、あの人は何です?」「言ったそばからこれだ、奴は生前の精算をしているのだ」「ずぶぬれですね」「奴が受け取るべきものを傘に肩代わりさせた報い、すべての滴だ、そうそう降り止まぬ」「でも楽しそう」「そも雨とはそういうものなのだ」
2012-05-02 20:05:40緑の、たとえば山深い景色をや、見たら涼しげでええように思うやろ。君なんか都会っ子やのに…やからか、よけ自然がええように見えるやろ。でもな、わたしがなんで田舎に戻らんか言うわ。わたしが緑の山みて思うんはな、青白い足首なんや。隣の、よう遊んでくれてた姉さんの、最後や。#twnovel
2012-05-02 21:17:55夜の卵を貰ったと言って、君は嬉しそうにそれを飲み込んだ。卵はどんどん育って、次第に君を虚ろにしていく。僕は堪らなくなって、君の身体を切り裂いた。卵を出せば元に戻ると思ったのに。夜はもうとっくに孵っていて、深い闇になって君から流れ出した。もう僕たちに朝は来ない。 #twnovel
2012-05-02 21:21:29#twnovel 冷たくない春の雨。私は傘を畳んで空を見上げる。雨粒の軌跡が放射状に広がり、自分がどんどん上昇していくような気がする。やがて私の身体は雲を突き抜け、電離層を飛び越え、漆黒の高みから青く輝く球体を見下ろす。青、それは傘の色。何やってるんだ?風邪引くよ?あの人が笑う。
2012-05-02 22:19:18ウエディングドレスをもくもくと作る。もくもくと作る。ああやっと一着できた。密な時間を共に過ごしたドレスはまるで我が子のよう。だけどドレスはドレス泣く泣く嫁に出す。彼女はぐるぐると沢山の花嫁に着られ回され薄汚れて帰ってきた。それをそっと白い木箱にしまう。お疲れ様。#twnovel
2012-05-02 22:31:26感情効果機。なぜか動作が遅くなると感動的になるらしい。映画で一押しの場面がスローモーションになるあれだ。今日は彼女への重大な告白。失敗はできない。劇的効果を加えて必ず達成してみせる。目を見て話し出す瞬間に起動。あぁ、何て心に響くんだ。彼女がゆっくりと去って行く。 #twnovel
2012-05-02 23:07:36「何時ものようにいきなりの手紙。あたしの可愛いお友達、あなたの頭痛の種は残念ながらまだ生きてるわよ。奥様はお元気? 子沢山で大変そうね。でも昔の思い人の名前を娘に付けるのはおやめなさい。騒動の元よ。大体あたしが手紙を送りにくくなるでしょうに」 #twnovel
2012-05-02 23:22:03#twnovel 復讐相手を愛してしまった。私をかばって負った傷を手当して、悲しい過去に心を寄せて、あなたが好きと微笑んだ、そのすべてが罠だった。そのつもりだった。計画通り、偽りの愛に絶望しながらその人は死んだ。拳銃を握り締める。涙が落ちる。今度は、最愛の男を殺した女に、復讐を。
2012-05-02 23:23:45