鳥に纏わる掌編

少年の姿をした「鳥」と人々の物語。 Twitterで50ツイートごとに呟いていた掌編小説のシリーズです。 一応完結。
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chi-suke @ChiKomiya

【鳥16】一日目。鳥屋から鳥を一羽借りた。返さずとも良いと言はれたが研究の為なので飼う気は毛頭無い。二日目。全く正体の解らぬ生物である。良くこんな物を愛玩しやうと思ふものだ。三日目。五月蠅い。鳥の鳴く声とはこれ程騒がしいものであつたか。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-26 13:14:28
chi-suke @ChiKomiya

【鳥16】(続き)四日目。手ずからに餌を与へようとしたら酷く突かれた。友人は嘘を吐いたに違ない。五日目。囀りは耳に慣れて来た。悪い声では無い。六日目。鳥は籠目からこちらをじつと見てゐる。何とも不思議な表情の瞳をこちらに向けてゐる。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-26 13:17:58
chi-suke @ChiKomiya

【鳥16】(続き)七日目。鳥を返す予定の日である。しかし研究は進捗して居ない。この七日は只鳥を眺める内に過ぎて仕舞つた気がする。一向に鳥の事は解らぬ。どうすれば良いかも解らぬ。そして己の心も解らぬ。(ここで日記は終わっている) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-26 13:19:40
chi-suke @ChiKomiya

【鳥17】借金取りにとうとう鳥まで連れて行かれた。それだけはと頭を下げたが、その分餌代が浮くだろうと聞き入れられなかった。少ない米粒を分けあって暮らして来た鳥は最後まで自分の顔を見ていた。後日借金取りからあの鳥は何も食わずに死んだと聞かされた。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-06-15 20:32:48
chi-suke @ChiKomiya

【鳥18】その鳥は知るどの女よりも巧みに楽を奏した。たおやかな体を後ろから抱き締めて耳元に唇を寄せ、歌って下さい、と囁く。言ってからその声も翼も自分が奪ったことに気付いた。鳥は優しく微笑んだまま弦を弾いている。 #鳥に纏わる掌編 #twnovel

2012-07-03 22:13:05
chi-suke @ChiKomiya

【19】帰ったぞ、と鳥屋は戸を開けた。幽かな衣擦れの音と共に奥から現れた姿を見て目を細めて告げる――売れたよ。暗い廊下を歩む足音を衣擦れの音が追う。鳥屋は苦笑して業だな、と呟く。開けた扉の向こうから無数の囀りが響いてきた。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-09-01 23:31:33
chi-suke @ChiKomiya

【鳥20】人の男が雌の鳥と番えば、男は人でも鳥でもないものになり、雌は羽も声も失う。生まれる雛は全て子を成せぬ小さな雄となる。その雛は高い値で売れると云う。故に雌の鳥を人が盗むことは大罪である。しかしその罪を犯す男は後を絶たない。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-10-05 00:24:14