【ほうかご百物語】妖怪についてつらつらと(9巻)
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土淵村字火石の某家の奥座敷に客人が泊まったところ、神仏を祭ってある次の室の襖の隙間から細い長い手が出て客人を招くような仕草をした。その後、この人は津波に遭って家財と家族を失ってしまったといい、このときの手はその前兆だったのだろうか[1][2][3]。
2012-06-30 22:55:43また、同村字同の別の家では子供達が座敷の長押から細い赤い手が一本垂れ下がっているのを見たという。その手はちょうど二、三歳程度の子供の手のようであったが、腕は二尺(約六十六センチメートル)ほども長く、またきわめて細く。蔦のようだったという。
2012-06-30 22:56:04なお、細手長手ではないが、手に関する怪異が[1]には記されている。例えば、土淵村字飯豊(いいで)の某旧家の奥と表の間の十畳ばかりの座敷に客人が泊まると、夜半に奥座敷から何かが歩いてきたと思うと、懐に冷たい手を入れられた。
2012-06-30 22:56:24体を縮めていると腋の下を擽られたり腹の辺りを撫でられたりすらされる始末で、翌朝には汗びっしょりになっていた。家の者からは昨晩は逆夜這に来られて面白いことをされただろう、とからかわれてしまった。この家にはザシキワラシがいるといい、家の者はわざと先の座敷に客人を寝かせるという[1]。
2012-06-30 22:56:54または、六日町の某家には、その六、七年前に不幸があり、二階の一室に仏壇を設けていた。その仏壇の前に身内の者が寝ると、夜中頃に冷たい手で寝顔を撫で回す者がいた。驚いて起き上がると、河童に似た者が逃げていくところだった[1]。
2012-06-30 22:57:04陸中国紫波郡彦部村の某家では、二十年以上前からザシキワラシが出るという話があり、家の近くには千手観音を祭った千手堂があった。そこには太神楽の稽古をするために毎夜村の若衆達がたくさん集まって笛太古で大騒ぎして遊んでいた。
2012-06-30 22:57:19あるとき、話し手の父親とある兄弟が三人、当番制で千手堂に寝ていると兄弟のどちらかが悪戯をされた。子供がやって来ては小さい手を懐に入れて撫で回したり擽ったりしたので、驚いて目を覚ますと子供が蹲ってニコニコと笑っていた。
2012-06-30 22:57:36また、その手は氷のように冷たかったという。これはこの三人に限った話ではなく、某家の座敷や千手堂に寝たら誰もがやられたという[1]。
2012-06-30 22:57:39※作中との比較
作中では肘や手首の関節がない青白く細長い手として描写されていたが、伝承の中ではまず色は赤い。しかも撫でたりせず、大きな水難の前兆、つまり凶兆になっただけで直接何かをしたわけではない。
2012-06-30 22:58:05しかしながら、同じようにザシキワラシの一種の話として採集された中に、後半に記したように冷たい手で人を撫で回す怪異が存在しているので、作中の細手長手は、伝承の細手長手(名前と蔦のように細長いという特徴)と、
2012-06-30 22:58:27先日行った天吊るしや天井下のように天井は妖怪が出現する場所、つまり家の中でも異界に通じている(天井裏は特に)と考えられていた場所の一つであることは押さえておくべきだと思われる。
2012-06-30 22:59:04それと、遠野で人形というとオシラサマが連想されるけど、今回は直接関係はないかな…?といった辺りで宿題は残っているけど以上。
2012-06-30 22:59:13※船入道について
※文献を基にした概説メモ
さらに『ほうかご百物語』9巻より、「船入道」。 参考文献は[1]『図説 日本未確認生物事典』(世間 良彦著、柏美術出版社、1994)、[2]『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)。
2012-07-16 17:24:54『本朝語園』に記された妖怪。長さは六、七尺(約19.8~23.1メートル)で色は黒く、目鼻手足はなく、海の上に現れるという[1][2]。これが出現したら喋ってはいけないし、その姿形を見てもいけない。
2012-07-16 17:25:06もし「あれは何だ?」などとその姿についての疑問を口にすれば、その言葉を言い終わらないうちに船が壊されてしまうという[1][2]。
2012-07-16 17:25:11こちらは南海におり、僧のような姿をしている。海中から出てきて船に上がり込み、一休みしてまた海に入っていくという[1]。海人が現れたときは船中では喋ることを戒め、音を立てずに動きもしない。そうでないときは大風が起きて船を転覆させるという[1]。
2012-07-16 17:25:31